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願いを叶えられるのは二人だけ

※こんな人にオススメ


HSP(繊細さん)の人

サイコパスなどの悪い奴が嫌いな人

ファンタジー、恋愛、ミステリー小説が好きな人


五人に一人いると言われているHSPの人の能力を異世界で使ったらをテーマに書いています。


良かったらよろしくお願いします。


 願いを叶える為に、剣と魔法が支配するこの異世界に僕はやって来た……。


「この世界へようこそお出で下さいました、40人の異世界人の皆様。歓迎いたします。私はこの大魔王討伐ゲームの運営をしております、ジークと言います。以後よろしくお願いします」


 ここは西洋の城の大広間のような場所だ。少し段が高くなっている王座のある所で、黒いローブのフードを被った男がしゃべっている。


 周りは僕のように向こうの世界から来た40人の男女と、黒ローブのフード姿の怪しい人達が何人かいる。黒ローブの人達は恐らくこちら側の世界の人間に違いないと僕は感じた。


「早速ですが、ルールの説明を致します。あなた方、40名の方々には大魔王討伐ゲームを行ってもらいます。このゲームはコンビ戦です。大魔王を倒して、優勝したコンビの二人には、どんな願いでも一つだけ叶えられる権利が与えられます」


 大広間の人々がざわつく。みんなの反応を別に確認する訳でもなく、黒ローブのリーダー風の男は話を続ける。


「皆さんには、この一年間、この城で戦いの為のスキルとステータスを上げて頂いて、強くなってもらいます。皆さんがご存知の通り、この世界では剣と魔法の強さがモノを言います。死にたくなかったら、強くなって下さいね」


 黒フードのジークは笑みを浮かべる。よく見ればジークはサングラスもしている。他の黒ローブとフードの男達もそうだ。この黒ローブとサングラスはこのゲームのスタッフの制服なのかと、僕は彼等をじっと観察する。


 すると、ワンピースを着た若い女の子が手を上げ、発言する。


「スイマセン。私はそんな大魔王討伐ゲームなんて、やりたくありません。この異世界でスローライフを送りたいだけなんです。私をゲームから外して頂けませんか?」


「ダメです。全員強制参加です。でも、勝ち進んで行けば、ドロップアウトして、この異世界でスローライフも送れます。優勝すれば間違いなく、何不自由なく暮らせますよ。しかし、序盤でのドロップアウトは死ぬ事のみになってます」


 ジークは女の子に淡々と応える。女の子は呆然とした顔で、プルプル震えてその場に座り込む。すると、スーツを着ている中年の男が手を上げ、質問する。


「優勝したら、どんな願いでもと言っていますが、本当に叶えてくれるんですか? 例えば、不老不死になるとかでも出来るのですか?」


「えぇ、出来ますよ」


 その答えを聞いて僕も挙手をする。あまりこういう場面で積極的に質問をするタイプではないのだが、どうしても聞いておかなければならない質問があったのだ。


「はい、そこのTシャツの方、どうぞ」


「あ、どうもありがとうございます。願いごとの件なんですが、向こうの世界で死んだ人間をこちらの世界で生き返らせる事は可能ですか? 生き返らせる魔法とかって、こちらの世界に存在しますか?」


「えぇ、可能ですよ。通常魔法ではこちらの世界でも、死者を生き返らせる事は出来ません。しかし、大魔王を倒した場合にのみに限り、可能です」


 黒ローブの返事を聞いた僕は小さくお辞儀をして、その場に座り込む。そして、小さくガッツポーズをする。


 この世界には、彼女を生き返らせるチャンスがあるのだ。僕は少し嬉しくなり、今後の戦略を考える。


「なぜ、コンビで大魔王討伐なんですか? 四人パーティーで戦う方がバランスが良いのでは……」


 パーカーを着ている若い男が手を上げ、口を開く。


「主催者の希望です。理由は確か、主催者が漫才が大好きで、コンビ愛が見たいから、だったと思います」


 黒いフードを被ったジークは、相変わらず感情を込めず応える。パーカーの青年は驚いた顔で、その場に黙って座り込む。


「なぁ、異世界から転移したら、チートスキルとかもらえるのがお約束じゃねぇのか? あるなら、よこせよ」


 ヤンキー風の男が偉そうな物言いで、黒マントに質問している。


「あ、実はこの40名の中で一人だけ、チートスキルを持っている方がいます。チートスキルの内容と誰が持っているかは、この場では伏せさせて頂きます。間違いなく、その方が優勝候補になりますから。当然その方のパートナーも優勝候補になります」


 その言葉で、40名の男女はお互いの顔を見回す。みんな誰が持っているんだという気持ちと、それが自分であって欲しいという期待で、ドキドキしているみたいだ。


 僕は生まれ持ってのネガティブ思考だ。だから、自分がこの中で運良くチートスキルを持っている、なんて都合のいい事は考えもしなかった。


「そもそも何でこんなゲームを私達にさせるんですか? 止めて頂けませんか? 無意味です」


 中年女性が涙を流しながら、訴えている。黒ローブのジークはお構いなしに、また無感情で応える。


「この世界の王族と貴族の娯楽です。皆さんは賭けの対象となっているのです。つまり、あなた方は競馬でいう所の馬なのです。王族と貴族の方が誰が優勝するか賭ける、ただそれだけです。分かりましたか?」


 この場にいる異世界から来た人間は絶句している。いや、何人かはこの状況を楽しんでいるようにも見える。野心的に優勝を目指している者が確実にいると、僕の目には映った。


 僕も震えが止まらずにいた。これは恐れの感情からではなかった。これは武者震いだ。ワクワクとドキドキが入り交じる感情だ。


 この異世界に来てからの明確な目標が見えた。この僕の命を縣けてでも、成し遂げたい目標が確実に……。


 僕が大魔王を倒して、願いを叶えてやる――――。


 僕の願いは、向こうの世界で連続殺人鬼に殺された彼女、レイコを生き返らせる事。


 その為に僕はこのイカれたゲームで優勝する。


 僕はそう、心に強く誓った――――。

 


 








 

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