30【それからのこと】
朝、空が白む頃には近くを通った台風は通過していた。
そして捜索願が出されていた私が、ドレスを着たノア君に家まで送ってもらった。
ノア君は店に帰ると、「おお、生きておったか」とマスターに泣かれたらしい。
正直、マスターが泣くこともある生き物だって知らなかったとノア君は言った。
抱きしめられたけど、あんなに強い力を持ってることも知らなかった、と。
あれから店のお客さんには、「マジックだった」と誤魔化し・・・
そしてメディアが取り上げたのは全国指名手配犯が、元勇者に斬られた話。
その危ないじじぃが変態であり、女子をストークしていたことを報道。
「そのストークの被害を受けていた女性は一人称を「俺」と言うトラウマを持ち」
・・・と、ノア君のことはそういう風に守ってもらった。
私は、と言えば・・・地図に乗っていない地区に住んでいる。
引っ越して来たと言っても4歳の頃だけど、この地区は外と内とでは名前が違う。
住人たちは特殊ななまりで秘密を守っている。
それはノア君の居住している区とは、違う場所。
出入りについて、住人はある程度遠出をしてもいいけど、旅行は禁止。
昔、天使や精霊とまぐわってできた血筋のひとたちが多い区だから。
その区を中心に、周りの特殊性はグラデーションらしい。
中心は協会。
みんなが、心配してくれてるけど、案外と平気よ、と言ってある。
両親は朝帰りをした私が台風の通過でぼろぼろになっているのを、抱きしめてくれた。
正直、どなって怒られるのかと思っていた。
泣いて・・・しまった。
奇襲は怖かった。
それと、試行錯誤のあとから、ノアの心身に変化があった。
あの時、彼は「男であること」を望んだ・・・そして、それ以来女性化していない。




