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八千職をマスターした凡人が異世界で生活しなくてはいけなくなりました・・・  作者: 秋紅
第八章 学院国家に研修に行くようです・・・
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三百ノ十一話 堕ちていく堕天の象・・・

 そこにいたのは、完全に超越した存在の姿だった。魔力や気力とは異なる力そのものを、ムディナ自身は発揮していた。色々な色が混ざり合い、異なる色を魅せていた。眼は銀色に染まっており、光沢のある美しい瞳をしていた。髪は白く染まっており、光にてそれは照らされている。





 圧倒されるような力の重圧と、美しいというたった一言だけ思い浮かべてしまうような浮世離れした姿が、今のムディナだった。





「なんだよ………………あの姿は………………」





 アーデリは、絶対的な強さを持つムディナを見て、惚けていた。災厄クラスになっているであろう驚異的な集団での堕象が目の前にいるというのに、ムディナしか視界には収められなかった。





「う……………………美しい………………」





 ウルウは、憧れている存在の、真の姿に圧倒されてしまった。浮世離れした、人間という存在とはまるっきり異なるような、そんな幻想的な姿に、眼を奪われてしまった。ウルウは両手を強く合わせるように握りながら、跪くように祈っていた。そこにいるであろうムディナという神以上の絶対的な存在を目の前にしたからだった。





 そしてようやく堕象の集団は、ムディナ達の中距離くらいの間合いへと接近していた。ムディナは手を強く握りながら、無限の力で衝撃と威力を増幅させていく。





 一瞬にして、ムディナの姿は居なくなり、堕象の巨大な顔面の前へと概念的な移動をした。堕象は感知する事すら出来なかったという事で、一瞬であるが驚きを見せるが、『小さな分際で』とムディナを見て即座に臨戦態勢に入っていく。





 しかしその一瞬の驚きの隙を、ムディナが見逃す訳もなかった。拳を大きく引き、眼前にいるであろう巨体に向けて、振りかぶろうとする。





「大きくて、当て易そうだな。お前らは」





 そんな事を呟いたムディナは、その拳を堕象の胴体めがけて振った。





 その瞬間、直撃した堕象は木っ端微塵に塵になり、その一直線上に居たであろう堕象は全て消え去った。ありえない光景であり、もはや人間が行うような所業を余裕で超えていた。





 同じメンバーである五人は、ただ茫然とせざるを得なかった。あの状態のムディナは、人間の領域を完全に侵している正体不明の何かであると。





 唖然としてしまう状況であったが、何とか思考を取り戻して、ムディナを遠くから眺めていく。





「おいおい、簡単にくたばりすぎだろ。もう少し耐えろよ。俺が戦った連中は、そんな簡単じゃなかったぞ」





 ムディナは空に立ちながら、そのように堕象達に言った。言葉を理解している知能はあるようで、憤慨している様子だった。





 一瞬にして、小粒のような存在に仲間が数十匹消滅したという事実が、堕象達はようやくムディナを脅威だと認識した。





 あの小粒はヤバい。その強者の勘と野生の直感がそう警告を鳴らす。生存本能と呼ぶべき代物が、『逃走』の二文字で、そうしろと叫んでいる。





 しかし逃げれないことも、戦闘経験から理解している。だからこそ闘うしかないのだと。逃げたところで、無意味に殺されるだけなのだと。





『パオォォォァォォーーーーーー!?』





 一匹の堕象が、そう咆哮のような雄叫びを上げていく。それが仲間を鼓舞するようであり、ムディナという存在の脅威度と敵意を指し示した。





「テメェが、この集団のリーダーかよ。他者の縄張りに侵入したらどうなるか、理解しているだろうな」





 ムディナはその大きな雄叫びを上げた堕象に、野生的な殺意ある眼差しを、向けていく。それは普通の集団で緩く過ごしている人間の眼ではなかった。あれは獲物を確実に狙い、喰らう、野生的な強者の瞳をしていた。





 平穏に過ごしていた平原の生き物達を、恐怖に落とし入れた落とし前、きちんと付けないといけないだろう。





 だから堕象を殲滅する。もう二度と、この平原に脚を踏み入れたくないように、踏み入れる事を恐怖させるようにしてやる。





 一瞬にして、数匹の堕象がムディナを囲い込む。それがリーダーのさっきの鳴き声の指示のようであった。





 一斉に巨大な脚が、地面に陰りを生んでいく。光を通さず、形すら残らない絶対的な質量のある攻撃がそこにはあった。





 ムディナは右手に無限の力を集中させ、ただ空を掴むかのように上げていく。普通ならそのような状況になったら、人間では絶望的になっていくであろう。





 しかしムディナは余裕のある冷静な顔をしていた。それどころか何処か嬉々とした笑みを少しばかりであるが、溢しているようだった。





「龍王技・アースガルド流・龍翼掴手・滅無伝播」





 ムディナは容易に堕象の脚を掴んだ。びくともしない事に堕象達は困惑する。そんな存在がいる事自体、今まで無く、信じられなかったからだ。ただ自らの脚で、敵対生物を踏む。それが当たるだけで、大抵の生物は終わりを迎えていたからだ。





 しかしそれが通用しない存在が、今まさに堕象達が敵対しているのだとようやく理解した。そんな単調な攻撃一つでは、傷一つすら付けられないのだと。





 掴んだだけではなかった。無限の増幅された滅する力が、堕象へと流れ込んでいく。堕象が何らかの違和感を感じながらも、余裕である。





 余裕だと思っていた堕象が、いつの間にか姿を消していった。何が起こったかも理解する事も、知る事もなく、そこに存在を消滅させるに終わった。





 塵すら、跡形すら、何も残らず、そこにいた堕象が姿を消した時、次々に周囲にいた堕象も伝播するように消滅していった。





 数匹は周囲にいた巨大な質量のある生物は、何も意味を為す事が出来ずに、終わりを迎えたのだ。





 リーダーらしき堕象は、唖然とする。本当に目の前の存在の脅威が異常であるという事実に。立ち向かうという事すら許されない絶対的な力の存在がそこにはいるという事実に。





「終わらせる。無限の理にて、龍の滅する力にて、終焉を迎える事を、光栄に思え」





 ムディナは龍剣を引き抜き、無限の力と闘龍気を流し込んで、循環し、融合していく。純粋な強打な力が、龍剣を包み込んでいく。






 それは力そのものとなり、ムディナが立っている地面が隆起する。ドカンと大きな衝撃の音を響かせ、目の前の滅する存在を目の前に見据えていく。





 そしてムディナは強く剣を握りながら、腰を低くする。





「龍王技・アースガルド流・絶剣・羅刹鐘龍門」





 ムディナは強大な力と共に剣を振った。それは紫色の途轍もなく大きな斬撃であり、未だ数十匹は、いるであろう堕象へと向かう。




 リーダーである堕象は、その斬撃を認識する。しかしその斬撃の速度に対応する事が出来なかった。





 認識したのはいいが、その巨体故に回避する事が困難を極めていく。もう少し小さな存在に生まれていたなら、こんな想いはしなくて済んだのだろう。






 そんな何も言えない後悔と未練が、リーダーである堕象の脳裏を過っていく。走馬灯のような、今まで生きてきた事の情景を思い出すように、振り返っていく。





 こんな思い出に耽りながら、堕象の集団は全て終わりを迎えるように全員一気に横に真っ二つに両断されていった。堕象の質量のある巨体が、亡骸となり、草原の綺麗な草木達に落ちていく。それだけで景観を損ねるのは確実だろう。





 ムディナはもう一回、龍剣へと力を込め、振るった。それは変換の力であり、毒である堕象の血肉を、土や草木の栄養へと変わる、恵みの雨として変わる一撃だった。





 堕象であった亡骸は霧散して、光粒へと姿を変えて、降り注ぐ。草原地帯はそれを受け取り、また新たな芽吹きを生むであろう。

三百ノ十一話、最後まで読んでくれてありがとうございます



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