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魔法使いのレベルと知能指数の相関性

「それじゃ、私も本気でいくよ。ユウトに失礼だもんね」


 サチは呪文の詠唱を始める。僕も新たなる呪文を発動させる為に、呪文を唱えサチの方に走り出す。


 するとまた、サチの呪文の方が早く完成する。


 この子、呪文の詠唱スピードがかなり早い。魔法使いとしてメチャクチャ優秀だ。あのサイコパスの魔法使いクロスギと互角、いやそれ以上の力を持っているのでは。僕はそう考え始める。


 そんな事を考えていたので、自分が危機的な状況に置かれている事に今頃になってやっと気付く。サチの後方で魔法で出来た炎の玉が複数飛んでいる。数にすれば、20以上はあるように見える。その玉が一斉に僕に向かって襲って来る。


 う、嘘だろ。僕は驚き、その場に立ち止まる。


 落ち着け。冷静になって、対処するんだ。僕は深呼吸を一つして、襲って来る炎の玉の嵐をもう一度睨み付ける。


 見える、見えるぞ。


 一つ一つの進行方向、速度を見極め、僕は交わす。速度アップの付与魔法を使っている為、交わせないスピードではない。一つずつ僕は確実に交わして行く。どうしても交わせない炎は魔法の盾で防ぐ。


 そして、僕は再びサチの前まで辿り着く。サチも驚いて、目を見開いている。僕はそんな彼女に対して、剣を振り下ろす。が、またもや空振りに終わる。すると、サチは体勢を立て直してから、僕にニコリと微笑む。


「まさか、ここまでとは思わなかったよ。あの魔法を無傷で防がれるとはね。正直、参ったよ。でも、攻撃は全然ダメだったね」


 その言葉に僕は少しムッとする。


「あ、ユウト。もう、そろそろお開きにしない? 私の魔法容量、実はゼロなんだ。勘弁してもらえるかな? ゴメンね」


「うん、分かったよ。僕もあれを防ぐのに疲れたから、もうこれ以上は無理だね。当たったら確実に大怪我だったよ、あれ」


 僕はその場に座り込む。ズシリと肩から疲れが降りて来る、まるでそんな感覚だ。ホントに疲れた。


「ねぇ、ユウト。もし一年後、お互いが順調に成長して、お互い組みたいパートナーがいない場合は、一緒にコンビ組まない?」


 サチはそう言いながら、僕に近付いて来る。


「ホントはパートナーは男の方がいいかなって思ってたんだけど、サチの魔法使いとしてのレベルがスゴく高かったからね。もし良かったら、僕の方からもお願いします。まぁ、僕の方は選ばれるようにもっと強くならないといけないんだけどね」


 僕は頭をポリポリとかきながら、サチの方を見る。サチは満足そうな顔をしている。僕もかなりの収穫を得た。こちらとしても、これは満足のいく結果であった。


「ねぇ、ユウト。そういや聞いてなかったんだけど、ユウトが異世界に来た理由って何なの?」」


 サチは、座り込んでいる僕を見下ろしながら訊ねる。僕は少しうつむいて考えながら、話を始める。  


「僕は願いを叶える為に異世界に来たんだ……」


 向こうの世界で殺された恋人、レイコを生き返らせる為にこちらの世界に来た事を僕はサチに話した。そして、向こうの世界で殺人犯として捕まりそうになった事、殺人犯の容疑者として、魔法使いのクロスギが怪しい事について、続けて話をした。


「なるほどね。それがユウトの異世界に来た理由なんだね」


「うん、だから僕は強い相方が必要なんだ。そして、僕はドロップアウトはしない。優勝するか、負けて死ぬかどちからしかないんだ」


 僕は自分の決意を改めて確認するようにサチに話す。


「それで、あのクロスギが犯人だとユウトは思っている訳なんだね?」


「うん、あの男怪し過ぎる。絶対にアイツが犯人だと僕は思っている」


「まぁ、決め付けは良くないね。あの男がサイコパスで悪人というのは私も認めるけど。あの男に固執し過ぎるのはユウトの為にならないと私は思う」


 サチは少し心配そうに僕を見つめる。アイツが犯人じゃない可能性、考えもしなかった意見に僕は少し戸惑う。そして、確かにサチの言う通りだと考え直す。


「そうだね、分かったよ。ところで、サチが異世界に来た理由って?」


「私? 私の理由っていうか願いっていうのは半分叶っているようなものなんだけど……。私が異世界に来た理由は魔法使いになる事。そう、最強の魔法使いになる事なんだ」


 なるほど、確かサチはアニメオタクだった。僕は彼女の理由に納得をする。


「でも、最強には現時点でなれないかもしれない……」


「え、どういう事?」


「さっき言ってたクロスギだよ。アイツは化け物だ。アイツが現時点で最強の魔法使いだよ」


 サチはうつむいて答える。クロスギの話が出た為、僕は少し不快な気持ちになる。


「魔法使いの強さの話って分かるかな?」


「うん、少しなら。呪文の詠唱の速さ、正確性、魔力の強さで優秀かどうか決まるんだよね?」


「そう、それは全てIQ。つまり、知能指数と魔法使いの強さには相関関係があるんだよ」


 サチは興奮気味に言葉を強める。


「つまり、頭の良さが魔法使いのレベルを決めるって事?」


「そう! 私も自慢じゃないけど、Z大学の学生だ」


 僕はその言葉に驚く。Z大学は日本でトップの大学だ。要するにサチは日本でも有数の頭脳の持ち主の大学生と言う事なのだ。


「え、それって、クロスギはそれ以上の頭脳の持ち主って事なの?」


「うん、アイツは天才だよ。だから、私も驚いている」


 確かにサイコパスに頭脳の優秀な人がいると言う事は聞いた事がある。でも、そんなのって……。


 僕は愕然としながら、うつむいた。


 




 


 


 


 



読んで頂き、ありがとうございました。

もし良かったら今後の執筆の励みにしますので、ブックマーク、評価などをよろしくお願いします。

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