HSPとサイコパス
☆登場人物紹介
ユウト(男)
主人公。HSP(繊細さん)の小説家。
HSPの付与魔法使いになる。
レイコ(女)
主人公の恋人。会社員。
クロスギ(男)
サイコパスな会社経営者。
サイコパスの魔術師と呼ばれる最強の魔法使いになる。
サチ(女)
日本一頭の良い大学の学生。
二刀流の魔法使いと呼ばれる魔法使いになる。
一週間前……。
彼女と同棲をしているアパートで、僕は彼女と何気ない時間を過ごしていた。この時間こそが僕にとってホントに最高で幸せな時であった。
「ねぇ、ユウト。異世界に行って大魔王を倒したら、どんな願いでも一つだけ叶えてくれるだって」
「え、何それ?」
僕の彼女レイコがスマホを見ながら、僕に話し掛けて来る。僕達はベッドを背もたれにして隣同士座っている。
「今、SNSとか動画配信で、盛り上がってる話題なんだよ。年の変わる1月1日に異世界への門が開かれて、向こうの世界に行けるんだって。行ける人数は40名だけ。適性試験があるから誰でもは行けないんだってさ」
「へー、それで向こうの世界に行って大魔王を倒したら、願いを叶えてくれるの?」
「そうみたいだよ。もしさ、私達が行くとしたら、ユウトが勇者で私が僧侶だね」
「え、何で僕が勇者なの? 僕はそんな目立つポジションとか向かないよ。勇者をサポートする魔法使いがちょうどいいよ。戦士になるほど体力に自信はないしね」
「そうかな? ユウトはHSPの特性を持ってるし、勇者に向いてると思うけどな」
「HSPって、こないだ言ってた繊細さんな人の事でしょ? 僕にスゴく当てはまっているっていう……」
「そうそう。音や光に敏感に反応したり、共感能力が高くて他人の顔をスゴく気にしたりする人の事よ」
「正直HSPの性格なんて、スゴく気を使って疲れやすいし、人間関係で悩んだりしやすいから、生きづらいから嫌だよ。こんな性格ホントに変えたいよ」
「でも、スゴく才能のある人が多いと思うよ。ユウトも才能あるでしょ? 小説家さんなんだし」
「僕は才能なんてないよ。だから、いつまで経っても売れない作家だから」
「そうかな? 私はユウトの小説好きだし、才能あると思うけどな。それにユウトの性格も好き。HSPの人は誠実で優しい人が多いからね」
「そうかな?」
「そうだよ」
レイコの言葉に僕は少し照れる。レイコの言葉と表情から彼女の僕に対する愛を感じ取ったからだ。
「それで、もしユウトが大魔王を倒して願いを一つだけ叶えてくれるとしたら、何を願うの?」
「うーん、何だろ? 特に何も望まないかな? 今のままで幸せだからね」
「え、何それ? 相変わらず欲がないなぁ、ユウトは。もっと面白い答えを期待していたのに、つまんない」
「え、それじゃ、レイコは何を願うの?」
「うーん、いつまでもユウトと幸せに過ごせますようにかな?」
「僕の願いとそんなに変わらないよ。でも、スゴく嬉しい。ありがと」
僕はそう言ってレイコにキスをする。レイコも僕の身体を抱き締める。
僕はこの時、幸せだった。特にお金持ちではなかったし、仕事で成功している訳でもなかった。ただ、彼女がいるだけで僕は本当に幸せだったのだ。
その時、何気なく付けていたテレビから、ニュース番組が流れる。報道していた内容は、今世間を騒がせている連続女性殺人事件の話だった。また新たに犠牲者の女性が出たようだ。今度の被害者で十人目という事だった。
「日本も物騒になったね。こんな猟奇殺人、海外だけかなって思ってたのに」
僕はその話題が気になり、レイコに話す。
「うん、恐いよね。狙われているのは、女性ばかりだから。犯人も捕まってないから、本当に恐いわ」
レイコもかなり怯えた顔をしている。そして、何か思い詰めたように考えている顔をして、彼女は言葉を漏らす。
「こんなの言うとあまり良くないのかもしれないんだけど、私の勤めている会社の社長がスゴく怪しいのよ」
「え、レイコの所の社長が……。どういう事なの?」
僕は彼女の言葉に驚き、聞き直す。
「うちの会社の社長がサイコパスっていう話をしてたでしょ?」
「うん、確か前に言ってたよね。優秀で仕事の出来る経営者なんだけど、スゴく冷たくて人を道具としか思っていないような人だって。だから、レイコもその会社を辞めようかどうか迷ってたんでしょ?」
「そうなの。ただ、仕事が出来て冷たい人だけなら良かったんだけど、色々とイヤな噂の絶えない人だから余計に恐いのよ」
「え、例えば……」
「すぐに色んな女性に手を出しているらしいのね。ま、それだけなら、経営者によくある話って事で終わるんだけど、彼と街で歩いていたっていう女性が、次の日死体になってた、何て話がいっぱい出てて」
「え、それってヤバくないの? 警察はなぜ捕まえないの?」
「証拠がないんでしょ? 捕まえられるだけの。スゴく頭のいい人だから、警察に尻尾を掴ませないって。これもあくまで噂なんけど」
レイコはブルブルと震えている。何か言いたそうな顔をしているが、言おうかどうか悩んでいる。そんな顔をしている。
「私も……、私も最近、その社長に食事に誘われてるの。私は彼氏がいるからダメですって何度も断ってるんだけど、かなり強引にしつこく誘って来るの。ホントに恐くて……」
レイコは意を決して口を開く。僕は拳をギュッと握り締め、彼女の目を見て話す。
「もし、これ以上その社長が誘って来るなら、その会社をすぐに辞めよう。僕が必ず君を守るから、レイコは安心して」
僕はレイコを抱き締める。僕はその時、レイコを絶対に守れると思っていた。それだけの力が僕にはあると信じていた。
しかし次の日、レイコは変わり果てた姿になって、僕の前に現れる事になる……。
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