その九 転校生と楽面君
通との間に余計な事をしないよう、宏人に釘を刺した望美。
しかしその時立ってしまったフラグがライバルを呼び寄せてしまったようで……?
どうぞお楽しみください。
一週間後。
「あー、今日からこのクラスに新しい仲間が加わる。仲良くするように」
担任の言葉にざわつくクラス。
高校で、しかも学期の切り替えでもない時期に転校など珍しいからだ。
「入りなさい」
「はい」
担任の言葉に、鈴を転がすような涼やかな声が響く。
扉を開けて入って来たその姿に、クラスのざわめきが収まった。
「京都から来ました、京極美夜子言います。よろしゅう」
長く艶やかな髪を揺らして頭を下げる美少女に、先程を上回るどよめきが広がる。
すると美夜子は微笑んで、
「賑やかでよろしゅうおますなぁ。元の学校は皆大人しくて少し寂しいくらいやったんや」
と言い放った。
途端にどよめきが収まり、代わりにひそひそ話がクラスを埋める。
(……おい、あれって京都特有の嫌味ってやつかな)
(『うるさい黙れ』を遠回しに言ってきたんじゃない?)
(めちゃくちゃ美少女だけど、あんな性格の奴は嫌だなぁ)
(そう? 最高じゃん。罵ってもらいたい……)
そんな中、通は、
(そっか! じゃあ寂しくならないように、いっぱい話しかけてあげよう!)
と決意し、そのキラキラした目で美夜子を見つめた。
それを見て望美は、
(ま、まさか、楽面君、ああいう子が好きなの!? どうしよう、何とかしないと……!)
と勝手に焦りを募らせるのだった。
読了ありがとうございます。
京都のいけずネタは都市伝説的なものだと思いつつも、言外に色々な意味を持たせて話している感じは好きです。
実際に言われたらへこむどころじゃすみませんけど……。
「衣谷はん、随分ぎょうさん書いてらっしゃるようどすなぁ(量より質いう事を考えた方がよろしおす)」
がはっ(吐血)。
しかしそんなの通じない通と美夜子がどうなるか。
次回もよろしくお願いいたします。