その七 ツンデレと否定
昼休みに通に好きな女の子の話を振って、予想外の答えに宏人と望美は戸惑います。
さて、放課後、懲りもせずに再び宏人が通に話しかけますが……?
どうぞお楽しみください。
放課後。
帰ろうと荷物を鞄に入れる通の元に、再び宏人がやって来た。
「なぁ楽面」
「何? 浅井君」
「お前、ツンデレって知ってる?」
「……」
「つん、でれ……?」
隣の席の望美が固まるのを見て、聞いている事を確信した宏人は、首を傾げる通に話を続ける。
「好きな相手に素直になれなくて、つい意地悪をしちゃうタイプの人の事さ」
「へぇ、そんな人いるんだね」
「あぁ、結構身近にもいると思うぞ」
「そう?」
「……」
宏人が目をやると、望美は耳を赤くしてぷるぷると震えていた。
にやりと笑った宏人が、通に耳打ちする。
「五階の態度、それっぽくないか? 好きだけど言えない的な感じ」
「えー、そうかなぁ」
「そうだと思うぜ」
「じゃあ聞いてみる」
「えっ」
止める暇もあらばこそ。
真っ赤になって聞き耳を立てていた望美に、通は無邪気な顔を向ける。
「ねぇ、五階さんってツンデレなの?」
「ばっ馬鹿じゃないの!? わっ私は別にあんたの事なんて隣の席のクラスメイトとしか思っていないんだからねっ! 勘違いしないでよねっ!」
「ほらやっぱり違うって」
「えぇ……」
予想外の行動と予想通りの反応に、言葉を失った宏人は、
「じゃ、じゃあな……」
ふらふらと自分の席に戻ると鞄を持って教室を出た。
「何だったんだろうね、浅井君」
「わっ私にわかるわけないでしょっ!? じゃっじゃあ私も帰るからっ! 別にあいつを追いかけるわけじゃないから勘違いしないでよねっ!」
「え? うん、また明日」
すさまじい勢いで帰り支度を済ませた望美が、ダッシュで教室を出て行くのを見送って、通も帰り支度を始める。
「今日も五階さん、色々表情が変わって可愛かったなぁ。……あ、いけない、可愛いって言われるの嫌なんだっけ」
口を押さえた通は、それでも嬉しそうに教室を後にするのだった。
読了ありがとうございます。
望美は否定しないでおけば良かったんですけどねぇ……。
次回もよろしくお願いいたします。