29【花園】
雨は一時的に弱まって、しとしとと道路も服も濡れている。
そして計算した経路通り、危ないじじぃをまいたかもしれない。
秘密の扉の鍵を、お守り代わりに持っていた。
なので空地みたいな庭の雑草に隠れている扉の鍵を開けて、ふたりで中に入った。
中はがらんとしていて、肩で息をしている自分を抑えるために深呼吸。
ノアちゃんから中に入れて、内鍵をかけた。
おそらく声を出さなければ、危ないじじぃには気づかれない。
小声で彼女に「しばらくは大丈夫かも」と言う。
するとドレスを着たままのノアちゃんは、へなへなと虚脱した。
すすり泣きを始める。
「の、ノアっ・・・」
「お、俺・・・何も守れない自分が嫌だっ・・・したいっ、どうしようっ?したいっ」
「な、なに?何をしたいのっ?」
「したいよっ・・・どうしよう、こんな時にっ・・・どうしよー・・・欲しいよう」
「どうしたのっ?」
頭を抱えて泣いているノアちゃんの前でしゃがむ。
彼女の体が、男性化を始めた。
「あかりちゃんのために、俺、男にしかなりたくないぃ・・・神様ぁ・・・」
まさかそういうことを言っているのか、って気づいてぎょっとした。
殺されるかもしれない、ってことは死ぬかもしれない。
だったら・・・初めては、ノアでいいかもしれない・・・。
「抱きしめていい?」
「早くぅ~・・・怖いよ~・・・」
抱きしめて、抱き寄せて、おでこやほほや唇に口づけて・・・
そして声を出さないように、わたしたちは時間をかけて試行錯誤をした。
その日の夜は疲れて、翌朝、管理人さんに起こされるまでふたりで眠っていたらしい。




