05【海辺のオクトパシリア】
案外と久しぶりに海辺に散歩に出かけた。
岩肌がほんのりときつく、足の裏に刺さりそうな感触がする。
いったん、足首をグネったけど、無事だった。
波打ち際まで歩いていると、干満の関係で現れた洞窟に人影があった。
気になってのぞいてみると、そこには蛸魚人がいた。
錬金術とかで使いそうな大きな釜がある。
どうしよう、と思っていると、「そこにいるのは気づいているよ」と言われる。
「こちらへおいで?」
「あの~・・・お名前おうかがいしてもいいですか?」
「オクトパシリア」
ヤバい。
界隈で伝承されてる、悪の眷属の蛸魚人だ!
たしか美容好き。
「え、えーと・・・あっち」
「ん?」
「ここらへん、温泉沸いてるんですけど美容にいいですよ。弐時間浸かるといい」
「ほーう・・・無事に帰してあげよう」
――
――――・・・翌日、今日。
オクトパシリアが天然の海温泉で、「ゆでだこ」になって発見された。
紫を含んでいるような黒い蛸の部分が、見事に赤くなっていたそうだ。
魔女指定もされているオクトパシリア。
図書館に行って魔法書を読んでみると、『ゆでだこになって死去』と書いてあった。
オクトパシリアよ、さようなら。