12【「フェアリノス」】
日曜の市で名刺を渡した美少年は、昼間から酒をかっぱらっていた。
どうやら外猫アンジーをヴィリオンと呼んでいる老爺のカフェの関係者。
おもむいたカフェのカウンター席に彼はいて、名前を「ノア」と言うらしい。
近所の婦人たちが、彼が女装家であると言っていた。
店の中は薄暗く、自然光が外に面した窓の形を影みたいに落としている。
店に入ると壁際に設置されたランプが光った。
市で見かけた妖精がいて、光を発生させながらこちらに手を振っている。
手を振り替えして、そして「ノア」君に声をかけられる。
どうやら酔っていて、妙にケラケラしている。
「本当は夜にしか酒は出さないけど、マスターの孫特典。いける口?」
「いいえ、まだ特に飲んだことないの」
「何歳?」
「少なくとも15歳」
大人びた姿のノア君は、去年の夏休み期間に身長が15センチ伸びたらしい。
それから外国の血が入っていて、店の名前「フェアリノス」は外国での苗字らしい。
喉仏あたりがセクシーだなぁ、と思ってぽんやりしていた。
「俺に興味あったりする?」
「え?」
「俺はあんたに興味あるんだけど・・・」
「・・・えっ?」
そこに用事をすませたマスターが近づいて来て、銀盆でノア君の頭を軽く叩いた。
「飲み過ぎだ、アホ」
ソムリエルと言う伝説のひとのおかげで、数百年たった今でも飲酒は15歳からだ。
今度デートしようぜ、とノア君に言われて「急に変なことしないなら」と答えた。




