僧侶として当然です
「フトオさん、今から攻撃力アップの付与魔法をあなたに掛けます。それであの魔物達をやっつけて下さい」
僕は冷静さを取り戻し、フトオの側に駆け寄る。そして、呪文を詠唱し、フトオに自分の手をかざす。すると、フトオの身体が光に包まれる。
「な、何だ、これは? 変なマネしやがったら、ブッ殺すぞ」
フトオはオドオドして、僕を睨み付けて来る。そんなフトオを僕は無視し、呪文を詠唱し続ける。
「お、これは? 力が溢れ出して来る。マジか? す、すげぇ」
「フトオさん、魔法が掛かりました。あなたの攻撃力は通常の二倍くらいになってます。安心して戦って下さい」
僕がフトオにそう言うと、フトオは手を握ったり、閉じたりして感触を確かめている。するといきなり、フトオに向かって、ポイズンイモムシの一体が襲い掛かって来る。
「ク、クソッ。来るんじゃねぇ。気持ち悪い」
フトオはこん棒を握り締め、思いっ切り振り回す。フトオのこん棒が巨大イモムシの頭部に直撃する。すると、まるで爆弾で吹き飛ばしたかのように、ポイズンイモムシの身体は粉々に飛び散る。
「うぉ、さっきは一撃で仕留められなかったのに、何て威力だ。これが付与魔法の力か? マジで、すげぇよ。これがあれば、どんな奴にでも勝てる。たとえ人狼が襲って来ても。今の俺は無敵だ、ブハハハハ」
フトオは高らかに笑う。そして、目の前にいる二体目のポイズンイモムシに向かって、走って行く。
「食らえ、虫野郎」
フトオはこん棒を大きく振り下ろす。そのポイズンイモムシは一体目と同様に、肉片を飛び散らせ、そのまま絶命する。
「ブハハハハ、俺は最強だ。もう俺を誰にも止める事は出来ない。アカヅキもクロスギもな。今なら、あのキオウにも余裕で勝てる」
「スゴイです、フトオさん」
とりあえずフトオを僕は褒めておく。もちろんご機嫌を取る為にだ。フトオはウンウンと頷き、満更でもない顔をしている。
「てか、奴隷。お前、今の今まで、俺にこの力隠してただろ? てめぇ、ふざけんなよ。今度、ふざけたマネしたら、マジで殺すからな」
フトオが気付いたように、僕を睨み付けて来る。僕は気マズイと思い、フトオから視線を反らす。
だってさ、あんたにそんな態度されてたら、付与魔法を掛けて、援護したいとか絶対思わないよな。
そんな愚痴のような物を僕が頭に浮かべていると、フトオの後ろから、最後のポイズンイモムシが現れる。そして、フトオの左肩に噛み付く。
「い、痛ぇ、この野郎。ぶっ殺す」
フトオはイモムシを振り払い、こん棒を振り回す。ドンという衝撃音と共に、巨大イモムシの身体は吹き飛ぶ。こうして、三体の魔物は全滅した。
しかし、フトオの噛まれた左肩は紫に変色し、腫れ上がっている。
「う、何だ? ものスゴく息苦しい。吐き気がする」
フトオは真っ青な顔をして、その場に座り込む。
「ポイズンイモムシの毒を食らったんです。早く毒を取り除かないと、死んでしまいます」
「は、早く毒消しの魔法を掛けてくれ。死ぬのは嫌だぁ。た、助けてくれぇ」
「フトオさん、じっとしていて下さい。動き回ると毒の回りが早くなります。今から解毒の魔法を掛けますから」
僕は呪文を詠唱し、フトオの腫れ上がった肩に手をかざす。僕の光った手は、フトオの左肩を少しずつ癒やしていく。
「早くしてよ。死にたくないよ。頼むよ」
フトオは今にも泣き出しそうな声を上げ、僕の腕を掴む。僕もそんなフトオを見て、急いで解毒魔法をフトオに施していく。
フトオの左肩の腫れが引いていく。紫に変色していた所も元の肌の色に戻っていく。
「解毒は終わりました。身体も少し弱っているみたいなので、回復魔法も掛けておきますね」
僕はフトオにそう言って、回復魔法の呪文を続けて詠唱する。汗まみれのフトオは安心した顔をして、うつむいている。
「助かったよ、ありがとな」
フトオは少し照れながら、僕に呟く。
「いえ、僧侶として当然です。助かって良かったです」
僕も少し笑顔になり、言葉を返す。
こうして、フトオの毒の治療は無事に終わった。
この一件があって以来、僕とフトオの仲は良くなっていった。彼はもう、僕の事をバカにして来ない。
フトオともこれで良い友達になれたかな。僕はこの時、そう感じて嬉しく思っていた。
* * * *
僕達は魔物の森を順調に進んで行った。そして、とうとう魔物の森を出る事に成功する。目の前には、目的地のファストの町が見える。僕達は生き延びて、魔物の森をクリアしたのだ。
あと十五分も歩けば、ファストの町に着く。もうすぐサチと会える。そしたら、フトオとコンビを解消して、サチとコンビが組める。フトオとは最後の最後で仲良くなれたけど、僕はやはりサチの方がいい。フトオさん、ごめんなさい。
そんな事を僕は思いながら、軽やかに町へと歩を進めていた。そして、後ろを歩いているはずのフトオに声を掛ける。
「フトオさん、やりましたね。チェックポイントのファストの町が見えますよ。無事にここまで来れて良かったですね」
その言葉を言い終えるか否かで、僕は後ろから攻撃を受け、吹っ飛ばされる。そして、木に叩き付けられ、その場に倒れる。
い、痛い。何が起こったんだ? どこから攻撃を受けたんだ?
虚ろな意識の中、僕は周りの様子を確認する。すると、フトオがこん棒を片手で持って、仁王立ちしている。そして、フトオはゆっくりと口を開き始める。
「何で、お前を相棒にしたか理由を聞きたがってたな? あ、それな。それは、お前を確実に殺す為だよ」
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