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八千職をマスターした凡人が異世界で生活しなくてはいけなくなりました・・・  作者: 秋紅
第二章 遺跡の町は浪漫に満ちてました・・・
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二十九話 冒険者ギルドは騒々しかった・・・

 俺達は宿屋で契約(パス)を取った後、冒険者ギルドに向かっていた。それにしても冒険者ギルドというか冒険者になるにはそれなりの装備とか必要なのではないのだろうか。

 装備無しだから試験資格はありませんみたいに言われそうだけど大丈夫なのかな。




 気になったので隣にいるアライに聞くことにしよう。




「ねぇ〜アライ」




 アライは「ん?」と言いながら、俺の方を向いてくれた。




「冒険者ギルドの試験って装備って必要かな?」




 俺の心配性を察したのか少しアライは考えながら答えた。




「基本的には必要ないよ。だって冒険者になる人の中には、装備が買えない貧しい人とかもいるからさ。そういう人材も鑑みて装備無しでも問題無し。剣とかの武具の無料の貸し出しとかもあるからそこら辺は心配ないよ」




 アライはそう説明した。どうやら俺の心配は杞憂だったようだ。




「ただ珍しい顔されるかもね。年齢的な面を考えてもさ」




 どういう意味!? それは! なんか怖いんだけど。




「いやアディ、童顔だからさ。舐められそうだなと」




 あ〜そういう意味ね。理解した。やはりこういう世界でも子供が危険を冒す職業に就くというのはあまり無い話なのだろうか。




「舐めされたら、そんときはそん時だな」




 俺はきっぱりとした顔をした。そもそも舐める人間は、観察力がそこまで高くないからだ。これは俺の持論だが、人の見た目だけでなく、仕草、行動、四肢の動きとあらゆるところを観察して初めて他人の実力を図れると思う。一眼見ただけで、それが分かるような人間なんてごく一部だ。しかしそういう人間は人の事を軽視するような輩は少ない。

 だから舐める人間は、程度がしれてるという事だ。




「アディ――――あまり暴動は起こさないでくれよ………………」




 アライはそう俺に対して懇願した。いつ俺が暴動を起こすと決めつけているんだ。俺は優しさを絵に描いたような善人の中の善人だぞ。そんな事する訳ないだろ。失礼な。




「暴動を起こすような人間に見える?」




 俺は首を傾げながら、試しにアライに質問した。

 そうしたら結果的にアライは「うん!」と強く頷いた。頷きやがった。




「いやいやいや俺は優しい人間だよ。アライくん…………」




 そもそも優しくなかったらアライとこういう風に関わらないようなきがするんだがな。




「優しい人間だとは私も思うよ。たださ、敵対者には容赦無いよね。アディは」




 だってお相手さんは俺の事を殺す気でいるのに、そっちは生きたいなんて虫が良い話だろう。だから徹底的に殺すしか選択肢が存在しない訳で。




「俺に…………俺たちに害意がある人間なんて許せる訳ないじゃん」




 つい俺は本音を口にしてしまった。俺は、俺の事を全面的に認めてくれたアライを何があろうと守る事にしていた。だってこんな汚く、穢れた俺の事を認めてついてきてくれるって言ってくれた。それが本当に嬉しかった。




 だからこそ俺はアライを二度と死なせない。苦しませない。辛い思い、苦しい思い、全部の負の思いを背負わせない。

 それが俺に出来るせめてものアライに対する恩返しだから。




「そういうところは嬉しいよ。私は――」




 アライは笑顔になった。その笑顔はとても幸せな笑みを浮かべていた。

 なんでかは俺には分からないが、アライは嬉々としてくれたなら俺も嬉しい気がするな。




「それにしてもまだ冒険者ギルドに着かないの?」




 そろそろ俺の脚が限界なんだが。なんで子供の足でここまで歩かないといけないんだ。




「そろそろ着くから頑張ろ」




 俺の悲痛の叫びにアライは励ましてくれた。俺の相棒は優しさを具現化したような人間だな、本当に。

 ただ側から見ると姉さんと弟が手を繋いで歩いているように感じるのだろうか。そういうのも別に悪くはないが。そもそも姉という存在は、俺の家族構成にはいなかったから。ただ親戚には姉のような人はいた気がする。




 冒険者ギルドにやっと着いた。そんなに歩いてないはずなのに妙に疲れが出てきてしまうな。こっからは気を引き締めないとな。




 その冒険者ギルドの建物は、とても他の建物よりはるかに立派で、だいたい四階建てくらいだろうか。木材建築でありながら、どんな構造で四階建てにしたのだろうか。すごく気になる所だが、建物の中から叫び声が聞こえた。




 それはとても騒々しく、賑やかな叫び声だった。こんな近所迷惑になりそうな叫び声出しているのに、苦情とか大丈夫なのだろうか。




「そんなに賑やかなの? 冒険者ギルドって」




 俺は気になり、そんな事をアライに話した。




「そうだよ。何処も似たようなものだよ。結局、冒険者って浪漫を求めると同時に荒くれ者、ならず者が多い職業だから、喧嘩だったり酒飲みだったりで自ずとこうなってしまうのよ」




 あ〜よくあるファンタジー系の作品とまんま一緒なのね。しかしそれにしてもいざ現実にあったりしたらこの騒ぎようのあまり俺の場合、イライラしてしまいそうだ。




「とりあえず中、入ってみるか」




 俺は木製の両扉の右側のドアノブを回して開けた。

 そこはテーブルが何十個もあるだろうか。建物広さ的にだいぶ大きいんだろうなと思っていたが、想像以上の広さだった。




 そしてそこには色々な装備を着ている冒険者がうようよ、うじゃうじゃと酒や料理を口に運びながら騒いでいた。




 俺はそれだけで感動してしまった。これが、こういうのが異世界ファンタジーだよ。本当に興奮が抑え切れないな。




 しかし俺が興奮しているとは裏腹に、一人のガタイのいい男性が俺に詰め寄ってきた。背には大きな剣を携えており、装備は鉄の鎧を身に纏っている眼帯をしているおっちゃんだった。しかしもう片方の眼は、俺の事を見つめながら舐めた眼をしていた。




 しかしそれだけで判断するのは先輩冒険者には失礼だなと思い黙ることにした。




「なんだお前らは、ここは子供の遊びじゃないぞ」




 ゲラゲラと笑いながら男は、俺達を軽視した。「はぁ〜」と俺は深い溜息を吐いてしまった。建物の中に入って早々、絡まれるとか碌な事にならないぞ。面倒くさい事この上ないな。




「綺麗な姉ちゃん連れか? 女はいいが、子供は帰ってろよ――な?」



 どうやら下衆中の下衆人間だろうか。だんだん俺の苛立ちが溜まってしまっているような気がするが、とりあえず落ち着こう。落ち着かないと、さっきあまり騒ぎを起こさないでねと言われたアライの言葉を忘れたか! 俺は!



 我慢だ、我慢しないとな。ひとまず先輩冒険者に挨拶しないとな。




「初めまして。アディ・ブレードって言います。いたらない自分でありますが、宜しくお願いします」




 俺はその下衆男に頭を下げた。社交辞令ってやつだ。




 しかし男はそれを無視して、俺は眼にしてはいけない行動を起こした。




 アライの左肩を男は手を置いた。その瞬間、俺の何かが弾け飛ぶ音が聞こえた。




 俺はいつの間にか男の右手を強く掴んで折ろうとしていた。男は膝を崩すように正座して、涙を流しながら俺に何か喋っている。




「おい………………糞男。俺の大事な人に、便所みてぇな手を置いてるんじゃねぇよ。その手、ぶち壊すぞ?」




 俺は怒気をはらんだ声を、その男に出した。その冷たい声に男は痛みと精神的な苦しみのあまりぐちゃぐちゃな顔をしていた。




「ごめん…………なさい………………。もう二度と……………………しません………………」




 痛みと苦しみのあまり途切れ途切れの惨めな声を男は出した。その間でも、男の手はミシミシと嫌な音を奏でていた。



「一回壁に寝て、反省してろ!」




 俺は回し蹴りをして、男の腹に直撃して建物の壁に激突した。そして男はあまりの衝撃に気を失った。男は壁にめり込んで一切動きはなくなった。




「テメェにはいい寝床だな」




 そんな捨て台詞を俺は吐いた。

二十九話、最後まで読んでくれてありがとうございます



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