表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
八千職をマスターした凡人が異世界で生活しなくてはいけなくなりました・・・  作者: 秋紅
第三章 冒険者の仕事はしんどいようです・・・
71/366

七十話 死人の空間はホラーじみていました・・・




「炎の園・破滅の荒原・焔の苗床・名も亡き死人(しびと)よ。その瞳に憎悪の眼差しと復讐の怨嗟を抱きながら、蘇る事を許そう。黒き炎天の元に、集おう。魂の陽炎を陰り照らす。その道に死人の怨念への道を開き、悪き者を連れて帰れ!?」







 男は巨大な鎌を地面に刺すと、辺りが真っ暗に染まる。空間が広がるのを、感覚的に感じる。視界が暗闇により、情報が妨げられる。






 直後、天井と思わしき所に黒い点が発生する。それがこの空間を照らしていた。それにより情報が視界に収まる。そこは先ほどの地面ではなく、赤く染まっている砂のようなものと黒い砂利が、入り混じっていた。その地面全体が魔力を帯びているが、その魔力は男の物であった。






「さてとこっからが本当の死人達によるショーの開幕だぞ!? 生きて帰れると思うなよ!? 絶対、こっちに連れてやるからな!?」





 男がこの魔法を使用した結果なのだろうか。男の骨化の現象がさっきまで右肩までだったのが、右半身全体が、肉が無くなり、骨だけになっていた。顔には眼がない筈なのに、奥に視界を確保しているなんらかの物体が見えた。頭皮の髪が半分消えていて、頭蓋骨が半分見えていた。それが妙に俺のホラーによる恐怖を感じてしまう。






 俺がそんな事を考えていると、脚に何か触れたような違和感を覚える。俺は恐る恐る自身の足元を見ると、そこには赤い骨の手の形状をいるものが三本程、俺の脚を掴んでいた。






 俺はすぐさま離れようと、地を蹴り距離を取ろうとしたが見事に脚が動かなかった。いやそもそも脚そのものが無くなっていていた。骨だけが剥き出しになっていて、動くという動作がする事が出来なくなっていたのだ。






 おそらくあの骨に掴まれると、肉が焼け落ちて骨だけになるのだろう。骨はそのまま人の形状へと形を作りながら、手を段々と足から上半身まで伸ばそうとする。






 俺はとりあえず剣で、骨を無数に切り刻もうとする。しかし剣はびくともしなかった。まるでダイヤモンドで形作っているかのような固さであった。






 それどころか剣が根元から折れた。今まで愛用していた剣が、簡単に骨如きの雑魚に折れさせられた。それが俺は苦々しく思ってしまう。






「嘘だろ!? 神級武器作成・神剣・アルテメテオ」







 俺は大量の魔力を消費して、黄金の輝きが俺の右手を照らす。その輝きが、形を成して剣へと変える。それが刃が金色の輝きを持っていて、塚の方の根元は銀色で宝石が埋め込まれていた。






 愛用していたんだけどな。まぁ〜ただあの剣は何の変哲のないただの鉄剣だったしな。仕方ない事なのかもしれない。いやあの剣は魔力も沢山注いでいて、俺だけのオリジナル武器へと昇華させられる寸前だったのに、あの骨め。絶対、バラバラにしてやる。






「炎の石を命じる。焔の隕石を降らせ!?」






 この剣には三つの宝石が埋め込められていて、それが赤、青、黒とある。そして俺がそう言うと、赤い宝石が、眩く赤く輝き、宝石は色を失い、ただ黒く変色する。






 しかし男は突如、異変を感じる。自分が作った空間が、別の魔素へと染まっていくのを感覚的に感じる。そこら中に小さな種火が、発生する。その種火の炎の勢いがだんだんと強くなり、巨大な炎の球体を作り出す。それは一つ落ちれば、まず間違いなく街が終わりそうになる程の巨大さであった。







 それが無数に形成され、隕石のように男と地面へと降り注ぐ。しかし男は平然としていて、持っている鎌をトンと地面に突き刺すと、赤い砂が形を作り、骨の壁を形成していく。それが分厚く、まともな物理手段では抜けなさそうだと理解出来る。炎の隕石が、その骨の壁に激突すると、大爆発を連鎖的に起こし、轟音が響き渡り、辺り一面を焼け野原になる。






 しかしそこにあったのは微かにしか、溶けていない骨の壁だった。






「その砂は一粒、一粒が、魂が形になったものだ。つまりそこら中にある砂の全てが、あらゆる魂の代物だ。だからこういう事も出来る」





 男はその魂の砂を操作すると、砂が巨大な何かの形を作り始める。それが赤き骨へと変質して、形作りは終える。そこには骨だけの巨大な翼があり、巨躯の四足の体を有していて、首がキリンのように長く、その歯は鮫のように鋭く、大きかった。それはまさにファンタジーでよく見た(ドラゴン)の姿であった。

そのドラゴンは優雅にこちらに歩き、鋭い爪を俺に振り下ろした。







 俺は右脚が骨化しているせいで、回避が難しく剣で受け止めようとする。しかしそのドラゴンの一撃は重く、片膝をついてしまう。俺は何とか重心をずらして受け流して、距離を取ろうとバックステップする。







「そのドラゴンはお前の兄貴が仲のよかった最強の龍王だ。相手してやれ」






 男はそう淡々と口にした。確かに最強の龍王だ。ワイバーンなんか小粒くらいに感じるくらいの圧を感じる。それが世界かのような感覚すら感じてしまう。







 ゴォォォォォ――――――――!?







 その龍王が掠れた雄叫びをあげると、そのドラゴンの魔力が拡散して、炎、氷、雷、土、風を剣の形に無数に形成して、それが一瞬にして、俺に襲い掛かる。






 俺はこれは駄目だなと諦めた。というのも、あそこまであったMPが最早寸前まで減っていた。もう俺はスキルを行使出来る程の魔力がなかった。






 青年状態にもなりたかったが、フリーがその結界内では魔力操作によるナノマシン制御が出来ないと言っていた。だから俺に打てる手段は皆無に等しかった。






 だから永遠とHPのストックを減らされ続けられる事だろう。






 流石に戦うまでのスパンが、短すぎたか。最早ジリ貧で負ける未来しか見えないな。しかしそれだと、どうしようかね。死にたくねえし、アライとタイム、フリーに迷惑かけちゃうな。






 仕方ねぇ。頑張るしかないか。






「龍鏡剣術・罪流し」






 俺は無数に見えるあらゆる属性の剣を認識する。俺は足を前に出し、剣を深く構える。その瞬間、俺の気迫が変わった。剣が向かい、剣で受け流そうとする。いやただ振り下ろして、向かい打っただけである。そしていつの間にか剣は全て叩き落とされていた。






 俺はHPストックを利用して、瞬時に右脚を再生させ、ただ背筋を伸ばして佇んでいた。そして俺が倒れ込むように、前傾を前に倒すと、そして男ですら認識できない速度を出して、瞬時にドラゴンの頭の上空へと飛んでいた。






 ドラゴンは骨の巨大な尻尾を動かして、俺を攻撃しようと伸ばす。俺は頭を動かして、重心をずらして体を上下に回して剣には勢いをつけて、綺麗に骨の尻尾を叩き落とす。






 俺はそのまま龍王の首を落とそうと一直線に剣を振り下ろす。ドラゴンは羽を羽ばたかせ、その巨大には似合わない速度を出して躱す。





 俺は地面へと足をつけた瞬間、一直線に飛んでいるドラゴンに向かって飛ぶ。ドラゴンは風の巨大な刃を生成して、口に咥えて迎え打とうとする。





「黒き力よ。その剣を固く鋭くさせよ。その刀身は、ただ黒く輝やさせよ!?」





 その剣の黄金の輝きが失われて、塗装が剥がれるように黒く染まる。それはさっきとは明らかに違う異質な剣へと姿を変える。黒い宝石は色を失う。






 風の刃がその刀剣に向かい、ぶつかり合う。風の刃は霧散して一気にドラゴンの首元に、剣が伸びる。






「罪を流して、ただあの空に舞い戻るがいい」






 そしてその龍王の首が、俺の剣により落とされる。そして俺は息を切らしながら、地面に着地すると喉に錆びた鉄の味がしてくる。それを吐き出すと、赤い血であった。





 超龍活性呼法と呼ばれる呼吸法の一つであり、全身の肉体を超活性化させて、リミッターを完全に解き放つ奥義のようなものである。






 しかしこれには弱点があり、まず肉体がそれに耐えきれずに壊れる点である。リミッターを外すということは、それは要するに自身の肉体の限界を外すのと同義だからだ。だから俺は今、吐血したのだ。





 そして二つ目は痛覚が鈍くなるという点である。いい事のように聞こえるが、痛覚が鈍くなるという事は自身の限界に気がつけなくなるのである。それは肉体の限界を突破するという効果の相乗効果と共に、この奥義を使い過ぎると死んでしまうのであった。





 そんな危険な技を使い、ドラゴンを倒して、俺は目の前にいる男に眼を向ける。





「いいねぇ〜!? 龍王と倒すくらいじゃないと、張り合いがねぇからな!?」

 男は不敵な笑みを浮かべて、興奮気味になっていた。

七十話、最後まで読んでくれてありがとうございます



少しでも面白いと感じたら、いいねやブックマーク登録お願いします。また次の話もよければよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ