サイコパスの魔術師と一騎打ち
タイマンマッチの試合は次々と進んで行った。
熱血刑事のアオハルは本気で行くと言ってたが、敢え無く試合に敗退していた。
うーむ、アオハルの奴は性格は悪くないんだが、実はあまり強くないんじゃないのか?
僕は正直、そう感じでしまった瞬間であった。
剣だけの腕で勝っていけるほど、このゲームは甘くないし、他の奴はもっと強い。
やはり、試合を見ていて、注目を引いたのはダークトライアドの面々だ。特にナルシストの勇者、サディストの戦士の強さは最初の印象通り別格だ。
「魔法使いは勇者より強い」なんてサチが言ってたが、本当にサチとナルシストの勇者がタイマンマッチすれば、サチは負けるかもと僕は正直思った。
他のみんなもこのタイマンマッチで、色々と情報収集が出来て、相方候補、ライバル対策の目処が立ったはずだ。水面下で色々動いて来るに違いない。
ますます過酷になるな、僕はそんな事を思いながら、闘技場の舞台へと立つ。
「それでは、最終試合、クロスギ対ユウトの試合を行います。両者前へ」
僕の目の前にクロスギが立っている。相変わらず僕を見下した目で見ている。観客達もじっと僕達の試合を見ている。サチもアオハルもどこかでじっと見ているんだろう。僕は用意した鎧と剣に触れ、集中力を高める。
「逃げられるかと思いましたよ。意外と勇気のある方なんですね。それともただのバカなのかもしれませんけど」
クロスギが僕に声を掛けて来る。僕は腹が立つので、顔を横に向け無視をする。すると、クロスギは鼻で笑って、首を左右に動かして準備運動をする。
「それでは、始め!」
黒ローブのレフリーの掛け声とゴングが同時に会場に響く。
今さらながら、魔法使いタイプと僧侶タイプの異種格闘技戦ってどうなのよと、僕は考え始める。そもそも僕達、僧侶タイプが一番不利に決まってるだろとイベントを考えた奴に言いたい。
クロスギが呪文を詠唱し、仕掛けて来る。奴の手の周りに氷の粒が集まり、ツララ状になって僕に襲って来る。
氷の魔法か? 心の冷たいアイツらしいや。
そう思って、僕も呪文を詠唱し、魔法の盾を完成させる。
襲って来たツララは三本。最初の二本は上手く交わせた。が、最後の一本が交わせない。僕は盾を使い、それを弾き飛ばす。
「ほぅ、魔法使いとの戦いは、どうやら初めてじゃないみたいですね。少し見直しましたよ。でも、私と君のこの試合でのオッズを知っていますか?」
クロスギが笑いながら、饒舌に話し掛けて来る。
よくしゃべるヤツめ、うるさいよ。僕はそう思いながら、身構える。
「二倍の私に対して、君は二百倍ですよ。つまり、ほぼ全員が君に勝ち目はない、と言ってるんです。分かりますよね?」
クロスギは楽しそうに話して来る。何だよ、それは自慢かよ。面白くねぇよ。僕はまた無視を決め込む。
「だからもし、あなたが私に勝ったら、早崎礼子さんの殺人事件の真相をお話しますよ。このまま当たり前に終わったら、面白くないですからね。どうです?」
今のクロスギの言葉で僕の眉が動く。
「……本当だな? 僕が勝ったら本当の事を話すんだな?」
「えぇ、本当ですよ。なぜ、私があの殺害現場にいたのかも、お話しますよ」
僕は呪文を詠唱し始める。
「付与魔法、速度アップ!」
僕はクロスギに向けて走り出す。そして、持っていた剣を抜いて突進する。
「早い!」
クロスギは驚き、呪文を詠唱し出す。すると、地中から氷の槍が飛び出す。僕はそれを難なく交わし、クロスギの首を目掛け、剣を振り下ろす。が、クロスギも難なく僕の剣を交わす。
「なるほど、君は付与魔法も使って来るのですね。なかなかです。でも、剣の腕が最悪ですね。誰もその事について教えてくれなかったんですか?」
「知ってるよ。自分でも嫌になるくらいにね」
僕はまた呪文を詠唱し、クロスギに向かって行く。
「付与魔法、攻撃力アップ!」
僕の身体が赤く光り出す。そして、クロスギに剣を振り下ろす。クロスギはまた、素早く交わす。が、僕の剣が地面に当たり、周囲が吹き飛ぶ。飛び散った地面の欠片が僕やクロスギに当たる。
「恐ろしい破壊力ですね。でも、全く当たる気がしないですね」
クロスギは笑いながら、後退している。僕は頭に来て、さらに追撃をする。
「ダメ、ユウト!」
どこかからサチの声が聞こえる。その瞬間、僕の身体が吹っ飛ばされる。
クロスギの周りに円状の魔法が掛かっている。サチがゴウケツに掛けていたあの魔法だ。アレに僕は飛ばされたのか。宙に舞った僕は、クロスギのツララの魔法の追撃で身体を貫かれる。
い、痛い……。
そして、腹から大量の血を流している僕の胸ぐらをクロスギは掴み、僕を掲げる。
「これが力の差ですよ。ザコがどう騒いでも、王となる人間の前ではこういう運命になるんですよ。身のほどを知って下さい」
クロスギはそう言うと、血だらけの僕を投げ捨てる。黒ローブのスタッフ達が集まり、僕に治癒魔法を掛けている。
勝利をアピールしているクロスギを、薄れる意識の中で僕は睨む。
そして、僕は心に誓う――――。
今は本番じゃないんだ……。
城の外に出たら絶対に負けない……。
絶対に……。
僕の意識はここで途絶えた……。
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