その一 シャーペンと消しゴム
新連載です。よろしくお願いいたします。
ベッタベタなツンデレと鈍感のラブコメです。
どうぞお楽しみください。
私立安倍霊寺高校。
自由な校風と生徒の主体性を重視する、偏差値五十の普通高校。
その一年B組に、五階望美の声が響き渡る。
「ふ、筆箱忘れるなんて、あんたホントドジね!」
そう言われて頭を掻くのが、隣の席の男子、楽面通。
「いやー、昨日勉強した時に、家の机に置き忘れちゃって……」
「仕方ないわね! 隣の席のよしみでシャーペンと消しゴム、貸してあげるわ!」
「おぉ、ありがとう! 助かる!」
通の笑顔に、望美の顔が見る見る赤くなる。
「かっ、勘違いしないでよね! 別にあんたの事好きでも何でもないんだからねっ!」
「あぁ、うん。ありがとね」
「ふんっ」
少し強張った通の笑顔から目を逸らすと、脳内で悶絶する。
(あああぁぁぁ! またやっちゃった! 楽面君相手だとつい思ってもいない事言っちゃう癖、何とかしたいのに……!)
そんな望美の内心の葛藤などつゆ知らず、
(『好きでも何でもない』って事は、ただのお隣って事だよな。それでも貸してくれる五階さん優しいなぁ……)
通は呑気にそんな事を考えているのでした。
読了ありがとうございます。
お察しの通り、望美が「好き」って言えたら終わるやつです。
言えたら……。
次回もよろしくお願いいたします。