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八千職をマスターした凡人が異世界で生活しなくてはいけなくなりました・・・  作者: 秋紅
第二章 遺跡の町は浪漫に満ちてました・・・
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四十五話 やっと帰れそうです・・・

「それでフリーゲンだから、フリーって呼んでいいか? フリーゲンだと長すぎるし」





 フリーゲンこと小型ロボットは、俺の右肩付近の空中を飛んでいた。





「それくらいなら別に構わないですよ。わざわざ許可取る必要もないですよ」





 フリーは首を傾げるようにそう言った。わざわざ主人である俺が、機械である自分に許可を取ったのが不思議なのだろう。


 普通なら機械という事なら、命令するのが彼にとっての普通なのだろうか。





「それでフリー、俺らはどうやって帰るんだ?」





 そもそもこんな真っ暗な空間から早く脱出したい。早くアライの元に戻りたい。





「普通に転送陣を展開すれば戻れますよ。ていうか(マスター)が何処から来たのか教えて貰えると助かります」





 あれ。フリーって施設全体を管理している筈なのではないのか。俺が最初に来たあそこってなんて言えばいいんだろうな。





「真ん中に特殊な水を生産しているところかな?」





 これで通じるかな。いやフリーは高性能ロボットだ。俺は信じる。





「あ〜エリクサー生産場ですか。あそこは俺との接続は、完全に分離しているんですよね。というかしました。今やエリクサー生産場は、ここの住民に必要ないと考えまして」





 だからあんなに第五通路と生産場とは建物の風化が異なっていたのか。あっちはフリーとは接続を切ったから維持しなくなってあんなにボロボロになったって感じか。





 ついでに接続も切っているから、フリーは生産場に俺が紛れ込んでも察知出来なかったのか。






「それで転送陣って展開出来るの?」





 接続を切っているから出来ませんって言ったら泣きそうになる気がする。帰るのが怠くなるな。最悪、無理矢理に帰ってやる。





「問題ありません。展開出来ますよ」





 俺はそれを聞いて安堵する。よくよく考えてみれば、生産場も元管理下だったし、転送出来るか。





 それはそれとしてさっきから脳の片隅に置いて、ツッコまないようにしていたのだが気になる事がフリーにあった。






「ていうかあの水ってエリクサーだったんだ………………」





 エリクサーって言ったら、ファンタジーゲームでよくある全回復アイテムじゃないか。そんなもんが普通に無限に生産されていたのか。なんて夢のある施設なんだよ。





 ていうか俺、飲んじまったけど大丈夫なのだろうか。





「はい。正式名称は、天工完全栄養液って言います。ただの高性能の栄養剤とお考えください。もしも飲んでしまっていた場合でも、大丈夫ですよ」





 なら安心だな。人の身で飲んで、後々不調になったらたまったもんじゃないからな。それか不老不死になりましたなんてなったらしんどそうだし。





「それにしてもあの水、美味しかったな」





 実際問題、本当に美味い水だった。むしろずっと飲んでいたいくらいだ。それほどあの水が恋しい気がする。






「あまり飲む事はお勧めしませんよ。(マスター)





 フリーが少し警戒するようにそう言った。フリーが初めて、こんな警告をした気がする。要するにエリクサーには何かあるのだろうか。





「どうしてだ?」





「エリクサーというのは、本来は天使達専用に調整されている代物です。彼等にとって食事とは、不必要の行動であり味覚も存在してません。だからこそあのエリクサーというのは、傷の治療の為だったり栄養の為の水に過ぎません。つまり味覚のある(マスター)が飲んだという事は、少し危険かもしれません。中毒の恐れがありそうですね。そんないっぱい飲まなければ平気でしょうが」





 そんな危なっかい代物を俺は飲んでいたのか。麻薬と大して変わらないじゃないか。だからあんなに美味く感じたのか。





「そうか。分かった」





 俺は全身が悪寒に包まれる。そんなに多量に飲んでなくてよかった。今頃エリクサーを飲まなきゃいけなくなってそうな体になっていたのかもしれないな。





「とりあえず(マスター)。転送の準備完了しました」





 意外と早く転送術の準備が完了したな。もう少し時間がかかるもんだと思っていたのだが。





「それじゃ転送、宜しく」





「転送地点、設定完了。目標はエリクサー生産場。転送――――開始します」





 フリーが転送陣を展開した瞬間、俺の足元に魔法陣が出現して、青白い輝きが俺を包む。





 次の瞬間俺の見ていた景色は変わり、前にいたカプセル状の機械の中に石があるエリクサーを無限に生産している工場に戻ってきた。





「やはり俺の手が加わらないと、こんなにも風化するんですね」





 フリーが何処か物悲しげにそう呟いた。フリーがいつから接続を切ったのか定かじゃないが、結構な時間が経過しているのがこの生産場の風化具合でなんとなく察せれる。





 きっとあの維持し続けた都市も、いつか時が過ぎるにつれてこうなっていくのではないかという不安もあるのだろう。





「そういえばこの施設を維持するプログラム自体は残っているんじゃないのか?」





 データそのものを、この小さなロボットに全部移行した事を考えると維持しながら俺に着いていく事自体は難しくない筈だ。なのにそれをしないのは不自然な気がした。






「それをする事は難しくないですが、俺はもうあの施設は終わらせないといけないと考えていました。無意味に、無作為に、維持してるより前の主様達に報いるように、あんな事をした原因と元凶を見つける方が先決だという結論に至りました」





 それはフリーにとって、とてつもない程の長い時間考え抜いて決めた結論だったのだろう。それを俺如きが否定する事など出来なかった。





 自身も意志で、自分の考えで決めたフリーを俺は尊敬するしかなかった。





「そうか。それなら俺はもう何も言わないよ」





 これ以上言う事は野暮ってもんだった。





 そして俺達は、前にこの生産場に来た道を歩いていた。ところどころ、右肩にいるフリーが記録に残すかのように周囲を見渡していた。



 もう二度と来ない覚悟の元、フリーは最後の景色を記録に刻み続けているるのかもしれない。初めてフリーは外界に進出するのだろう。





 俺達はその道を歩いていき、俺がエリクサーを飲んだ地点まで戻ってきた。俺は真上を見渡すと、穴が空いていると思っていたが何故か塞がっていた。





「なんで塞がっているんだよ」





 まるで元通りかのように完全に塞がってた。自然と修繕されたような違和感すら感じていた。ダンジョンにそんな機能があるのかな。





「この真上でしょうか?」





 フリーがそう真上を見ながら、俺にそう問いかけた。





「そうだよ。さてとどうしたもんかね」





 飛び上がって真上の土を壊すのもいいし、飛行を使ってもいいし悩む。フリーを戦ったので、身体的にだいぶガタが来ているし、リソースが消耗し過ぎた気がする。





(マスター)が許可していただけるなら、俺にお任せ願いますか?」





 どうやらフリーに何か策があるそうだ。俺よかよっぽど優秀なフリーの事だ。きちんと果たしてくれるだろう。





「いいよ。お願い」





 俺はそう一言、フリーに言った。





 フリーがそれを聞いた瞬間、魔法を起動した感じがした。やはり魔法か。フリーに魔法とか習おうかな。魔法が使えるだけで、だいぶ戦闘手段が増えそうだし。





「魔法術式構築完了――――――飛行(フライ)――――発動」






 俺の体が浮く。そしてフリーの補助のおかげだろうか。すんなりと俺が望む方向に飛んでいける気がする。スキルの飛行(フライ)とはまた違った感じの飛行方法だ。





 あっちは停止、決まった地点に移動、設定した地点に移動をいちいち考えないといけなかったからな。こっちは思うがままに移動出来る。スキルの方が劣化している気がするな。





「これは凄い」





 俺は素直に感心してしまう。なんかよくある魔法系の作品だと、飛行魔法は必ずと言っていい程出てくるが、その作品達はこんなにも気持ちいい魔法を使っていたのか。




 そんな事を思いながら、俺達は真上に行った。

四十五話、最後まで読んでくれてありがとうございます



少しでも面白いと感じたら、いいねやブックマーク登録お願いします。また次の話もよければよろしくお願いします。

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