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消えた手紙  作者: 白貴由
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ガーランドは発狂寸前だ。ミシェルが居なくなっただけでなく、魔導具が一斉に使えなくなった。叫びそうになる気持ちを何とか抑え付け、片っ端から整備に取り掛かる。けれどその甲斐もなく、うんともすんとも魔導具は動かない。生活に根付いた量産品から、ガーランド秘蔵の高価な代物まで、本当に全てが停止した。こうなると塵芥と同じ。沈黙を貫く魔導具に囲まれたまま、ガーランドは茫然と立ち尽くすしかなかった。



これまでと同じ生活を維持するのさえ困難になるであろう混乱する国内において、真っ先に取り止められたもの…湯水のように大金を使う社交全般だ。その界隈を牛耳っていたアデライドは、会が禁止された途端に窶れてしまった。彼女の代名詞でもあった華やかさは鳴りを潜め、時折「…ミシェル」と譫言のようにつぶやくばかりで、覇気も失われた。そんなアデライドに、未来を見出す者は居なくなった。



ジェイドの居る騎士団はてんてこ舞いで、息つく島もない。魔導具で担っていた国防や日常の仕事が、全て人力に頼らざるを得なくなったからだ。手が空いている者など何処にも居らず、騎士団に所属していれば、王子だろうと関係ない。ジェイドは休む間もなく、西へ東へと奔走させられた。とにかく人手が足りなかった。



レオポルドは書類の山から一枚掴むと、さらりと確認する。代わり映えのしない内容を目にし、溜息と共に机へと戻した。どれも魔導具の替わりになる何かを貸して欲しいとう嘆願書だ。貴族を中心に、名のある商家といった、今まで魔導具の恩恵を受け、快適な生活を送っていた富裕層ばかり。影響は平民たちにも少なからずあったが、彼等は少しの手間で補う事を知っており、すぐに順応したと報告が上がっている。


魔導具の替わりなど、そう簡単に見つかる訳が無い。代わりになる魔導を使用しない道具を一から開発するとして、莫大な費用に加え途方もない時間が掛かるだろう。流石のレオポルドも、解決の糸口が見つからなかった。




◇◇◇




四人は隔離された部屋へとやって来た。その中では、両親は小さな机を挟んで座っていた。人の気配を感じると、王は真新しい本から視線を上げ、王妃は刺繍していた手を止めた。



「まずは謝罪を」




レオポルドの言葉と共に、四人は膝を付き深々と頭を下げる。



「我々の愚行を、犯した罪を消す事はできません。ですが、これ以上惨状を広げぬ為に…国と民を守るべく、お知恵を拝借できないでしょうか」



「よい、顔を上げよ」



セヴランの言葉にクロードは頷くだけで、彼等を責めはしなかった。




「我々に出来る事は代用品の開発と、人手や物資が足りない所への補助に補給。そしてミシェルへの謝罪だ。…時間が無い、急ぐぞ」







その夜、四人は例の部屋に手紙を置いた。



「ミシェルへ届くように願おう…」



そう口にしたレオポルドに三人が頷けば、自嘲気味に言葉を繋いだ。



「さぁ、明日から忙しくなる。早く休むとしよう」



四人は手紙の入った小箱を見つめながら、その場を後にした。

次もご覧いただけたら嬉しいです。

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