HSPだから気付いてしまう事
僕とサチとスケマルの三人は村を後にする。アオハルとスネタのコンビとは、ここで離れた。
彼等二人は、サチの強さを目の当たりにして、自分達も強くならなければと、感化されたようだ。二人でレベルアップを頑張るよと、別れ際に言って去って行った。
この三人旅も少しずつ変化が出て来た。スケマルのサチに対する態度が、何かよそよそしくなって来たのだ。
変わったのは、あのボスとの戦闘を見てからだ。今は仲間とはいえ、彼女を恐ろしいと感じたのかもしれない。なぜなら、コンビの相方以外はライバル、敵同志となるからだ。
僕自身、スケマルの事は大事な友達と思っている。サチも重要なパートナーだ。二人には仲良くしてもらいたいと思っている。けど、いつまでも三人のままでは居られない。いつかこの三人旅には終わりは来るのだ。
そんな事を考えながら道中を歩いていると、いつの間にか日が落ちて来たようだ。僕達三人は手頃な広さの平地にテントを三つ張り、ここで各自、野営する事に決めた。
僕達はテントから少し離れた所で焚き木を燃やし、それを囲むように座った。
「ユウト殿とサチ殿は付き合っているのでござるか?」
僕の左隣にいるスケマルが唐突に訊いて来る。
また、その質問かよ。僕はウンザリしながら、仕方なくその問いに応える。
「付き合ってないよ。サチとはビジネスパートナーみたいなものだよ。なぁ、サチ?」
僕は右隣にいるサチに視線を送る。すると、サチは少し動揺した顔を見せる。
「えぇ、そうよ。ユウトには、彼女がいて、その彼女を生き返らせる為に、このゲームで勝とうとしているの」
サチはスケマルの方を向き、説明するように応える。
「ユウト殿はその為に、大魔王と戦うつもりでござるか?」
「うん、それが僕がこの異世界に来た目的だから。僕はその為に命を懸けようと思っている。だから、ドロップアウトはしない。死ぬか、願いを叶えるかのどちらかだと覚悟を決めている」
「そ、そうなのでござるか」
スケマルはかなり驚いた顔でこちらを見ている。彼は僕の意外な一面を見たと感じているのかもしれない。僕はそう理解し、話を再び進める。
「そういや、スケマル君は何で異世界に来たの? 叶えたい願いとかあるの?」
「拙者は何となく流れで、この世界に来たようなものでござる。叶えたい願いは……。うーん、特にないでござる。いや、しいて言えば、世話になった人、尊敬している人の幸せでござろうか?」
スケマルのその応えに、僕は少し首を傾げる。抽象的過ぎて、具体的にどういう事なのか想像出来なかったからだ。
僕達は腹を割って、何でも話せる仲じゃないのかな?
僕は少し寂しい気持ちになる。スケマルは、そんな僕の顔をじっと見て、口を開く。
「ユウト殿の事は、拙者、唯一の友人と思っているのでござる。この気持ちには、偽りはないのでござる。拙者の事を優しく気遣ってくれる気持ち、本当によく伝わって来るのでござる。ありがとうなのでござる」
そう言って、坊ちゃん刈りのメガネの勇者が頭を下げる。
この声のトーン、顔の表情からは嘘は感じない。でも、彼には何か僕には言えない事がある、そう感じて仕方がない。
僕はHSPゆえに、相手の些細な違和感にも気付いてしまう事がある。気付かなくてもいい嘘なんかもすぐに目に付いてしまう。
誰にでも知られたくない事や本当の事を言いたくない事はある。
この時の僕はそう納得し、その夜はテントで一人で朝を過ごした。
* * * *
僕は異様な気配を感じ、目を覚ます。どうやら明るいので、もう朝のようだ。
「うわああああ、助けてくれでござる」
僕の寝ているテントの外から悲鳴声が聞こえる。声の主は、スケマルのものだ。
僕はすぐさまテントから飛び出て、辺りを確認する。見ると、サチも同時に隣のテントから身を乗り出している。
「うわああああ、止めてくれでござる」
遠くの方で、スケマルの叫び声が再び聞こえる。見ると、スケマルは獣のようなモノに足をくわえられ、遠くへ連れて行かれている。獣はまるで、熊のような、大きな犬のような、そんな獰猛そうな動物に見えた。
「サチ、攻撃魔法であの熊のようなヤツを撃って」
僕は振り返り、後ろにいるサチに叫ぶ。と同時に、茶色の物体が突然僕に襲って来る。
僕は腕を噛み付かれる。激しい痛みを感じ、すぐにそれを振り払う。
僕は流血した腕を抑えながら、襲って来たモノを確認する。
オオカミだ。大きな茶色のオオカミだ。
口から血を垂れ流したオオカミは、こちらを睨みながら距離を縮めて来る。
僕は呪文を詠唱し、魔法の盾を完成させる。そして、周りの状況を把握する。
オオカミに周りをグルリと囲まれている。オオカミの数は五頭だ。
サチは? サチは大丈夫なのか?
僕は相方の様子をチラリと伺う。
サチはオオカミの攻撃をヒラリと交わして、オオカミの脇腹に蹴りを入れている。オオカミはたまらず後退をしている。
あなた、魔法以外も強いんですね。
僕は感心と安心をし、オオカミからの攻撃に備える。しかし、次の瞬間、赤い光と共に轟音が辺りに鳴り響く。
オオカミ達から炎が舞い上がっている。獣達は悲鳴に似た鳴き声を上げ、バタバタと倒れる。どうやら、サチの炎の魔法がオオカミ全てに炸裂したようだ。
スケマルは? スケマルは、無事なのか?
スケマルが引きずられて行った方角を僕はじっと見る。しかし、そこには彼は居ない。もちろん獣も居ない。
仲間を連れ去られて行った現実に僕は気付き、呆然とする。
しばらくしてから、サチが僕の隣にやって来る。サチは険しい顔をして、アゴに手を当て、何か考えているようだ。
「何か変なのだよ。この状況はおかしいのだよ」
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