その五 五階さんと浅井君
望美と通のやり取りに巻き込まれた宏人。
彼は何を思うのでしょうか?
どうぞお楽しみください。
放課後。
「じゃあ五階さん、また明日ねー」
「……また、ね……」
昼の衝撃を若干引きずっている望美は、通に曖昧に手を振る。
するとそこに、
「五階」
「何よ浅井君」
宏人がやって来た。
「お前、楽面の事、好きなの?」
「何を言っているの? 意味がわからないわ」
表情ひとつ変えずにピシャリと言い放つ望美。
その様子に、宏人は大きく溜息をつく。
「今更ごまかす必要あるのかよ」
「ごまかす? 私が? 何を?」
宏人の言葉にも、望美の表情は崩れない。
と、そこで、
「お、楽面。忘れ物か?」
「がっ楽面君っ!? いっ今の話はこいつの妄想で……」
宏人の言葉に振り返った望美は、そこに求める姿がない事に気が付き、表情を元に戻す。
「……で、何の話だったかしら?」
「すげぇなお前……」
呆れたような声を出した宏人は、くるりと背を向けた。
「んじゃまた明日なー」
「……えぇ、また明日」
宏人は荷物を持つと教室を出る。
その顔には不敵な笑みが浮かんでいた。
(あえてバレバレな白を切る事で俺に興味を持たせ、楽面との関係を深める駒に使うつもりか……? 乗せられるのはしゃくだが、面白くもあるな)
一方望美は、
(ば、バレなくて良かったぁ……! 急に言われたからびっくりしたけど、完全に否定したし、大丈夫だよね!)
などと考えていたのだった。
読了ありがとうございます。
誤魔化せているようで誤魔化せてない、ちょっと誤魔化せている五階さんでした。
次回もよろしくお願いいたします。