魔界の獣との契約
「サチ、作戦会議だ」
光線イタチの動向を伺いながら、僕はサチを呼び寄せる。
「何か、いい案が思い付いたの?」
サチも魔界から来た獣を気にしながら、僕に近付いて来る。
「うん、僕なりの策を考えた。今から、それを伝える。まだ、サチの方は魔法を使えるの?」
「大丈夫よ。私の魔法容量をナメないでよ。で、どんな作戦?」
僕はサチに作戦を耳打ちする。その間もしっかり光線イタチからは目は外さない。だって、いきなり襲って来られたら恐いから。
「ユウト、その作戦、失敗したらあなた死ぬわよ。そんなリスク背負わせられない。却下よ」
「この異世界にいる限り、絶対安全という選択はない。これからもずっと、勝つまでね。それに僕の分析では、死ぬ確率はそこまで高くない。サチの能力が高いからだ。君を信用してる。アイツを仕留めてくれ」
「……分かったわ、ユウト。意外と男らしいのね。見直したわ」
「好きなアニメの影響かな? 終わったら、その話で盛り上がろう」
「……絶対、アイツを仕留める」
サチはそう言うと呪文を詠唱し始める。僕も呪文を詠唱し、走り出す。
「付与魔法、速度アップ!」
僕の走るスピードが大幅に上がる。そして、僕は光線イタチを追い掛ける。当然、光線イタチは僕に後ろを見せて逃げ出す。
光線イタチの尻からの強力な拡散ビームは、敵から逃げる為の物なのだ。一番効果が高いのは、敵が真後ろに接近した時なのだ。その瞬間は左右にフットワークを使って、移動する事は出来ない。
つまり、拡散ビームを撃つ瞬間、光線イタチは真後ろからの敵意外には無防備になるのだ。そこを狙う。
僕は囮だ。奴の後ろを高速で追い掛けて、奴に圧力を掛け、拡散ビームを撃たせる。そこをサチに仕留めてもらうのだ。
もちろん、あの拡散ビームを至近距離でモロに食らうと致命傷になる。だから、命懸けの勝負なのだ。
「光線イタチちゃん。早く逃げないと捕まえちゃうよ」
人生で一度も言った事のない台詞を僕は口にして、手を伸ばし光線イタチを追い掛ける。その方がリアリティーが出るだろう。イタチもそんな僕を見て、必死で逃げ出してる。
向こうもさすがに早い。付与魔法で速度アップした僕と同じくらいのスピードだ。イタチと僕の追い掛けっこは激しさを増す。
サチの魔法がイタチを襲う。が、光線イタチはフットワークで素早く交わして行く。やはり、拡散ビームを撃つタイミングじゃないからか。僕は相変わらず手を伸ばし、獣を追い掛けている。
まだ、撃ってこないのか?
今までなら、すぐ拡散ビームを撃ってきたのになぜだ?
まさか、撃ち止めなのか? 弾切れなのか?
僕の脳裏を一瞬かすめる。と、もう少しで手の届く所までイタチを追い詰める。なら、捕まえるまでだ。そう思った瞬間、光線イタチの尻が光り出す。
コイツ、エネルギーを溜めていたのか? ギリギリまで僕を引き付けて、確実に僕を仕留める為に。食えない奴だ。
このほぼゼロ距離から撃たれたら、僕はマジで死ぬ。そう感じた時。
「炎の弾よ!」
サチの魔法が完成し、炎の弾丸が一直線に飛んで来る。そして、小さくて素早い光線イタチの身体に炸裂する。イタチは激しく鳴き声を上げ、血を流しながら、その場に倒れる。
「サチ、早くしないとイタチが死んじゃう。契約を……」
僕は血を流し、倒れている光線イタチに駆け寄る。サチも急いで駆け寄って来る。
「汝、我に従い、契約を受け入れるか?」
サチは手の平を光線イタチにかざし、交渉している。イタチは苦しそうにバタバタしていたが、突如それを止め表情を緩める。
「ユウト! 契約成立よ! この子を早く治して!」
僕はすぐさま光線イタチの血の流れている部分に手をかざし、治癒魔法を光線イタチに施す。傷口から出血が消え、傷口がふさがっていく。そして、イタチは元気を取り戻し、辺りを走り回る。
「やったね! ユウト。この子を味方に出来たわ。ありがとう。あなたのおかげよ」
「いや、良かったよ。結構危なかったけど……」
汗だくで息切れしている僕はその場にドッと座り込む。
めっちゃ疲れた。かなり、走り回ったよ。早く寝たい。
僕はそんな事を思いながら、サチの周りを走っている光線イタチを見る。笑顔のサチが走っているイタチを見ている。そんなカワイイ彼女の笑顔を見ていたら、僕は協力して良かったなとつい笑みがこぼれてしまう。
すると、サチは僕の方を振り返り、じっと僕の目を見つめる。
「ユウト! 私とのパートナーの件、前向きに考えてよ。私はあなたにパートナーになって欲しい」
サチは真剣な顔だ。僕は疲れた身体を起こし、笑顔で彼女に応える。
「その事なら前に応えたように僕自身強くなってから、パートナーを決めたい。今の僕では誰と組んでも相棒の足手まといになってしまう。そんなの自分で許せないから」
「相変わらず、謙虚だね。そうだね。私も最強の魔法使いを目指すから。その時に」
僕はサチと再び約束を交わし、清々しい気分で自室へと帰って行った。
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