三十八話 ダンジョン探索開始しました・・・
そこは一見遺跡のように見えるが、どうにも違う用途に思えた。住居などの部屋は見当たらず、どういう意図や目的で、その建物を建てたのだろうか。
昔の建物と言えば、宗教的な建造物などが多い気がする。
しかしそういった部分は見られず、どちらかというと水路のように思えた。元いた世界でいう所の水道事業所のような場所なのではないだろうか。あの不可思議な水を生成していた、若しくは他に流れるように工事、調整する機関なのではないかと疑問に思う。
歩みを進めて、水路のような部分もあり確かにそういった場所なのだろうと推測出来た。
ただ分からない事があり、この遺跡に使われている石材である。試しにコンコンと手で材質を確認しが、既存の石材ではないようだった。まだこの異世界に来て一週間も経ってないが、どうにもあの遺跡の街と呼ばれていた建物の石材ではないのは確定的に明らかだ。
頑丈というのはそうなんだが、頑丈にも程がある。だって全力で一回拳を壁に当てたが、ビクともしなかった。硬いというよりかは衝撃という力を別に流しているようなそんな感じがした。
だからこそ、その石材にもきっと貴重な価値があると踏んで、どうしたら持ち帰れるだろうかと考えながら今、通路を突き進んでいた。
あと思ったのが、魔物のような生物が一切見当たらない事だった。俺は覚悟して魔物と戦うんだろうと思ったが、そんな事はなかった。
静まり返っており俺の足音や息遣いなどの音しかなかった。
つまりこの遺跡は、魔物を寄せ付けない何かがあるという事になる。その原因も知りたい所だ。なんならその原因を突き止めれば、村や町が魔物の危険性を完全に無くす事ができて、龍玉に頼る必要が無くなるしな。
「さてとどうしたもんかね」
なかなかいいお宝や情報が歩いてて見つからない。異様に広い通路に飽き飽きとしてきた。
確かに浪漫の塊のような場所であるし、興味が尽きない所であるが、それとは別に何もないのである。
ただだだっ広い通路である。分岐しているような通路、部屋のような場所は崩壊しており撤去するのは難しいだろう。つまりこのまっすぐな通路を突き進むしかないのである。
そしてその広い通路を抜け出したら、とんでもなく広い部屋に辿り着いた。
中央にはよく分からないカプセル装置のようなものがあり、そのカプセル内で何やら生成されている。よくよく観察してみると、何やらカプセル内で球体上の石のようなものから、不可思議な水が生成されていた。
そのカプセルを包む様に、樹木の根っこが巻き付いていた。多分、あの樹海の真下に今俺はいるのだろう。
あの不可思議な森の栄養分の元凶がこいつか。これに巻き付いて莫大なエネルギーを吸収しているのだろうか。
「どうするべきかな」
破壊してもいいが、別に俺がいる世界に悪影響とか及ぼしている訳でもないしな。ただあの森の栄養分が、この不可思議水生成装置と密接に影響し合っているという事が分かれば上出来だ。
「さてと別のもの探すかな」
持ち帰っても問題ないようなものないかな。そして俺はその部屋に一歩足を踏み入れた。
「侵入者を検知しました。外敵を排除します」
うん、まじかよ。そういう部分はきちんと機能しているのか。いや部屋の扉があったであろう場所に何やら暗証番号のような装置があったがそういうことね。
「殺気のようなものも何も感じないか」
しかし一瞬空気がピリつく。それを瞬時に悟り、危機感を感じる。
右上からレーザーのようなものが放たれる。俺はそれを防げそうに無いなと思って、回避する。
予想は当たり、何があっても壊れなかった石材が床に当たったレーザーの影響でドロドロに溶かされていた。
「うわあ、これはひどい。殺意増し増しだろ…………」
少しでも当たった瞬間、ドロドロに全身溶かされていたと思うと、少し背中にゾワっとした悪寒を感じる。
しかしこれ、レーザーというより高圧の水のようなものに思えた。つまりあの水は扱いようによっては色んな性質に変えれるのか。レーザーに使われていた水は、溶解性のある水に変質していたのだろう。
それにしても何処から攻撃が来たんだと右上を確認する。そしたら如何にも近未来のようなレーザー兵器の造形をしているのが壁に備え付けられていた。
「うん、あれが原因か」
とりあえず、剣で斬りつけてみるか。
「飛刃・荒天八雲」
荒天八雲というのは、神級スキルであり嵐属性と防御貫通能力が付与され、尚且つ威力が数十倍に跳ね上がるスキルである。
その嵐の刃が飛び、レーザー兵器へと当たる。やはり思った通りであった。防御貫通系なら問題ないんだな。
レーザー兵器は叩き斬られ、床へと落ちる。しかし他に機能しているレーザー兵器はなかった。
つまりあれが最後のレーザー兵器ちゃんだったという事か。まぁ〜そのままにしてても探索進まないし仕方ないね。
「それにしてもきちんと危険感知センサー、いや侵入センサーとか設置されていたところを見るに高度に発達していた文明のようだな」
あのレーザー兵器には驚いた。俺の元いた世界に、そんなものなかったしな。それにあんな水が、生成されているところを見ると元世界より随分と発達しているようだ。なんていったってあの水が見る限り無限に生成されているところ感じでありそれだけで食料問題は解消されるだろうな。
そんな高度文明遺跡だと証明されたな。まぁ〜元々遺跡自体人為的に作られているところがそこらかしこにあったし。
だからこそ違和感があった。なんでこんな高度文明が滅んでいるのか。いや移住というのも考えたが、それは多分無いだろう。侵入センサーを設置しているのを見るに技術を別に漏らしたくないのは分かる。
つまりこの遺跡自体を無くすというか消滅、解体する選択肢があった筈だ。それが無いところを見るにこの文明が滅んでいるという事になる。
何かしらの手違いか、想定外の要因による崩壊という説が濃厚だろうか。
それにしても六つに分かれている魔法陣のようなものがそれぞれ一つずつあった。
あ〜これ面倒くさいタイプの奴だ。この魔法陣に乗ると、特定の場所に転送されるとかいう奴でしょ。
嫌だ。それ系統のダンジョンが一番面倒くさいんだよ! 事前にゴールまでの道のりをナビゲートしとけとつくづく思う。
そんな長い間、この遺跡に留まるつもりなんて一切なかったし。絶対長引く奴じゃん。
しかしこれだけこの遺跡が、広大という証明にもなった。この転送陣に乗れば、それだけこの遺跡で何か見えてくる部分があるかもしれないな。
なんならこの遺跡と異世界は何かしらの関係性が出てくるか。
兄貴の言ってた『このロクデナシな世界に呪いあれ』という言葉が脳裏をよぎった。
よし、探索するか。この遺跡を。しないよりした方がきっと得するだろうしな。
俺は左下の方向の魔法陣の上に乗った。そして乗った瞬間、何処からか音声が聞こえた。
「転送陣にカテゴライズ・生物を確認。分類不明、個体識別番号不明、転送を開始します」
あ〜何か不明だけど、転送してくれるのね。じゃあなんでそんな音声追加したよ。
その転送陣から眩い水色の光が、俺を包む。あ〜それで転送されるのか。
視界が瞬時に入れ替わった。さっきの部屋は何処か遺跡という名のボロい建造物に見えたが転送先は違っていた。
新品同然のようなきちんとしている通路だった。
「転送終了です。お疲れ様でした。危険な旅をお楽しみください」
いやどういう意味だよ。あ〜不明だからか。つまり侵入者を袋叩きにする為の常套文句とかなんだろうな。
タチが悪いな! この音声考えた奴、性格悪いだろうが!
三十八話、最後まで読んでくれてありがとうございます
少しでも面白いと感じたら、いいねやブックマーク登録お願いします。また次の話もよければよろしくお願いします。




