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八千職をマスターした凡人が異世界で生活しなくてはいけなくなりました・・・  作者: 秋紅
第二章 遺跡の町は浪漫に満ちてました・・・
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四十九話 八千職をマスターした者の極地がこれです・・・

「フリーそろそろ解析は終わった?」






 俺は樹木野郎の攻撃をなんとか受け流しながら、フリーに声を掛けた。






「解析終了。便宜上命名は、アルテナと呼称。アルテナのエネルギー源は、その地全体であります。つまりほぼ無尽蔵に近くエネルギー切れによる戦略は不可能となります。攻撃手段、方法は樹木操作、神の眼というものによる未来確定視と次元分離、音による攻撃の多用もあり。ただ問題はアルテナは、あの場所からの移動は難しい点です。(マスター)の攻撃手段やスキルを持ち得れば充分に勝てると思われます。勝利確率――――九十九%と推測」






 つまり俺は本当の本気を出さないと、完全に負けてしまうという事か。リソースだったりなんだり考えてちゃ駄目な訳か。





 今ここで勝負しないと、完全に敗北するのか。






「しゃあない!? 本気(マジ)本気(マジ)になりますか」





 俺は息を静かに吸う。それと同時にゆっくり歩みを進める。心を完全に無にして、感覚をただ鋭く、ナイフのように鋭敏化させる。





「十一の型・奥義・天月」





 俺はアルテナの背後に入る。アルテナは未来確定視により、俺が背後に来る事を予知した。事前に次元分離を使い、防御に徹する。






 俺はただ一振り剣を縦に振り下ろした。振り下ろしたと認識した筈だった。しかし何故かアルテナの左手が切り落とされていた。





 次元分離をすり抜けたのかとフリーは考える。しかしそれは違く、きちんと次元分離はしていたし俺の剣は一度ちゃんと振り下ろした時に防がれている。





 なら何故左手が斬られているのか。簡単な話、俺が背後に来る前に既に斬り落としていたからだ。それをただただアルテナは認識すら出来ずに次元分離を背後に発動していた。




 未来確定視はチート能力に思えるが、弱点はきちんとある。それは写真のように一部分にしか未来を確定して予知する事が出来ないという部分にある。なら認識出来なければ予知する事が出来ない。





 ここにいない存在まで未来予知出来る筈もないんだからな。そんな事が出来たら星そのもの、いや宇宙そのものを未来で予知しているようなものだ。そんな事が一存在が行える限度は超えている。






「唯一級スキル・十二の理(ヘラクレス)





 俺はスキルを発動した。俺は剣を軽く振り下ろした。流石に左手を斬り落とされた事で、俺を脅威認定し始めたようだ。





 アルテナは樹木を操作して、俺の体を串刺しにした。それが俺の思惑とも知らずに。






 串刺しにした体が瞬時に回復し始める。これはストックを使った訳でもなく、唯一級スキルの効果だ。ダメージを受ける度に、無限にHP(ヒット・ポイント)と筋力が上がるというものだ。そこに制限は存在せず、攻撃を受ける度に強くなる。





 つまり攻撃するだけ無駄という話だ。チートスキルにも程がある。しかしこれにもきちんと弱点があり、一つは最初からダメージを受けなければ強くなれないという点とMP(マジック・ポイント)を減少させたりと言った攻撃には意味を為さないという点だ。





「唯一級スキル・始祖夫婦剣・アダム・イブ」





 俺は両手に白く輝く剣と、黒く鈍い光を放つ剣をその手に生成した。






 その白い剣の方をアルテナに向かって横に斬った。しかし立て続けに樹木による攻撃を行っていたが、無駄に筋力が上がって攻撃力が増すだけだ。





 次元分離を発動させていたが、白い剣の方であるイブはそれをものともせずに受け止める訳でもなく、掻き消した。






 白い剣であるイブの能力は略奪。スキルや能力をその使用者から奪うスキルである。






 それによりアルテナの次元分離という能力を奪ったのだった。





 もちろんこれにもデメリットが存在する。それは相手がスキルを発動させている事が、略奪の条件に当たる。

 つまり発動し切ったスキルやまだ発動してないスキルは奪えないという事になる。






 黒い剣で俺はアルテナに斬りかかる。次元分離が使えなくなった今、防御手段は皆無だろう。






 黒い剣の名前はアダム。能力は模倣であり、イブの力で奪った能力を使用出来るというものだ。






 俺は次元分離の能力を乗せて、アルテナに斬りかかる。空間が裂けて、アルテナに一撃が当たる。






 どうやってか威力が殺されたのかかすり傷のようで、致命傷には至らなかった。






「フリー、今のは?」






「おそらく加護によるものかと」





 加護か。また聞き覚えのない名前の能力だな。






「加護というのは?」






「個体名アルテナは、加護によりあらゆる自然の力そのものという能力を保有しています。それにより次元分離の力を無理矢理に空間から切り離して威力を減少させたのでしょう。しかし斬撃の威力が桁違いだった為に、届いたんでしょう」






 つまり十二の理(ヘラクレス)のスキルを使用しなかったら、防がれていたのか。





 おそらく加護というのは奪えないと思う。何故か分からないが、そういう直感が働いてしまう。






「唯一級スキル・天の空で、天上を見た」




 このスキルだけはどうしても使用したくなかった。このスキルを使用すると、負けな気がしたからだ。





 俺は上に手を上げる。それに呼応したかのように、光がただ一点に降り注がれた。その一点というのは、アルテナだった。





 無数の光が、アルテナに襲いかかる。その光が辺り一帯に広がり、森を消し去っていく。





 このスキルの能力は、消滅。あらゆる保護手段を貫通して敵を完全に消滅させる能力だ。





 しかしあくまで絶対的な消滅ではなく、ダメージ換算だと、九千というものだ。つまりHP(ヒット・ポイント)特化であれば、上限の九千九百九十九というのは難しくない話だ。それに唯一級スキルにより上限を突破しているなら尚更防ぐのは簡単な話だ。






 アルテナはあの光の攻撃を受けても尚、健在していた。しかし大ダメージだったのか、息も絶え絶えであり苦痛の眼差しを俺に向けていた。





 つまりHPは完全に九千を超えていたのか。バケモンかよ。マジで。





 しかしこのスキルのもう一つの効果が、発揮される。スキル消滅というものだ。どれか相手のスキルをこの戦闘中、完全に消滅させるというものだ。






 俺が消滅させたいとした能力の対象は、加護だ。加護が完全に霧散したのか、どうにもさっきの嫌な空気が無くなっていた。





 あれは完全に加護により、本能的に敵わないと感じていたのか。つまり加護が無くなった今ならなんとかなりそうだ。






「そろそろ終わらせる。十五の型・新月」






 俺は両手の夫婦剣を強く握る。そしてアルテナに向かって間合いまで接近する。





 俺は息を大きく吸う。右脚を強く踏み締め、思いっきり白き剣であるイブを振るった。それは完全に、アルテナの胴を捉えて、上下に分かれる。





 そしてすかさず左手に持つ黒き剣であるアダムを、次元分離と共に、縦に振り下ろした。





 その二つの剣が交互に行き交い、無数の斬撃を五月雨のように降り注いだ。






 それによりアルテナの身体が細切れになり、塵とかす。






 俺は息を大きく吐き、深呼吸をして息を整える。やっと終わったんだと俺は安堵する。






「それでフリー、終わったから聞くけどこのアルテナって知り合いか?」






 元ご主人様とかその辺りだろう。不意にこの身体を見た時、様付けしていたのがいい証拠だ。





「あの都市の最高責任者にして、神なる者の一柱でアルメリア様と言います。我々に感情という物をシステムとしてアップデートしてくれたりと慈愛に満ちていた方です」






 そんな慈愛に満ちていて、機械にすら優しかった神様が何故こんな森の中央で、樹木になって佇んでいたのだろうか。





「アルメリア様は少し争いに身を投じてきますと言い、あの都市を去りました。その後アルメリア様が戻って来る事はありませんでした」






 つまりその争いというのが、何かあるのだろうか。それがあの塩化現象とも関係があるかもしれないな。





 とりあえず帰るか。そんな感じで俺はまた一歩足を前に踏み出した。

四十九話、最後まで読んでくれてありがとうございます



少しでも面白いと感じたら、いいねやブックマーク登録お願いします。また次の話もよければよろしくお願いします。

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