六話 洞窟の奥に行くと緑野郎のボスがいました・・・
現在俺の周りには、首がなくなっていたり焼かれて炭になっていたりなどなど色々多種多様な殺され方をしている緑野郎ことゴブリン共の死体が無数に転がっていた。
そこには何の感情もなく、淡々と作業をするかのように殺していた。そこにはゴブリン共の子供もいたが、そんなのは関係なかった。ただ緑野郎共が、邪悪だからこそ根絶やしにしなきゃいけないと思った。ただ緑野郎共の犠牲になってしまった人々の為にも、無念を晴らす為にも緑野郎共を排除しなきゃいけないという大義名分を俺は思ってしまった。
いやそんな大層な事を言っているが、それは違うだろう。ただ俺は許せなかった。緑野郎共が。ただ緑野郎共を根絶やしにするしかこの嫌なモヤモヤとした感覚は無くならないだろう。胸糞悪いこの感覚を取り除くことは、出来ないだろう。
だからこそ緑野郎共には、俺の憂さ晴らしに付き合ってもらおう。お前らの命が、体、精神が、魂が、全体が枯れるまでに。
広い空間に俺はいた。ここは何やら緑野郎共にとっての広場みたいなものなのだろう。しかし周りには緑野郎共の死体が二十.三十位は積み上がっていた。
そしてその広場でも、人の死体というのは確認できてしまった。磔にされたり、欲に付き合わされたり、焼かれていたりと様々だった。炭化してたり、最早白骨化されていたりと。
だから俺は彼ら彼女らと同じように緑野郎共に制裁を加えた。ただそれだけだ。そこに何も感情などなかった。達成感も、復讐心も、何もかも俺にはなかった。
洞窟に入ってから俺という存在が、異質なのだろうかと思ってしまう。精神性が異常の一言なのだろうと自覚出来る箇所が、何箇所かある。
確かにやらなければいけないという使命感はあるが、それだけだった。それとは別に頭を回すだけのクリアな自分が確かに存在してしまう。
まぁ〜考えていても仕方ないのでより洞窟の奥へと俺は進んでいく。そしたら流石に異常を察知したゴブリン共が奥から姿を現した。数は大体、五十くらいか。ワラワラとカサカサと緑野郎共はゴキブリか何かなんですかね。
自分の部屋にゴキブリが湧いた時はびっくりしたな。そういえば。一匹だけでも、あの速さ、生命力は目を見張るものがあったな。ただ気持ち悪かったので、必死に潰したが……。
なんか嫌な事を思い出したので、とりあえず緑野郎共を始末しよう。いや殲滅しよう。それにしても、異常というか侵入者がいる事が、知られてしまっているので隠密行動は最早必要ないだろう。
よし!?手っ取り早く一度に殲滅しよう。面倒臭いし。ていうか各個撃破するのに、そろそろ疲れてきた頃だ。やはり火力こそ正義だな。うん。一気に倒す方が気持ちいいに決まっている。それじゃ……
「地獄の豪炎禍」
俺が手を前に掲げて、スキルの名称を声に出す。そしたら自分の体長の数倍はありそうな紫色の炎が発生して、それを放つ。超級のスキルの一つで、延焼効果と呪い効果が両方付属しているスキルで、俺は昔初期の頃愛用していたスキルでもあった。緑野郎共に使うのは、勿体無い気もするが、一番思いついたスキルがそれだったので仕方ないだろう。
そして逃げ道のないゴブリン共は、一斉に焼き殺されるか呪いにより殺されるかされた。五十の軍勢が塵すら残らず、消滅した。
うん、気持ちいいな。やっぱり。馬鹿火力とは、やはりロマンである。
それにしてもやはり超級のスキルもだいぶMPを喰らってしまった。ストックが一つ減ってしまった。しかし、ずっと血の花の蜜の付属している合技スキルを使っていて気づいた事があった。この世界ではストックの制限がなかった事だった。普通ならゲームではストックが三本までと限定されていたので、こっちの世界でもそうなのかと思ってしまっていた。しかし、それは違くてこちらでは制限など皆無だった。
昔このスキルは、同じようにストック制限が無かった。しかしプレイヤー全体が、血の花の蜜を使いまくる結果になってしまい、絶対死なないようになってしまった。しかし流石の運営もこれはやばいと認識したのだろう。すぐそしたら修正が入る結果になり、三本までという結果になった。
修正される前なんか動画で、ストック五千本集めましたみたいなのがあった。こいつ何考えているんだと少しそいつの狂気を感じた。今になっては懐かしい思い出だが。
そう思いながら俺は洞窟の奥へと歩いていく。そしてやっと奥へと辿り着いた。洞窟にしては、本当に長いなという実感があった。そこは先ほどの広場より広くて何やら緑野郎のボスと見られる存在がいた。
体長は5メートルを超えており、最早巨人じゃないかと見間違う程だった。だからこの洞窟の構造に違和感があったのか。異様に通路も幅も高さもおかしかったのはそういう理由だったようだ。ゴブリン単体ではそんな広く作る必要性なども、皆無だったが、こいつが移動する為にも洞窟の広さは確保せざるを得なかったのだろう。
「ナンダ?エサカ?」
その緑野郎は声に出して言語を話した。しかし言語を話すだけの知能はあるのだろう。
そして緑野郎の手に持っていたのは、人の足と見られる代物だった。それを一口、まるでつまみ感覚で足の肉を頬張った。
俺の何かが切れた。そんな感覚を味わった。
「唯一級スキル・韋駄天の理」
俺がこの世界に来て初めて唯一級スキルを使った。唯一級スキルで一番、俺が愛用していたスキルでもある。効果は、素早さが限界突破して絶対に回避するというのが数ターン続くというものだった。
何故これが唯一級のスキルかというと、アースガルドの仕様の一つに素早さに差がありすぎる場合、二回行動が可能というものがあった。しかし基本的には意味がないしようとして揶揄されていたが、俺の場合意味があった。素早さが限界突破するので、二回行動どころか最大五回行動まで出来た。
俺と敵対したプレイヤーは即座に降参したのとチートとか言われて流石に反省を覚えた出来事だった。しかし唯一級スキルにもデメリットが存在する。それが、再使用まで一週間のインターバルが発生するという点だった。まぁ〜こんなスキルがすぐ再使用できたらゲームバランスが崩壊するから仕方ないのかもしれない。
とりあえず俺は加速する……。一瞬、刹那の瞬間……。
「瞬天叛脚」
伝説級のスキルの一つで、素早さに比例して蹴りの威力が数十倍になるというものだ。この加速に加えて、蹴りの威力を上げる。俺がよく愛用していたコンボだ。
「とりあえずこの手に持っているものを離せよ。クソ野郎」
俺は冷たい声を発してしまった。そして蹴りをそのゴブリンの右手に放つ。そう俺的には、右手をとりあえず潰そうと考えていただけだった。
しかし…………――――ドカン!!!
そう強い衝撃と音が洞窟内部で響き渡る。そして俺はやってしまった。あまりにもこのコンボがやばかったのだろう。そのゴブリンのボスは跡形もなく、消滅した。そう俺の蹴りは、核攻撃並みにまで昇華されていたのかもしれない。これでも少しは加減して、蹴りを放ったつもりなのに……。
うん!?あのボスが弱かっただけだな!?そうしよう。意外とあのゴブリンのボスが弱かった。そう俺は自己暗示を自分に施した。
それにしても呆気ない最後だったな。それで犠牲者達は少しは安らかに、無念も晴れて眠れるだろう。
それじゃ後は見かけた犠牲者達を弔っておこう。こんな薄暗い所にずっと居たくもないだろうしな。俺はそう思いながら、犠牲者達の弔う為の行動を開始した。
六話最後まで読んでくれてありがとうございます。
唯一級ジョブ 脚天速流星 習得条件 素早さをカンストの999にして2回行動を合計10000回成功させる。
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