03【外猫が喋りだした】
近所は、車二台がギリギリ行き来できる程の広さしかない。
小道が好きな私には、お散歩にぴったりだ。
道の両方に塀が立っている場所なんかは、コンクリートの灰色で視界いっぱい。
「灰色の道」って勝手に呼んでいる。
塀の柄とか作りが面白い場所があるんだ。
そこらを縄張りにしている野良猫がいて、時々エサをあげていた。
お弁当屋で揚げた小魚を買って公園で食べていると、たいがい寄ってくる。
今日も外猫の「アンジー」はやってきた。
揚げた小魚を食べて、満足そうに口元を舐めて・・・
「《美味しいにゃ~、いつもありがとう》」
と喋った。
そのあとアンジーは帰宅する間、ずっと側に寄り添っていた。
どうしたんだろう?ってくらいに、一定の距離を保って側にいる。
二股になる道を反れていくので、偶然か、と思って少し微笑。
気になってそちらを見ていると、木製の開いたドアから老爺が出てきた。
「《あのこ、気に入ってるんだにゃー》」
こちらをアンジーが片手で示し、老爺と視線が合った。
苦笑しながら会釈。
「今度、店に遊びに来てもいいですよ。1500シューイーズあればお腹いっぱいです」
「もしかして・・・そちら、カフェ?」
「はい。お嬢さんはどうやらヴィリオンに気に入られたようですね」
どうやら外猫はカフェの店主に「ヴィリオン」と呼ばれているらしい。
今度、カフェに寄ってみよう、っと。