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八千職をマスターした凡人が異世界で生活しなくてはいけなくなりました・・・  作者: 秋紅
第三章 冒険者の仕事はしんどいようです・・・
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五十三話 冒険者証を受け取りました・・・

俺とアライは冒険者ギルドに着いた。ドアを開けると、前回のような軽蔑の眼差しではなく、期待の眼差しになっているような気がした。







 そんな眼されても俺が困るんだがね。俺はただの凡人だから、期待されるような人間じゃないんですけどね。






 そんな感じで、俺はすぐさま受付嬢であるアディオさんの元に近づく。







「アディさんに、アライさんですかね。冒険証の発行の手続きは終わりましたので、これをどうぞ」






 アディオさんは、免許証のような代物を俺らに渡してきた。






 そこにはアディ・ブレードと彫られており、アライの方も同様に、アライ・ルナクと表記されていた。俺がそれを手にすると、何か反応したのか水色の線のようなものが、免許証を駆け巡る。






 何、俺、変な事しちまったのかな。いやアライも同様の現象を起こしているな。






 俺がそんな風に疑問に思っているのを察したのか、アディオさんが説明してくれた。






「この冒険証は個人の魔力を識別して、能力値を測ったり致します。それと身分証の役割も果たしており、D級冒険者、アディ・ブレードという身分を証明します」







 そんな便利な代物なんだなと、俺は納得する。ていうかアライは、別に試験を受けてないだろ。なんでアライも冒険者の資格を普通に手渡されているんだよ。






「アライ様も疑問に思っているかもしれないので、ご説明します。本来の試験内容とは、面接によるものになります。つまりルブリヌさんに認められた時点で、冒険者としては合格基準に達しておりますので、アライ様も冒険者資格を得たという事になります」






 ん? そしたら俺がやっていた第二、第三試験って一体なんだったんだよ。何、無駄に苦労してしまっただけとかだったら、俺はアディオさんに怒りを覚えてしまうのだが。






「アディ様が行った後々の試験は、パーティリーダー試験と呼ばれ、リーダー適性を見る為の試験でした。これが試験の種明かしとなります」





 つまりパーティのリーダーとしての適正を見る為に、アディオさんと戦ったり、ダンジョン探察を一人でに行わせたと。






 そうだったとしたら、リーダー適正試験って大分難易度高くないかと思うんだが。






「リーダー適正冒険者の資格があるのは、この冒険者ギルドでも数人いるくらいのものです。アディ様の冒険証は、そのリーダー適正冒険者としての証明にもなってます。他の普通の冒険証よりは、色々な部分で優遇されます」







 大分そのリーダー適正冒険者って高待遇なんだな。それならあの苦労もやっておいて、正解だったな。後悔する事なくて本当に良かった。







「その色々な部分って例えばどんな事なんですか?」






 そもそも高待遇だからと言って、その内容を知らないのは良くないからな。一応、どんな所が、高待遇なのか聞いておいた方がいいだろう。






「この辺りは、冒険者御用達の店が数多くあります。例えば鍛冶屋リンベル、薬屋アベルカル、魔道具屋ルナなどがあり、値段を割り引いたり、希少な魔物素材を買い取る時、割り増しで売ってくれたりと言った感じですね」






 なんか会員様限定割引みたいなシステムなのね。なんかすげぇ得した気分になるな。この世界でもそういう概念があるんだな。





「成程。ありがとうございます」






 俺はアディオさんに感謝して、礼をした。これから俺達は冒険者としての地位で頑張る事になるのか。楽しみだな。






「それで冒険者は基本的に、あちらに見える掲示板から依頼を受ける形になります。私が斡旋する事もたまにありますが、基本的にはあちらから依頼条件とかを確認した後、自由に私に提出して確認したら受けてもらって構いません」





 そういえばずっとアディオさんのカウンターの右端に見える掲示板みたいなもんは気になっていたが、依頼の掲示板だったんだな。そういうのがやはりギルドっぽいよな。うん。






「一応注意事項ですが、きちんと一応私に依頼を見せてくださいね。依頼条件が見合ってようが、私に提出しないと無断依頼として違反した事になりますので。ゆめゆめ忘れないようにお願い致します」





 例えば依頼条件が見合って無くて依頼を受けてしまった場合、その冒険者ギルドの信用は失墜するからだろう。だからこそ依頼をきちんとアディオさんに確認するのが、大事という事だろう。






 ただ自分はまだD級冒険者という中の下位の身ではあるが、冒険者としては新人の身である。どのような依頼が的確なのか、どれを選んだ方が正しいのか分からない部分が大きい。





 確かに自身で選んだ方がいいかもしれないが、選ぶ基準とかを明確にはしておきたい。そのような意味では、アディオさんのさっき言っていた斡旋という手があるかもしれないな。






「アディオさん、俺はまだ冒険者として新人だからさ。新人として最初の依頼として的確なものって斡旋出来る?」






 新人だから選ぶのが難しいという風に、言い訳紛いな言葉を使えばアディオさんも無碍には出来ないだろう。むしろいきなりD級相当の依頼なんて受けて、判断ミスなんてしたら洒落にならんしな。





 アディオさんはそれを聞いて、少し口角が上がったような気がした。何処か面白い事を言っただろうか。






「アディさん、冒険者として上に行く人間ってどんな人だと思いますか?」





 アディオさんが急に質問してきた。元S級冒険者であるアディオさんから、そんな質問されたら答えない訳にはいかないな。どんな人間かやはり実力とかが大事なのだろうか。






「やっぱり戦闘能力とかですかね」






 冒険者として戦闘とは避ける事など無理な話だろう。やはり上に行く人間とはそれなりの場数を踏んでいる筈だ。つまりそれだけ戦闘能力が上であり、生き残ってるという事だろうか。






「あながちそれも間違っていないけど、一番は警戒心だよ。いつ如何なる時でも、警戒を怠ってはいけないよ。相手や仲間をきちんと観察して実力を測り、時には猛る者のように戦い、時には小動物並みに怯え、逃げるようにする。逃走は何も間違っていない。逃走は負けじゃないし、むしろ自身を生かす為の行為だ。つまり生き残ったもん勝ちなんだよ。この世界(冒険者)とはね」







 それは見覚えが確かにあった。俺が会った上位の冒険者は皆、観察眼が凄まじかった。一瞥しただけで、人の実力を測っていたな。あれは警戒心が冒険者時代に染み付いている結果なのだろう。






「今の君のその斡旋の行為も、下手に素人である自分が選ぶ依頼より、私に一回選ばせた方が確実という警戒心からでしょう。だからね、その話題を出したんだ」







 なんだ。普通に理解していたのか。やはりこの人は侮れないな。






「ちょっと待っててね。探してみるね」






 カウンターにある依頼と思われる紙の束をガサゴソとして、俺たちに見合っている依頼紙を探しているのだろう。そして「あった」とようやく俺たちに見合っている依頼紙を見つけたようだ。






 それを俺たちの目の前に提出してきた。俺はそれを手に取ると、薬屋アベルカルのマリィの護衛と薬草採取の手伝いと書かれていた。要望冒険者と書かれている欄には、あまり怖くなくて気さくな人間と書かれている。







「よく依頼しに来る人でして、いつも贔屓させて頂いている人なんですよ。このマリィさんにお世話になっている、ここの冒険者なんていないくらいです。それに薬草採取は、近隣なんでそこまで危険性はないでしょうし。新人として顔見せと、危険性があまり無いという意味で選ばせて頂きました」






 いい選出しすぎで、俺は嬉しいくらいだ。薬屋という事は、ポーションの類だろうか。それなら生存率を上げるという意味でも、顔くらいは知っている方が得策だろう。







「ありがとうございます。受けます」






 俺は二つ返事で、すぐ承諾した。こんな旨味のある依頼を受けない方が下策だ。






「分かりました。この依頼紙を、薬屋のマリィさんか店主に見せてください」






 俺はその依頼紙を受け取り、冒険者ギルドを後にした。

五十三話、最後まで読んでくれてありがとうございます



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