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八千職をマスターした凡人が異世界で生活しなくてはいけなくなりました・・・  作者: 秋紅
第二章 遺跡の町は浪漫に満ちてました・・・
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五十話 お帰りと言われたい・・・

俺らは森のエリアボスとも言うべき、アルテナという存在を倒した。それのよる影響だろうか。森は完全に息を無くしたかのように枯れ果てていた。枯葉の一つも残さず、ただ樹木の幹という大元を残すだけだった。







 ただ異様な雰囲気は完全に消え、森は殺風景となってしまった。






 ただ何処からか役目を終えたようなそんな感じが俺はした。







「さてとこのまま真っ直ぐ行けば、帰れるんだよな」






 フリーの案内の元、俺は歩き続けていた。どうにも前来た時より距離が伸びているような気がしたからだ。






 それはおそらくアルテナの次元分離により、自身のいる場所を明らかに避けるようにしていたのだろう。つまり以前はあんなに広かった森なのに、距離が短く感じたのは次元分離により短縮されていたという訳だ。






 知らず知らずのうちに、俺はスキルを使用されていたのかと思うとゾッとする。






 それに青年状態だったらよかったものの少年状態ではおそらく歯も立たなかっただろう。







 このまま青年状態のままなのだろうか。それはそれでありがたい限りである。






 そんな事を思ったのが束の間、歩き続けて数分は経ったのだろうか。いきなり目の前の視界の高さが低くなったような気がした。






 いや思いっきし身長縮んでいるじゃないか。何やっぱりあの青年状態って時間制限とかある感じなのかな。







「あれ。少年状態に戻っている」






(マスター)の成長している状態には、(マスター)の中にあるナノマシンが活性化させている状態なのです。つまり成長状態じゃなくなったという事は、ナノマシンのエネルギーが切れてしまったという事です」






 つまり俺の中にあるナノマシンのエネルギーが無くなったという訳か。






 ざっと俺の中の体内時計でだと、三十分位と言った所か。あの青年状態を維持している時間帯を計算してならないとな。






「そのナノマシンのエネルギーって充電されるの?」






 流石に一回限りの大技みたいなものではないだろう。そうだったら残念極まりないと言った話だ。






「はい。きちんと再充電は(マスター)の体内にて行われます。充電完了までの時間は、一日と長いですが」






 結構あの青年状態って燃費悪いのな。それもそうか。肉体の活性化なんて代物、それを維持するだけのエネルギーというのはそれなりに膨大だろう。






 ただそれにしたら余計に青年状態化は使い所を考えないといけないな。一回使って制限時間が切れたら、終わりの可能性もあるからな。今回みたいな青年状態でしか倒せないような敵の場合、切れたら俺が死んでしまうな。






「そうか。分かった」






 それからしばらく歩いていくと、最初にこの広大なダンジョンに来た時の場所に戻ってきた。







 そこには自分が通ってきた空間の裂け目とも言うべき、歪な空間がそこにあった。






「あそこが(マスター)が通ってきた場所ですか。世界から世界を繋ぐとは、生物の芸当を超えてますね」






 つまり世界と世界を繋ぐような技は、この世界では人としての領域を超えているのか。






 という事は、フリーの言っていた神様というのが出来るような技なのだろうか。






「そのフリーの言っていた神様っていうのは他の所にもいたの?」





 神という存在があれ一つだけとはとても考えられない。複数いるという可能性が妥当だろう。





「はい。俺達が管理していた所は、居住分離世界No.6と言います。それぞれ特性があり、神の意向によって機構が決められております。総数はおよそ百にも及びます」






 およそという正確な数字をフリーが言わないのはどう言った意味なのかな。いやそれにしてもあんな強さの存在が、後百もいる可能性が高い事に俺は驚くしかなかった。






「接続が切れている期間が長く、正確な数字をお教え出来ず申し訳ありません」






 要するに機構それぞれの管理機構の接続が切れている間に、作られている可能性もあるという事か。






 それだったら正確な数字にならないな。それに接続前の総数を言われた所で、それは前の機構の数だから当てにはならないしな。






 それとそしたら一つ気になっている事が出来てしまう。






「一つ気になっている事があってさ。あのアルテナっていうのが神の強さの基準で言ったら、どれくらいなの?」






 俺の青年状態でだいぶ苦戦を強いてしまう位の強さなのは確定している。






 それがもし下の下とかいう話なら、俺も少し対策を考えないといけなくなる。





「神の強さは基本的に神力と呼ばれる特異な力によります。つまり神力が大きければ、大きいほど強いと仮定されます。そのような観点で見るとすれば、アルメリア様は言いたくはございませんが、下の下でございます」





 あれで下の下なのか。つまり神と遭遇した時は、あれより上の強さと仮定して戦闘を行わないといけないのか。






 それにしても特異な力ね。そこら辺も気になるな。






「神力ってどんな力なんだ?」





 フリーはその力の所在を知っているのだろうか。その神力と呼ばれる力について知っていれば、後々神と遭遇しても想定しやすい筈だ。






「神を神たらしめんとする力です。神とは存在していると確定した時から、完璧な存在にとなります。神力はその神の司る概念、根底を操作するものです。アルメリア様は、森の守護神としての側面があります。後は栄養という部分も存在しています」






 だから樹木を普通に操作できていたのか。それに樹木に栄養を与え、急成長を促していたのか。






 だからあの森は、巨大な樹木が数多くあったのも納得できる。アルメリアという神の力が、あの一帯全域を支配していた訳か。






「もしかしてあのエリクサーっていうのもアルメリアっていう神の力と関係が?」






 あのエリクサーという栄養価が馬鹿高い代物について疑問には思っていた。






 何かしら関係があるのは、確定しているだろう。






「はい。(マスター)が見た中央にある球体状の物体は、神石と呼ばれており神の力の一部をコピーする特性が備わっています。それによりエリクサーを無から量産させる事が可能になっておりました」






 そんな素晴らしい物を、俺は取り逃がしていたのか。それはしくじったな。畜生が。





 俺はそんな風に残念がっていると、フリーが立て続けに説明する。





(マスター)、残念がっている所申し訳ありませんが、神石とは確かに貴重な品ではありますが、俺が機能を停止させてしまったのでガラクタ同然に成り下がりましたのでご安心ください」






 何も安心出来ねぇよ。むしろなんでそんな希少価値の高い代物を、ガラクタにしたのかな。





 いや理由は知っているよ。フリーという機構統括システムが離れるという事は、あそこにあるもの全体を停止させないと面子的に仕方なかったという事が。




 分かっている。分かっているんだけど、そんな希少な物は取りたかった。






(マスター)、駄目ですよ。俺のいた所はもう何もない廃墟です。あの廃墟は、ただ思い出が詰まっている場所である為、これ以上変化を起こしたくはないのです」





 俺は思っている事が言い当てられてビクッと跳ねる。俺は冷や汗を垂らしながら、必死に否定する。





「いや分かっているよ。分かっているんだけどさ。それでも、もう少し何か貰えなかったのかな〜と思っていただけで」






「それより(マスター)、そろそろ帰らなくていいんですか?」






 話を逸らしやがった。いや諦めきれないだろうなと考えて、気を利かせて別の話題に変えたのか。






「帰るよ。もう疲労が限界突破して、明日筋肉痛になりそうだよ」






 最早このダンジョンに入って暫くしてから疲労感というのを自覚出来なくなっていた。おそらく限界を超えてしまったのだろう。






 俺はそんな事を思いながら、空間の裂け目へと入っていく。





 アライからお帰りとか言ってくれるのだろうか。そこだけは心配だな・・・うん。

五十話、最後まで読んでくれてありがとうございます



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