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消えた手紙  作者: 白貴由
7/15

07

アデライドは自室に入るなり、権高な様子で人を呼ぶ。


「お茶会を開くわ。王家と面識のある…いえ、そうね。ミシェルの話をしていた事のある、子息令嬢へ招待状を出して頂戴。あまり人数は居ないはずだわ。開催は明日の昼、泣き言など口にする前に、何とかなさい!」



こうして無理やり強行した茶会にて、アデライドは集められた者達を見渡し微笑んだ。本来であれば決して接点のない、下位貴族までも招集されているが、皆一様に緊張から張り付けた笑顔を更に強張らせた。



そんな事は気にも留めず、アデライドは茶会の参加者、一人一人へ顔を向けた。誰でもいい、情報を引き出さなくては…と。



不意に、一人の気の弱そうな伯爵令嬢で、流れる視線を止めた。



確か彼女は…精霊が見える体質だと、以前に話していたはずだ。はっきりとした姿ではなく、ふわりとした温かな光が僅かに見えるだけ…と微笑んでいた。特にミシェルの周りには、その光が沢山集まっていて綺麗だと、茶会で何気なく話していたあの時は、何を莫迦な事を…と、特に気にも留めなかったのだが。



「貴女、最近変わった事は無いかしら?どんな事でもいいわ、話を聞かせて」



王女であるアデライドに同席を求められた令嬢は酷く慌てふためき、思うような会話が出来なかった。しかし最後には、アデライドが納得する情報を口にした。



「…す、数日前から、光が…この国に居た精霊達が…急に減ったようでございます…。実はあの夜、流行りの小説を読んでおり、気付けば夜も更けて…。あれは…そう、時計が鳴った直ぐ後でしたから、日付けが変わった途端でした。妖精の輝きが消えたのです。えぇ、今では僅かに見える程度ですわ」



そう…、と呟くアデライドはヒラリと扇子を広げ、「転移…」と呟いた。小さな吐息の様な言葉は誰にも届かず、時間は和やかに過ぎていった。




◇◇◇




兄姉達と別れたジェイドは剣を携え、王城を担当していた警備達の話を聞いて回った。徹底的に聞き取りをしたが、答えはどれも同じ「姫様をお見かけしていない」と言うもの。その後は徐々に範囲を広げ、ついには城下にも足を延ばし、二日後には王都中の破落戸までも締め上げた。



容赦なく押さえ付けられ首元に受ける、ひんやりとした剣の感触を味わわせれば、抵抗なんて無駄な事は諦め、漢達は知ってる事を全て吐き出していく。



「おいおい今時、人買いなんて割の合わない仕事をする奴なんて居やしねぇ。仮にそんな阿呆が動き回ってるとして、俺んとこに必ず報告が入る。…あぁ、この街じゃ顔が効く。まだ落ちぶれちゃいないさ」



「見かけてねえなぁ。お貴族様なんて、どんなボロ着てても分かるもんさ、なぁ?」



「変わった事?特に聞いてねえな。真っ当な商いしか手ぇ出すもんか」



彼らの言葉を吟味すれば、自ずと結論が導き出される。



ジェイドは確信した。間違いない。ミシェルは王都は疎か王宮すらも出ていないのだと。




次もご覧いただけたら嬉しいです。

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