アニメから何も学んでない人間
僕達三人は順調に魔物達を倒し、中継地点の村に辿り着く。
サチはランキング通り、ますます強くなっている。ここまで楽勝で進んで来ている。
僕とのコンビネーションも健在だ。僕が盾役に徹し、パーティーの防御を担当する。そして、サチが魔法で敵を殲滅する。スケマルは、それを横で見ているだけと言う、この戦い方でここまでやって来た。
中継地点の村は、人があまり住んでいない寒村という雰囲気であった。家屋も古びていて、今にも壊れそうな物ばかりだ。
僕達三人は、周りをキョロキョロと見回しながら、どこか泊まれる所を探していた。
すると、痩せ細った村人らしき中年の男がフラフラとしながら、こちらに歩いて来る。
「ゆ、勇者様でいらっしゃいますか?」
その村人は、か細い声を出す。疲れ切っている、そんな感じを漂わせる顔だ。
「勇者ではないです。僕達は、ただの旅人です」
僕は手を振りながら、応える。
「お願いです、旅の方。私達、村の者を助けて下さい。魔物達がこの村を襲って来て、子供達を連れ去って行ったんです」
村人は僕にすがりついて泣き出す。僕はどうしたら良いのか分からず、サチの方を見る。サチはアゴに手を当て、何か考えているようだ。
「詳しく話して下さい。この村で何があったのか?」
隣にいたサチがアゴから手を降ろし、村人に歩み寄る。
「は、はい。実は昨夜、突然魔物達がこの村を襲って来て、村の子供達を連れ去ろうとしたんです。私達、村の大人達も必死で抵抗したのですが、全く魔物達に歯が立たず、連れ去られてしまったのです」
村人はそう言うと、号泣する。僕は村人の肩に手を乗せ、サチの表情を確認する。サチは怒りの感情を見せ、更に村人に尋ねる。
「その魔物達は、どこへ行ったのですか?」
「裏の山です。あそこは魔物達の巣窟になっていて、私達では行っても子供達を取り返す事が出来ないんです。どうか、旅のお方。もし、強い方ならば村の子供達をどうか救ってくださいませ」
サチはうつむいて考えている。すると、スケマルが割り込むように話に入って来る。
「これも大魔王討伐ゲームのイベントの一つでござろうか? 拙者達が受けるか受けないか、自由に決めれるクエスト的な物でござるよ」
スケマルの言葉で、僕も迷いが生じる。
これは、演技なのか? お芝居なのか? つまり、ゲームの設定上で起きている架空の話なのか? それとも、現実の話なのか?
僕は判断が付かず、またサチの判断が気になり、彼女を見てしまう。サチはまたアゴに手を当て、口を開く。
「村の方、この話は他の冒険者達にもされましたか? 私達よりも先に来た冒険者達は居ませんでしたか?」
「他の方にもしました。しかし、私達の声を聞いてくれる方は少なく、ほとんどの方達は先を進んで行かれました。私どもは頼れる人がおらぬのです」
村人はまた顔を覆って、泣き始める。
「わざとらしいのでござる。無視して、拙者達も先を急ぐでござるよ」
スケマルは村人に背を向け、ここから離れようとしている。
「ねぇ、ユウト。ここでアニメのヒーローならどうすると思う?」
サチは腕組みをし、僕に鋭い視線を向けて来る。僕は一瞬ドキッとし、恐る恐る応える。
「そりゃ、困っている人達は放っておかないと思うけど……」
「そうなんだよ。ここで村の人を見捨てるような人間ではダメなんだよ。アニメから何も学んでいないんだよ。だから、子供達を助けに行く。ユウト、異論はないよね?」
「あ、うん……」
僕の返事で、スケマルが驚いて足を止める。
「正気でござるか? こんな三文芝居に、なぜ引っ掛かるのでござるか? 子供達がさらわれたなんて嘘でござるよ。危険なマネをして行く事はないのでござる。拙者は助けに行くのは反対でござる」
「私はユウトに聞いているのだよ。関係のない人は意見を言わないで頂きたい」
サチがスケマルを睨み付ける。スケマルはサチの威圧に怯え、小さくなっている。
「私達にとって、これはゲームかもしれない。けど、この異世界で生きている人達にとっては、現実に起きている事かもしれないのだよ。実際にこの人達の子供達がさらわれてたら、どうするのだよ?」
僕もその事について気になっていた。
僕達、向こうから来た人間は、この世界の王族や貴族達の道楽で、デスゲームをさせられている。
では、王族や貴族でない一般の人達はどうなのだ? 無理矢理このゲームを面白くする為に、酷い目に合っている可能性はないのか?
僕はもう一度、泣き崩れている村人を見る。
これは、演技なんかじゃない。絶望の中にいる現実の人の姿だ。助けるべき人達だ。
「サチ、子供達を助けに行こう。スケマルくん、ゴメン。僕達は、この人達を放っておけない」
僕はスケマルに応えてから、サチの方を見る。サチは微笑んでいるように見える。
「……知らないでござるよ。生きて帰れないかもしれないでござるよ。何で、他人の為に命を縣ける必要があるのでござるか? 拙者には、分からないのでござる」
スケマルは半ば諦めて、呟いている。泣きそうな顔になっている。
僕だって、恐いよ。でも、この決断に後悔はない。
この村の裏にそびえ立つ山の頂上を睨み付け、僕は覚悟を決めた。
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