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八千職をマスターした凡人が異世界で生活しなくてはいけなくなりました・・・  作者: 秋紅
第二章 遺跡の町は浪漫に満ちてました・・・
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四十一話 そこには塩があった・・・

俺がそのロボットについていき、辿り着いたのはとあるビルだった。そこには何かロゴのようなものがあり、このビルの名前が居住ビル第三番と書かれていた。




「ビルならどこでも良いんですが、ここが一番保存状態が良好な方ですので選ばせていただきました」





 保存状態が良好という単語の意味が俺にはよく分からなかった。ただ第三番という事は、第一、第二とかあるのだろうか。





「この居住ビルって何番まであるんだ?」





 見た感じ相当な高さのビルだ。よく普通に立っているなと感心するばかりである。スカイツリーの九倍、いや十倍近いか。正確に測ってはいないがそれくらいな気がする。



 そんなビルに何人、いや千万単位以上住めそうな感じである。




「同様のビルが十一番まで存在しております」




 つまりこの居住区画だけで、日本人の人口を全部受け入れられそうな感じだな。




 改めて考えると、常識の埒外な所だと思ってしまうな。





「よくもまぁ〜こんなビル建つな」





 俺はロボットに関心を示した事を話した。どんな構造で建っているのか、建物内はどんな感じなのか凄く興味がそそられる。





「そこまで興味を持たれたのは、我々としても嬉しい限りです」





 まさかこの建物、全部建てたのロボット達なのかな。




「まさかここにある建物全部建てたの?」





「はい。我々が一晩の時の間に全て建てました」





 おいこいつ何言っているんだ。こんな大規模な空間の建物を、全部一晩のうちに仕上げたってか。本当にどんな技術力だよ。気持ち悪いにも程がある。





 俺は冷や汗を掻きながら、そんな事を思った。




 それでその居住ビルの自動ドアの前に辿り着いた。





ただ今回は何処にも暗証番号だったり、さっきの宝石のような認証システムは見当たらなかった。





「管理者マスターコード認証・・・完了しました。どうぞお入りください」




 その人型ロボットは赤い眼の色に変わりながら扉のロックを解除した。本来は別の方法で開くような仕組みなのだろうか。ただそのロボットが、この建物全体の統括システムだから余裕なのだろう。




「本来なら身体認証と、個人識別番号によりロックを解除しますよ」




 その人型ロボットは、俺の心の中で疑問だった事をきちんと説明してくれた。やはり気遣いの出来るロボット君だな。




俺はそう思いながら、ビルの中へと歩みを進める。そこは異様に静けさと暗さの通路だった。ただ個室のような扉には101とか書いてあり、そこら辺は普通のマンションとかと変わらないんだと思った。





「とりあえずこの101号室に入りましょうか」




 俺達はその部屋の扉の前に立ち、またロボットが赤い眼に変わる。どうやらその時は赤外線的な何かで認証しているのだろう。




「管理者マスターコード認証・・・完了しました。管理者様、どうぞお入りください」




 その扉の認証システムがそうシステム音声を発した。普通に個人部屋にも入れるんだな。まぁ〜管理者様だからな。認証が完了すると、自動で扉が開く。





「どうぞ先に入ってください」




 ロボットは俺に先に入るように促す。何やら俺に先に見てほしいという感じなのかな。




「我々はあまりそれを認識すらしたくないので」





 そっちなのか。本当に人間のように感情を持っているかのような違和感を覚えてしまうな。その先に何があるのだろうか。




 俺は靴を履いたまま部屋の中に入れる。日本人だから未だにこういうのは慣れないものだ。そこには近未来的なソファがあり、テレビのようなもの、他にも見慣れない機械があったりと色々とある。




 そしてそのソファには、人のような者が座っていた。あれ。普通に人がいるんじゃないか。いや…………なんだこの感じ。





 俺は何の事はないと言った感じで、その人影の前に行く。そこには白い粒で造形されたような像があった。





「これは塩か?」





 背中には翼のような羽もあり、俺が見た感じだと塩で形作られた像にしか見えなかった。しかしそういうことではないのだろう。





「何があったんだ?」




 俺は当たってほしくない予想が脳裏の奥底を過ってしまう。しかし多分、大当たりな予想だと息を飲むしかなかった。一応ロボット君に、聞いてみるしかなかった。




 ロボット君はそろりと俺の横に来て、話し始める。





「ここにいる存在達は、突如奇妙な病気が蔓延しました。それは手先や足先から段々と塩になっていく奇病でした。貴方達の間では天使と呼ばれる存在ですかね。それは一気に広がりを見せました。それの中で一番に最初に進行したのが、この居住区画第三ビルです。ここはただ日常生活をしている中、一気に奇病が進行しました」





 だからソファに座りながら、塩になっているのか。なんか和かな笑顔のまま塩化しているな。




 多分この天使と呼ばれる存在も、未だに何も分からない状態でずっといるのかな。不憫で仕方ないな。





「そんな感じで主人達はパニックになりました。原因は不明。理由も不明。ただ分かる事は、主人達はやり過ぎたと発言しておりました。我々のデータベース上には情報はなくて、機密性の高い情報のようでした。そしてその塩化が発生して数日で、ここの都市の主人達は全滅してしまいました。最早我々にも対処の手段はなく、ただ見ているしかありませんでした」





 それにはロボットには、機械には見られないような寂しい、虚しさ、悲しさ、至らなさが全部言葉に出ているような気がする。





 主人達、尽くしている存在達が、絶望している中歯痒い思いでずっとただ凄惨な光景を見ているしかない。それがどれだけ苦しい事なのか俺には想像すら出来なかった。





「それで俺にこれを見せてどうする気なの?」




 俺は淡々とロボットに口にした。ただ実際その気持ちは察しているつもりではいる。しかしそれはあくまで他者として、察している気になっているだけである。




 同情よりこれからの事についてこのロボットとは話したい。そもそもこれを見せた理由、目的、俺に何をさせたいのか知りたいところだ。





「我々が貴方様に求める事は、他の区画に行き、情報を得る事、若しくは本命の全総合システムを見つけてこの塩化の原因を見つける事です。勿論、無理知恵は致しませんがお願いしたいと思います」




 やはりこの都市統括システムはあくまで都市にしか手が届かないという事か。つまり他の同様の遺跡を見つけて、情報を得ろと。





「別に構わない」





 俺は素直に了承をした。俺の予想だと、遺跡を周れば世界の仕組みが少しは理解出来そうだ。兄貴の発言の意味。それが分かるかもしれない。




「ありがとうございます。それでは都市統括室に案内します」





 うん。どういう事なのかな。帰してくれるのかな。




「転送を開始します」




 いやいや、なんで転送陣が足元に現れるんだよ。え。俺、どうなるの。それにそこら辺の説明もしてくれよ!?




 水色の光が、俺の全身を包む。前の転送陣とは何か微妙に異なっているような印象を受けた。





「いや、どういうことだよ!?」





 俺は慌てながら、ロボットに質問する。ロボットはケロッとした様子で、淡々と説明する。





「我々の都市統括室に行き、主人変更の手続きをしたいと考えてまして」





 まさかそういう事で、俺にあれを話したな!? つまり主人を俺に変えて、遺跡に同行して情報収集をしようと考えている訳か。





「そういう事なら仕方ないな。分かったよ」





 俺は転送陣を受け入れて、覚悟を決める。もうどうにでもなれという自暴自棄の精神でいこう。いちいちツッコムと完全に俺が疲れる。俺は溜息を吐きながら、諦める姿勢になった。





「転送準備終了。空間転送システム完了。移動します」





 俺はロボットと共に転送された。

四十一話、最後まで読んでくれてありがとうございます



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