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八千職をマスターした凡人が異世界で生活しなくてはいけなくなりました・・・  作者: 秋紅
第二章 遺跡の町は浪漫に満ちてました・・・
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四十話 遺跡の住宅街

そろそろゴーレムの猛攻にも飽きてきてしまった。そう俺は思いながら後方を振り向く。そこにはゴーレムの残骸と思わしき代物がいつの間にある大量に積まれていた。これらを持ち帰れば、それだけで合格するのではないだろうか。一応ゴーレムを起動していたエネルギーのコアらしきものは二、三個回収したが。





 ただ奥底までの通路は続いているから、この第五通路だけ探索してから帰ろうかな。全部探索するのは流石にリソースもデメリットも大きいしな。きちんと準備してからなら遠征という名目で、探索してもいいかな。




 俺はそう煩わしいゴーレムの猛攻が止んだ静かな通路を進んでいた。ただこの先は、機械音声の話だと居住区画とか言っていたな。しかし人とかいるのだろうか。そこら辺は凄く気になるところだが。




 そんな事を思いながら歩いていると、近未来のような自動ドアがあった。その扉の横には宝石のような物が浮いていた。細長い菱形で、透き通るような翡翠色の綺麗な代物だった。これに触ると開くとかだろうか。




 しかし他に開きそうな物がついていないからそういう事だろう。ただ触って許可されていませんからの即死攻撃とかありそうだな。

 まっ一回触ってみてから死んだらその時はそん時だ。俺はそう思いながら右手で宝石に触れる。




「許可されていない存在からの接触を確認しました。該当データ皆無。しかし膨大なエネルギーを確認。実験の為に特別許可を申請、受理しました」




 何やら実験という名目で、嫌な許可を貰ってしまった。いや人体実験とかしないでほしいんですが。大丈夫だろうか。そう思いながら目の前の扉が、自動で開いた。




「居住区画3-55を開きました。どうぞ住まわれざる存在よ」




 最後の意味はどういう意味なのだろうか。なんか嫌な予感と俺の危機感がとてつもなく感じてしまう。




 扉は何やら空間そのものが、接続されているようなそんな感じがした。そして俺はその扉を通ると、俺は絶句した。

 そこには広大な未来都市だった。何やら変な形の巨大なビル群、どういう仕組みで流れているのかよく分からん空中を行き交う水路、空中らそこらの地面を行き来するロボット達と最早それはSFの世界そのものだった。

 



 ただ一つ疑問だったのが天井である。空を模しているだけでもなく、ただ無機質な天井に光源となる球体が浮いているようなものだった。それを見ると、地下にあるのだろうか。それとも空間的に隔絶されているとかだろうか。気になるところだ。




 他も見てみれば、何か気づく事もあるだろうか。俺はとりあえず普通に観光するかのように、ゆったりと歩いた。なんか居住区画の人は、避難してくださいみたいな音声があったがロボットが攻撃する様子は見られない。多分あれだけ学習するゴーレムを倒したんだ。つまりいくら攻撃しても無意味だと思ったのだろうか。




 しかしいくら探索したところで、人どころか生物のせの文字すら見当たらない。ここまで文明的に発展したような世界なのに、なんで誰もいないのだろうか。もしやそれでも滅びたとかだろうか。うむ。気になるところだが。それにしても殺風景過ぎるな。誰もいない都市とかのホラー映画の何が怖いのかここまで実感するとは思わなかった。生命の息吹をここまで感じないのはなんというか悲しい気がするな。




 俺はそう思いながら歩いていると、不意に背後に違和感を覚える。




「やはり無機質にも反応するのですね。住まわれざる存在よ。ようこそ最早吐息のない無機質な都市、アデルフへ」




 そこには先ほどのロボットやゴーレムのようなものではなく、完全に人型のロボットだった。それも知能のありそうな存在だった。人工知能という奴だろうか。




「あんたも俺を排除しに来たのか? それにしても害意は感じないがね」




 害意はなくても機械は機械だ。排除しろと命令されている可能性は捨てきれない。ただこのロボットはどちらかというと人間味が強そうな感じだった。




「いえ我々は、貴方様にこの惨状をご覧になっていただきたく思いまして」




 嫌な観光案内者だな。誰もそれを聞いて、観光したいなんて言わねぇよ。しかし人や知的生物がいない理由は知りたいって言う部分は確かにあるな。それを教えてくれるだろうか。




 それにしても我々と言っているという事は、その機械物体のネットワークで総括しての意志という事なのか。俺の事を何か知ってそうな感じがあるが、俺に何を見せるつもりだろうか。




「着いて行くのは構わないけど、一つ聞かせてくれ。あんた何者だ?」




 そもそも自己紹介のないような怪しい存在に着いて行くのは良くないからな。それにこのロボットには違和感を覚えてしまう。なんか他のロボットやゴーレムとか完全に別の存在かのようだ。 




「そういえば申し遅れてましたね。私は個体名Aタイプ、統括指示機構――アデルフです」




 あ〜だから違和感の正体はこれか。ロボットとかゴーレムを統括してるリーダー的な機械だと思っていたが、それ以上だったわ。まさかの都市そのもののリーダー機構様が、ロボットの身を借りて現れたという事か。




「まさかこの都市そのものの機構を統括してるのか?」



 こんな広大で、複雑な機械群を寸分違わず維持してるっていうんだから最早人知を超えているスペックだな。




「はい。私はこの都市の機能を全て維持しております」




 なんかやべぇ存在と話していたんだな。俺は。そんなスペックがおかしい存在と普通に対等に話しているのもどうだろうか。




「なんかやばいな…………」




 俺は絶句してしまっていた。だから都市そのものの名前と一緒なのか。




「いえ、私はただ機械としてただ都市を維持していただけですので」




 そこには何か哀愁のようなものを俺は感じてしまった。機械だというのに、なんでか分からんが人間味が本当にあるな。よく分からん奴だ。




 ただそれもそうか。こんな何もいない都市をただずっと存在意義として動いていたら機械だって狂う気がする。この機械達は、どんな思いで、どんな感じでずっと無機質な時を過ごしていたのだろうか。




 機械だからって限度がある気がするな。




「それにしてもあの通路の音声はお前か? まさか?」




 転送陣に乗った後に性格の悪い機械音声があったが、それもこいつが考えたのか。




「最初は侵入者だと認識してましたので。それにあのセリフはユーモアがあったでしょ?」




 やはりこいつだったか。うん。やっぱり同情するの止めよう。同情したらなんか駄目な気がする。





「それにしてもあの時、居住区画の存在は避難してくださいみたいな話があったがあれは?」





 そもそも存在そのものがいないのになんか矛盾を孕んでいる気がするがな。




「あれは一応体裁というものです。我々の存在意義は、何一つ変わりなく主人を守ること。ここにいる存在達を守る事ですので」





 成程。この機械を作った創造主様が、そういう酷な命令をしていたのか。




「まっ機械の考える事はよう分からんが、俺に何を見せる気なの?」




 俺はそのノリのいいロボットについていきながら、一番の疑問を投げ掛けた。





「見れば分かります。逆に見てほしいと考えています」




 つまり俺が見なきゃいけないような事か。説明しても理解から程遠い話なのだろうか。それほどの何かを俺に見せる気なのか。




 帰りたい。なんか嫌な予感するから。早く帰って宿屋で寝たい。アライの顔が見たい。




「すみません。我々の我儘に付き合わせてしまいまして」




 俺の嫌な顔を察してたのだろうか。きちんと気遣いとか理解してるんだな。




「いや俺も気になるから大丈夫だ」




 俺はそう言いながら人型ロボットについていった。

四十話、最後まで読んでくれてありがとうございます



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