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八千職をマスターした凡人が異世界で生活しなくてはいけなくなりました・・・  作者: 秋紅
第四章 八年の歳月は短かったようで、長かったようです・・・
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八十七話 剣と剣のマジの戦い・・・

 異様な緊迫感が、訓練所という名の空間を満たす。重いとはまた違う感覚に、観戦席にいる少ない人数は感じてしまう。息が詰まるような、体がその異様な空間に蝕まれるような、そんな奇妙な感覚に支配されていた。








 それは俺も、生徒会長も同様だろう。剣を構えたまま、数分は経過しているという時間感覚に陥っている。実際は剣を構えてから、数秒という単位での時間しか経過していない。







 どちらが先に動くのか。俺が先か生徒会長が先か。俺は極限まで集中して、生徒会長の少ない動きを観察していた。そこに自然の風が吹いた。それがあたかも、戦闘を開始した合図かのように。






 そして生徒会長が動きを始めた。剣を両手で持ち、極限の状態で脱力した状態で剣が振られる。それが巨大な剣圧となり、それが俺に襲い掛かる。俺は数歩程後方に下がり、剣を地面に刺す。そして砂の高さ数メートルはある壁が形成される。勿論、その程度の壁で生徒会長の剣圧など防げるなど、到底考えていない。







 俺は身を屈めて、生徒会長の視界から完全に死角になるところから一気に急接近する。しかし生徒会長は気配の身で、完全に俺の居場所を捕捉していた。







「空気よ。刃となり、かの者を斬りきざめ」






 魔法が発動した気配を感じた。生徒会長の周囲に不可視の空気の剣が形成される。それが一気に俺に向かう。しかし数がおかしかった。数本位だと考えていたが、実際は数百という勢いだった。







 確かにあの魔力量なら、それくらいなら当然か。魔力の消費のコスパが良さそうだしな。恐らく追尾性能があると思い、回避ではなく、向かい打たなくてはいけない。






「龍天百花剣・叢雲」





 周囲にある魔素が、俺の剣に収束する。まるで剣が自分の故郷であるかのように、自然と吸われていく。そして青色に輝き、膨大なエネルギー体として剣が新たに作り出された。






 剣がただ普通に、生徒会長を目掛けて振るう。そしてそれは力無く、だらけたような振るい方であった。そして膨大な水が、剣を振るった事により生成される。それは一種の海であった。訓練所内を満たすような、膨大な水が生徒会長を襲う。






 空気の刃など、その水に飲み込まれてしまう。しかし生徒会長は余裕の表情であった。






「原初の土よ。無数の剣となり、我が脅威を打ち砕かん」






 生徒会長の魔力が、砂の会場全体に満たされていく。そして砂から、無数の数千、数万にも及ぼす鉄の剣へと姿を変える。そしてそれは膨大な水の奔流に向かう。







 そして俺が放った水は、呆気なく消え去り無数の剣がそこには残されていた。剣にはその全てに魔力を帯びており、あらゆる魔力の付与がされていた。






 生徒会長って一種の軍隊かな、と疑問に思ってしまう。彼が一人いるだけで、戦争とか一瞬にして終わりそうだな。






 そして生徒会長は自前の剣を持ち、急接近する。完全に自身の剣の間合いにまで迫る。その速度も尋常じゃなく、瞬きなど許される事ではない速度を出していた。







「剣よ。その身に宿れ」






 生徒会長がそう言うと、剣が呼応したかのように輝く。そして大きく踏み込み、一瞬の突きが繰り出された。それは急所を捉えており、回避する事も、受け流す事も難しかった。仕方ないか。使うしかないか。






「龍天百花術・龍纏・龍速・瞬龍」






 俺は息を大きく吸う。そして目つきを変える。その瞬間、何処かから膨大な魔素が俺へと収束する。それが金色に輝く龍のような錯覚を覚える事だろう。巨大な巨龍がそこにはいた。






 俺は地を蹴り、一瞬にして生徒会長との距離を取る。それも生徒会長が認識すら出来ない速度でだ。







「原初の火を宿し業火よ。罪の剣を焦がせ」







 生徒会長もここからが本番かのように、魔力の消費を抑える方向性を止めた。空気が熱気に包まれる。そして生徒会長が指を鳴らすと、業火によって形成された剣がそこにはあった。それが魔素の流れに乗り、飛躍的に加速させる。






 しかしその業火の剣は違っていた。空気の剣や土の剣とは違い、一本、一本がさっきの数倍はある大剣だった。それが数千規模で、俺に襲い掛かる。






 本当にこの人がいるだけで、国を滅ぼしそうだな。






 俺はそれに構わず、間合いを詰める。巨大な炎剣が俺の速度に追いつくように剣が振るわれる。俺はそれを予測していて、魔力を左手に集中させる。






「龍天百花術・龍鱗」






 金色の鱗が左手に作り出され、巨大な炎剣を振り払い炎は消え去り霧散させる。そして俺はそのまま生徒会長に剣が届く距離まで詰めた。






「龍天百花剣・爪龍鱗牙斬」





 無数の斬撃が、生徒会長を切り刻もうとする。縦、横、右上斜めや左下斜めからなど、あらゆる方向からの斬撃であった。流石の冷静沈着な生徒会長もそれには焦りを浮かべた。







 そして生徒会長は目の色が変化した。そこには眼に魔力が集中していた。あんなに強力な魔法も扱えて、それに加えて魔眼持ちかよ。やばいな。







「天眼流・涙石」






 俺のその無数の斬撃に隙など微塵もなかった。むしろ隙をわざと潰すように、無数の斬撃が繰り出されている。しかし生徒会長は斬撃の最中、ただ単純に受け流した。俺は次の斬撃へと瞬時に移行しようとした瞬間、剣が既に目の前に振り下ろされそうになっていた。俺が認識し、危険だと判断するまでの時間の間に完全に間に合わない俺の意識の隙を、生徒会長は突いたのだった。







 俺は反射的に危険だと動く。







「龍天百花術・気龍躱脚(きりゅうたきゃく)







 俺の脚が勝手に動くかのように、俺は体を数度角度をずらして生徒会長の一撃を躱した。そして空振りに終わったかの見えたが、次は真横に斬るように振っていた。







「天眼流・天滴」






 そこには魔力がただ乗っているだけの剣であった。俺は次の一撃はきちんと反応出来ており、剣と剣が交差する形でぶつかり合う。







 そして生徒会長はわざと剣を受け流すように、剣を上へと向ける。その瞬間、剣の勢いが増して俺の顔面へと剣が襲い掛かる。







 まるで自然に落ちる雫のようではなく、自然に天に上がる雫のようであった。






 俺の意表を突いた形のこの一撃は、俺に驚愕と共に隙を生み出してしまう。






「龍天百花術・龍敏」






 俺の認識する速度が急速に上がり、首を何とか横に振り、回避する事が出来た。







 俺は瞬時に足元に違和感を感じて、距離を取るように跳び上がる。俺がいた足元には剣が生えており、察知していなかったら負けていた。危ない、危ない。






「天眼流・飛連」





 生徒会長はすぐさま剣を斜めに交差する形で、気で形成した剣撃を放つ。それが飛び上がっていて回避することが難しい俺に飛んでくる。






「龍天百花術・飛龍翼速脚」






 俺は脚に力を込めると、魔素の流れに乗っていて飛んでいる自分がいた。俺が空中で脚を踏み込むと、本来の飛行魔法とは段違いの速度を出していく。






「龍天百花剣・飛断」







 俺は剣を縦に振るい、巨大な気の剣撃を繰り出す。生徒会長は余裕でそれを回避してしまう。やはりこの程度じゃ、決定打にならないか。







「神の雷・荒波の水・原初の炎・生命の風・その地にありし、全てを数多の剣へと姿を変えん」






 生徒会長の魔力が膨大に周囲に放たれる。訓練所の空間そのものが変わったような感覚になる。そして五大元素の数十万の剣が、俺へと向いていた。






 めっちゃ俺の事を倒す気満々じゃん。いやあの量は流石にやばいだろ。防護魔法が、絶対耐えれないレベルだろ。倒すどころか俺が死んじまう程の物量だよ。あれは。一種の国を、大陸を滅ぼす兵器かよ。生徒会長は。






 俺は内心ツッコミを入れながら、苦笑いしていた。本当に新入生に行っていい所業じゃないよ。生徒会長よ。

八十七話、最後まで読んでくれてありがとうございます



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