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殺人事件

良かったら読んでいって下さい。




 六日前……。


 出版社の編集の方との打ち合わせの為、僕は朝から外出をする。レイコも出社をする為に、僕と一緒にアパートを出る。


 今夜はレイコの為に、ちょっと高級なレストランを予約したのだ。前から彼女が行きたいと言っていたお店だ。そのお店で食事をしようと話すと、彼女はスゴく喜んでくれた。僕もそんな彼女を見ていると、スゴく嬉しい気分になった。


 僕はレイコと19時に駅前で待ち合わせをしていた。僕は編集の人との打ち合わせを終え、待ち合わせ場所に着く。


 時間はちょうど19時を過ぎたところだった……。


 まだ来てないのか。僕は辺りをキョロキョロと見回しながら、レイコを待つ。僕は夜空を見上げる。すると、チラチラと雪が舞っている。寒いなと思いながら、僕はレイコを待つことにした。


 しばらくの間、僕はボーッと街の風景を見ていた。早く彼女とお店に行きたいな。そう思って僕は腕時計を見る。すでに30分の時間が過ぎていた。


 いつも時間通りに来る彼女が遅刻だなんて、変だな。僕は嫌な予感がして、彼女に電話する。しかし、繋がらない。


 僕は胸騒ぎに襲われる。そして、何度も何度も電話する。が、無情にも電話は繋がらない。


 僕はいたたまれない感情になって、レイコの会社の方角へと走り出す。彼女の会社と駅の間には、人気のない公園がある。彼女はここを通ったのか、まさか。そんな思いを抱きながら、僕は公園へと入って行く。


 案の定、公園の中は誰も歩いていない。暗い夜道を街灯が寂しく照らしているだけの公園だ。


 連続殺人事件のニュースを見た直後だ。レイコもこんな暗い人気のない道を避けて通っているに違いない。そんな淡い期待を持ちながら、僕は暗い公園を歩いて行く。


 何だろう、何か違和感を感じる。僕の五感は研ぎ澄まされ、緊張感に満ちていた。僕の目と耳と、鼻が何かを捉えようとしている。


 何かいる。僕は道の端に転がっている黒い物体を確認する。暗くて何か分からない。僕は近付き、その物体を確認する。


 人だ。人が倒れている。こちらに背を向けているから誰だか分からない。が、女性だ。女性の服装をしている。僕はまさかと思い、急いで顔を確認する。


 レイコだ。レイコが倒れている。


 僕は無我夢中で、急いで彼女を抱き起こす。すると、手にグチャという嫌な感触が伝わる。僕は暗がりの中、恐る恐る自分の手に付いた物を確認する。


 血だ。僕の手がベットリと赤く血に染まっている。僕は悲鳴を上げ、彼女の身体をじっと見る。レイコの脇腹にナイフが刺さっている。そこから大量の血が流れているようだ。僕は再び彼女の顔を見る。


 彼女はグッタリとしている。ピクリとも動かない。彼女の顔の周りを注意深く見る。すると、首元に不自然な傷がある。まるでナイフで切り付けられたような十字の形をした傷だ。


 こんな傷、今までなかったのに。何が、どうなってるんだ。


「レイコ! レイコ!」


 僕は彼女の身体を揺すって、叫び続ける。しかし、彼女は閉じた目を開けようとしない。


 何で、何で。その言葉が僕の頭の中で繰り返される。僕は涙を流しながら、レイコの身体を揺すり続ける。すると、暗闇の向こうの方で、ガサガサっと物音がして何かの影が近付いて来る。


「何かあったんですか?」


 スーツ姿の中年の男が、血だらけの彼女を抱き抱えている僕を見下ろしている。


「彼女が血だらけで倒れてたんです。お願いです。救急車を呼んで下さい!」


 僕は泣き叫びながら、その男に頼む。


「……分かりました。いいですよ。警察も呼んだ方がよろしいのですか?」


「はい、よろしくお願いします」


 僕はその男をチラリと見る。何か違和感を感じたからだ。その男はまるでヘビのように血が通っていない冷たい目をしていた。



   *   *   *   *   



 その後、レイコは救急車で病院へと運ばれた。レイコは僕が見つけた時点で、すでに息を引き取っていたらしい。


 僕は第一発見者という事で、警察から事情徴収を受けた。色んな事を警察の人達から聞かれたが、僕は何も覚えていない。ただ失望と絶望で僕の心は支配されていた。


 レイコを失ったショックで、僕は抜け殻のようになっていた。何にも、何にも考えられないのだ。

 

 レイコの葬儀に参列した時もそうだった。僕はまるで心のない人形のように、ただそこにいるだけだった。誰がいて、誰に声を掛けられたのかも何も覚えていない。




 色んな事が少し落ち着いて、彼女と一緒に過ごしたアパートに僕は戻った。レイコとの思い出の詰まった場所だ。


 レイコと過ごした楽しい日々が記憶として蘇り、僕は声を上げて泣いた。


 しばらくして、また僕はボーッとした毎日を送る。生きていく気力も失いかけている、まさにそんな感じだったのだ。


 ふと、レイコの遺品のスマホが目に映る。警察から持って帰ったのを、僕が無造作にテーブルの上に置いていたのだ。


 僕はレイコのスマホをボーッと眺めていた。彼女がスマホを使っている所をなぜか思い出していた。


 そして、僕は目を見開く。レイコの生前の言葉が僕の心に入って来たのだ。


“異世界に行って、大魔王を倒したらどんな願いでも叶えてくれる”


 僕は勢いよく立ち上がる。そして、自分のスマホを取り出し、僕は検索を始めた。


 

 


 


 





 

 


 

読んで頂き、ありがとうございました。

もし良かったら今後の執筆の励みにしますので、ブックマーク、評価などをよろしくお願いします。

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