運命のドラフト会議
明日から城を出て、いよいよ二人一組の冒険が始まる。そんな冒険出発の前日に、僕達40名の異世界人は城の大広間に再び集められる。
もう二度とこの城の大広間に呼び出される事はないんだろうな、そんな事を思いながら、僕は大広間へと向かう。
大広間に着くと、いつもとは違う広間の様子に、僕は異変を感じ、胸騒ぎを覚える。
大広間の中央に、20個のテーブルに二つずつ席が用意されている。正面には大きな電光掲示板のような物がある。もちろん、電気はないから魔法で何かを表示するのであろう。
周りは、黒ローブのスタッフ達がいつも以上に慌ただしくしていて、何か大きなイベントが今から始まる、そんな予感を漂わせていた。
このシーン、どこかで見た事があるな。確かテレビのニュースだ。何だったっけ?
そうだ、ドラフト会議だ。
プロ野球の12球団が新人獲得の為に、獲得したい選手を指名し、その選手を得る為に交渉権を得る、あの会議だ。昔、見た記憶がある、そのままの設定だ。
テーブルが目の前に20席あって、そのテーブルに二席ずつあるということは、つまり、僕達40名の異世界人を今から二人一組、20チームに分けようと言う事なのか。
僕はこれから始まるイベントに大体の察しを付ける。他の人間達も何となく気付いているみたいだ。
隣には、いつものようにサチがいる。そして、アオハル、スケマル、ミホノも近くにいる。彼等もこれから始まるイベントにドキドキして、落ち着かないような顔をしている。
例によって、黒ローブのスタッフのリーダーが大広間の中央へと現れる。そして、怪訝な顔をしている僕達を見回し、口を開く。
「それでは、皆さん。いよいよ明日から楽しい冒険の始まりです。したがって、皆さんには今からコンビを組んで頂きます。勘のいい方はお気付きかもしれませんが、今からドラフト会議を始めたいと思いまーす」
会場がザワザワとどよめく。みんな好きな相手と自由にコンビを組めるものだと思っていたに違いない。顔を見回して、慌てている人達がいる。
僕もそうだ。サチと組んで、明日から冒険だ。そんな事を考えていたのに、こちらの意図とは違う事をこいつらは強要するのか。
僕達の気持ちを無視し続ける身勝手な黒ローブのスタッフのリーダーを僕は睨み付ける。
「それでは、今から始まるイベントのシステムを説明します。まず、今からあなた達のステータスランキングを発表します。そして、上位20名の人間がコンビを組みたいと思う下位20名の人間を指名します。指名が被った場合は本家のドラフト会議のように、くじ引きを行い、当たりくじを引いた人間がコンビを組めます。ハズレを引いた人間は再度指名を行います。以上です。何か質問は?」
会場はなおも騒然とする。上位ランカー同士でコンビを組もうと話し合ってた人間は、予想外の展開に動揺している。
反論してもこの黒ローブのスタッフ達は受け付けないだろうな。僕はそんな事を思いながら、周りを見渡す。慌てている人間、落ち着いて考えている人間、みな様々な顔をしている。
そんな中、僕は冷静に状況を分析をしていた。
恐らく僕の予想では、サチは上位ランカーに入るであろう。という事は、彼女に指名権がある訳だ。
サチは多分、下位ランカーの僕を指名してくれるはずだ。僕はドキドキしながら、サチの方をチラっと覗く。彼女は至って冷静な顔をしている。
頼むよ、サチ。ちゃんと僕を指名してよ。
そんな期待を込めながら、僕はまた正面を向き直す。
すると、僕から遠くの方にいる人間が挙手をする。誰だよ、何か質問があるのかよ。僕はその相手をチラリと確認する。
サイコパスの魔術師、クロスギ。アイツだ。黒ローブのリーダーはクロスギを見て、はい、そこの人と言い、奴の質問を受け付ける。
「このコンビは永続的な物なのですか? 途中でパートナーが使えないと分かれば、捨てたり、トレードなどして、新たな人間とコンビを組めたりするのでしょうか?」
「はい、出来ますよ。みなさんはこれから城を出て、チェックポイントに向かってもらいます。そこのチェックポイントで、新たにコンビを組み直す事が出来ますよ」
その一言で、会場にいる人間に安堵の顔が蘇る。もし仮に望まぬ相手とコンビを組んだとしても、チェックポイントまで行けば解消されるのだ。
それにしても、やっぱりクロスギは最低の人間だ。パートナーを人としてじゃなく、道具として見ている。改めてアイツには負けたくないという気持ちになる。
「ちなみに、このチェックポイントに早く着いたコンビには、色々とボーナスを付けさせて貰います。例えば、お金やレアアイテムを差し上げます。こういうレースも王族貴族の方々の賭けの対象となってるので、みなさん、頑張って下さいね」
ホントの戦いがこれから始まる。このドラフト会議は戦いの始まりなのだ。文字通り、命を賭けた死闘が始まるのだ。
僕は緊張で身体が震え出す。恐怖や不安といった負の感情に襲われる。
「それでは、他に質問がないようなので、ランキングの発表をしまーす」
黒ローブのリーダーがそう声を発すると、正面の電光掲示板の様な物にランキングが次々発表されていく。
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