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八千職をマスターした凡人が異世界で生活しなくてはいけなくなりました・・・  作者: 秋紅
第四章 八年の歳月は短かったようで、長かったようです・・・
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七十六話 仮面の騎士の誕生です・・・

 あの仮面の受験生はこの試験の意図を完全に理解していやがるな。私もこの試験をしていた時はずっと戦って生き残れば点数になると考えていた。だって戦闘試験と言われていたし、きちんと騎士志望と魔法士志望と下調べした上でグループ分けされているのだ。つまりこれはある種の大規模な戦闘シュミレーションだと思っていた、







 しかし騎士になってから完全な実戦を幾度も経験して感じたのは、結局血反吐吐こうと、手をもがれようと、脚が吹き飛ばされようと、結局は生き残ったもの勝ちなのだと実感していた。







 そしてその実戦形式の戦闘試験でもそれは同様で、戦闘点と呼ばれる、他グループの人間を倒した点数と生存点と呼ばれるグループの人数がどれだけ生き残ったかという点が存在する。






 満点は絶対この混戦の中、あり得ない事であるが、満点は二百点であり、戦闘点は倒した人数×三であり、三十人倒したとしても九十点になる。しかしそうすると残りの百十点はどうなるかというと、簡単である。生き残った人数×十点である。残り十点なんて、その他であり作戦立案力だったりする。







 つまり生き残った人間の方が、点数が倍化されているという糞仕様である。これは前述の生き残ったもん勝ちという、実戦に置いて一番の鉄則によるものである。ただ何も生き残ればいいという、臆病な話ではないが、それでも生き残るというのが何よりも一番である。






 あの仮面の受験生はそれを理解した上で、まだ何にも手を出していないのだ。同じグループの人達は、それが本当なのかと少し疑問に思っている節が見受けられる。確かに私も試験中に、生存する方が点数取れるなんて話を聞いても半信半疑だろう。だって戦闘試験で、戦闘するより点数が取れるなんて信じられない話なのだから。






 ただこれにもきちんとデメリットがある。それはあまりにも戦闘を行わない場合は、減点対象になるという事だ。この試験の点数方式は、減点方式である。それに確か戦闘を行わない場合は、五十点位かそれ以上減点されたような気がする。これは要するに戦闘する気すらないなら、騎士も魔法士も目指すなと言うようなものである。






 ただそこら辺もあの仮面は理解しているだろう。さてと何処で手を打つか。気になる所だ。






 赤チームは攻めに転じていて、剣が行き交う音が聞こえており、騎士部隊の後方からは魔法が緑チームに向かって放たれていた。黄チームはというと痺れを切らしたのか、それとも作戦の内なのか赤の魔法部隊に近接で襲い掛かる。







 まっそうなるよねと私は納得する。魔法士が完全なガラ空きになっている目の前にして、近接にして襲い掛からない方がおかしい。それに気づいた赤チームのリーダー格を思われる人物は、騎士部隊を分裂されて襲われている魔法士チームへと向かわせる。







 それは悪手だな。誰だって分かる事だ。緑チームは防御に徹していて人数は二人しか削られていない。それでいて纏まりは普通にある。そんな中で、ただでさえ分裂している赤チームの戦力をさらに分裂させてどうする。赤チームはこれなら減点対象だな。特にリーダー格、立案者と思わしき人物は。







 このままだと赤チームは潰れるな。まぁ〜仕方ない事である。そのチームになってしまった自身の運だから、ご愁傷様と言えなくもない。







 黄のチームはそれを見計らって作戦を立てていた。おそらくどれかのチームは騎士志望と魔法士志望とでチームを分けると。それは戦闘の基本戦術で、魔法士は後方で、騎士は前衛でが基本形態であるからだ。しかし会場のこの狭さもある通り、魔法士に接近するのは容易である。だからこそ黄チームはそれを見計らって、今騎士集団を動かしたのだ。






 中々考えられていて、黄チームは面白いなと私は興味が出てくる。しかしそこに一つの異常(イレギュラー)がなければであった。






 私が仮面の受験生に眼を向けると、何かを唱え始めた。







「砂の嵐、荒野の大地、命芽吹き先がない中、生命の視界を一時奪いたまえ。サンド・ミスト」






 それを唱えた瞬間、会場全体が砂の煙が覆う事になった。視界が見に来ていた来場者や私達が会場の中が見えなくなる。それと同時にこれを詠唱していた。






「視界なき民は嘲笑う事勿れ。その眼に光あれ。真なる眼(プリュネル)







 あれは暗闇や視界悪いところでも視界を確保出来る魔法である。マジかよと私は冷や汗を浮かべる、自分だけの魔法なら分かるが、その魔法は青チーム全体に掛かっていた。全体化にするには学生でも、結構な魔法に関する知識を学んでいないと出来ない芸当であった。つまりこの仮面の騎士は、少なからず専門的に魔法の知識があるということになる。






 私が驚いたのは、それが騎士志望の人間がやったという事実である。騎士は魔法が使えなくはないが、身体強化、それか得意な属性を剣などに付与して攻撃するくらいである。騎士の扱う技には、気流操作が主である。






 だからこそ視界確保の魔法を、高難度の全体化というのがあまりにも学生の域を超えていたという訳だ。





 そこから一方的な蹂躙であった。視界確保の魔法を扱おうと、魔法士が詠唱を使用した途端、感知されてすぐにそれを潰しにかかる。戦士はそもそも視界が確保出来ずに魔法士に一方的にボコられる。まさに異常な空間。







 ぐぁ!? や、やめろ!? などのやられる悲鳴だけが会場内に木霊する。それは酷いな。こんな非情な戦略思いつく、あの仮面の受験生がますます気になる。






 それから数秒後にはその悲鳴が泣き止む。砂の霧がだんだんと晴れていく。それがまるでだんだんと劇場のカーテンコールが開くかのように、露わになっていく。







 そこには青チーム以外の気絶である。青チームは全員、生き残っていた。これは騎士魔術学院が始まって以来、第一次試験でのチーム全員が生き残る三度目の奇跡になった。







 そして腕輪にはもう一つの機能があり、倒した人数を記録するというものがある。そして仮面の受験生の数字を遠目から確認すると、二十人という表記がされていた。






 つまりその人物以外は、一人か二人しかやっていないという事になる。あの数秒というカウントの中で、その人物をやれるということが、この人物がどれだけ化け物なのか私は息を飲むしかなかった。






 タイムは数秒の出来事で、少し呆然としてしまったが試験が終わった事を認識すると口を開く。







「勝者、青チーム!?」






 仮面の騎士は静かに剣を仕舞いながら、控室に向かう。その背後には同じ青チームが、歓喜と共に着いて行っていた。






 あの仮面の騎士の剣術を見てみたかった。どれだけの神速の剣術なのかと気になるところであった。そういえばアデルトさんは、気配を感知するだけで見えなくても動きが分かる人だったな。






 そのアデルトさんはただ何も言わなかった。いやおそらく言えなかったんだろう。何も口にせずに、ただ口を開けたまま冷や汗を掻いていた。






 トーラス王がそのアデルトの様子が気になり、質問した。





「お主ならあの仮面の騎士の動きが分かるだろう。どのような動きであった?」






 アデルトは口にしたくないのか一瞬躊躇うが、主人である国王の質問に答えないといけないと考えて話し始める。






「あれは剣術でありますが、まるで瞳は獣のようでした。軽やかな剣の流れに加えて、確実に相手を刈り取るように随所に人体の急所を捉えておりました。それで動きそのものは獣のようであり速すぎて、私ですら全容は把握出来ませんでした。ただ同じチームの人にも点数を上げる為に止まったりしてました。それがなければ、あの人数は一瞬にして終わっていたでしょう、そしてもう一つ分かったのが視界確保の魔法が、自分には一切掛かっていなかったという点です。彼は私と同じで気配の身の察知で動いていました」






 それを聞いた国王と私は息を飲むしかなかった。それ程の異常な強さが、あの仮面の騎士は持っているのだとしたら生物として少しばかりの恐怖が芽生えていた。

七十六話、最後まで読んでくれてありがとうございます



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