八話 恩人であり相棒になった人に事情を話す事になりました・・・
俺の今までの経緯を説明しよう。緑野郎の住処を、攻略した後恩人である人を担ぎながら洞窟の入り口に行こうとしたら、恩人が光って復活しました。俺も何を言ってるが分からないが、そういう事です。
その後お姫様抱っこで担いでいたので、俺の名前を言った途端平手ビンタを頬に打たれました。
そして現在俺こと、アディ・ブレードは緑野郎の住処の入り口に座らされていました。恩人に・・・
「ひとつ聞きたいんだけど、気づいたらなんで私は貴方に抱っこされていたの?」
うん・・・実に真っ当で普通で当然の質問だな。俺が逆の立場だったら、同じ質問をする。
しかし現状どう言おうかと迷っている。だって貴方は死んでて、俺が復活させましたなんて言って信用するだろうか。俺はしないし、そんな事を言う方がデメリットになってしまう。
そもそもあの復活は、アクシデントだ。つまり言うのすら怠いのだ。復活させる気は、無かったんですなんて言おうものなら、なんて非情で、卑劣で、外道で、悪質で、悪魔みたいな人間だなんて思われるに決まっている。
なので俺は現状、崖っぷちに立たされているような感じになってました。どう言おうかと悩み、悩みまくっておりました。
「ひとつお願いがあるのですが……。いいですか?」
「何?内容によるけど」
凄く不機嫌そうな顔してますよ〜。誰か助けてください〜。
結構我の強い人なのだろう。しかし俺より目の前の彼女の方が不安だろう。それは俺も分かっている。
なんで言ったって洞窟で彼女は一回死んで、いつのまにか見知らぬ男の子に抱っこされていたら誰だって不安になる。
しかし念には念を押さなきゃいけないのが、俺のサガというものであった。
「今からする俺の話を、普通に聞いてください。信用する、しないは自由ですが俺は事実しか話しませんので」
そうなのだ。そもそも信用してもらわない事には、話などする意味すらないのだ。ただ現状の、今の話をすると、多分彼女は受け入れられるだろうか。いや受け入れてもらわないと困る。だからこそ念を押して、彼女に俺は事実しか話さないと言ったのだ。
「分かった。お前の話を信用しよう」
信用してくれると言って何よりであった。俺は念を押して正解だなと安堵する。
さて嘘偽りのない事実だけの話をしようか。
「俺がこのゴブリンの住処に来た時には、貴女は死んでいました。磔にされてね。その後俺は、磔にされていたのでそれを外して降ろしてゴブリン共の親玉の所に行き、俺は討伐した後帰る途中で貴女を拾い、埋葬しようと運んでおりました。その時、アクシデントが発生して貴女を復活させてしまいました。という経緯です。理解していただけましたでしょうか?」
彼女は頭を抱えながら、考えていた。いや頭痛がするのだろう。なんて言ったってゴブリン共に殺されて死んでいたのだから。その記憶が、俺の言葉で無理やり呼び起こされた感じであった。
彼女は震えていた。体全体が、唇も震えており、眼には恐怖により涙が溢れていた。
しかしいきなり事実を話したのは、少し酷だったかもしれない。いやそれこそ事実を話さない事の方が、辛いだろう。不安な毎日を過ごしてしまう事の方が辛いに決まっている。
「わ、わ、わたし、あの時、ゴブリンの集団に、か、か、かこまれて、そして後ろから殴打されて、そして、意識が飛んで、………………」
彼女は凄く恐怖に、震えていた。死の間際の記憶が、辛い事が脳裏に蘇ってきた。
俺はどう手を差し伸べていいのだろうか。いや考えるまでもないか。
俺は彼女を優しく抱きしめてしまった。それしか俺には、思いつかなかった。だって死んで記憶が蘇って恐怖してる人を慰める言葉は、俺には持ち合わせていなかったからだ。
だからこそ俺は、ただ彼女の恐怖を少しでも和らげるように幼い体で抱きしめた。
彼女はというと、驚く事はあっても嫌がらなかった。ただ俺が抱きしめた事で、彼女も俺の事を抱きしめ返した。
言葉は何も要らなかった。ただ俺は彼女が恐怖していたから、怖かっただろうから、一人じゃないという事を知らせる為に抱きしめた。辛いなら俺も引き受けよう。苦しいなら、俺も引き受けよう。悲しいなら、俺も引き受けよう。痛いなら、俺も引き受けよう。怖いなら俺も引き受けよう。
だって俺らは相棒になってしまったんだから。
そしてだんだん彼女の震えは、収まってきた。
「貴方って不器用な人ね」
そう彼女は、俺に対して笑みを溢した。
ん?聞き捨てならないぞ?俺が不器用?いやいやいや、俺は器用な人間だ。手芸だって得意だし、手の器用さなら負けんぞ。俺は。
「俺は器用な人間だよ」
それを聞いた彼女は、ため息を吐いた。
何故落胆したのだろうか。落胆する理由など見当たらないんだが。
「まぁ〜いいわ。それよりだんだん思い出してきた」
「大丈夫?」
先程思い出して、結構震えていたから心配だった。また再発するんじゃないかと。
出来れば思い出して欲しくないというのが、俺の本音であった。
「大丈夫よ。貴方がいるんだもの」
なんかそう言われると、背中がむず痒いんだが。彼女は、真正面から言うから俺の方が恥ずかしくて死にそうだ。
「暗闇の中、私は知らない声を聞いた。なんか音声というか、音程が一定で、人とは思えなかった。ただ言われたのが、貴方は、個体名ユウスケの相棒になりたいですか?と言われて。なんでもいいからはいって答えたら、色んな知識が流れ込んできて、気づいたら貴方に抱っこされていたって感じ」
あんの糞システム。個体名ユウスケって名前出すのは、止めろよ。本当に。
せっかく名前変えて異世界人ですなんてバレないようにしたのに、このシステムのせいで台無しだよ。
ていうか順序的に、俺のあのふとした発言がトリガーになり、彼女の魂へとアクセス。そして彼女は朦朧としながら承認して、実行されたと。
そして俺のスキル群などの知識を、彼女にも流し込んだと。
つまり俺の八千職にもなる職業のスキル群を、彼女も全部扱えるという事だ。やばいな。
こんな機能、ゲームの時の相棒システムには無かったはずだぞ。
「そのユウスケって俺だ。ここでは、名前を変えて生きていこうとしてる」
それを聞いた彼女は、特に驚きもしなかった。むしろ察していたので、分かっていたのだろう。
現状を見る限り、そのユウスケとは俺の事に決まっている事だしな。
「ユウスケとは、また珍しいお名前ですね」
珍しいという事は、異世界人を知っているのだろうか。そこら辺を話しても、彼女には問題ないだろう。
「俺は、こことは別の世界から来たんだ。多分、魂だけ。だからこの世界に疎くてな。俺と同じような境遇の人間とかって知らないか?」
俺がこの世界に来てから、一番気になっている事だった。ずばり俺以外の異世界人が、いるかいないかだ。
そこはだいぶ重要だ。なにしろ俺以外の異世界人がいたという過去形でも問題ない。むしろ俺が望んでいるのは、過去形の方だ。過去形という事は、その人物はなんらかの手段を取り、元の世界に戻った可能性が出てくるという事だ。
しかし異世界人がいますでもなんら問題はない。同じような境遇なら、帰りたいってなったらその手段を一緒に探せるという事になる。そっちでもだいぶ俺的には助かる。
さて彼女の返答はいかに。
「いや、そんな話は聞いた事ないですね。こことは別の世界の人なんて話、にわかには信じ難いですが、相棒の言葉です。信じますよ。私は」
うん、本当に彼女は、いい人だなと思ってしまう。
いやそんな事を思っている暇は存在しない。今はむしろ、そんな話を聞いた事すらないという部分だ。つまりこの世界では、異世界人という概念自体ない可能性が存在する。
それは重大な問題だ。つまりこの世界にいる異世界人は、俺だけという事になってしまう。ただまだ結論を急ぐべきではないだろう。彼女は知らないだけの可能性もあるからだ。
そこら辺は、後々ゆっくり調査する事にしよう。
「それより、何で名前を偽るんですか?」
「ん?それは異世界人ですなんて言うようなもんだからだよ。それだけで敵対される可能性もあるからだ。それは避けたいしな。だから俺の名前を言う時は、アディ・ブレード。アディでよろしくな。それと敬語は要らないよ?」
そういう事情を話すと、彼女は納得してくれた。
「そうか?それならいいんだが。あと私の名前は、アライ・ルナク。アライでいいよ」
それなら俺もこれから、アライという風に呼ぼう。
相棒であり、恩人同士で、体は子供と大人の奇妙な相棒関係が、爆誕したのであった。