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八千職をマスターした凡人が異世界で生活しなくてはいけなくなりました・・・  作者: 秋紅
第一章 異世界で生きなきゃいけなくなりました・・・
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二十四話 お世話になった村から旅立つようです・・・

何も変わらない朝、日差しが窓を突き破り、俺の眼を刺激して部屋を照らし始める。小鳥達の鳴き声が、まるで目覚ましかのように鳴き始める。それのおかげでより、朝が来たという事を実感させてくれるだろう。





 

 そんな事を思いつつ、俺は目が覚めた。今日でこの部屋から出ていくと考えると、少し名残惜しさを感じてしまう。と言っても二泊三日の普通の旅行のスパンだというのに、何でこんなに名残惜しいのだろうか。






 

 いや理由など分かっていた。簡単な話である。色々とあったからだ。アライと色々と話したり、村でもワイバーン襲撃やよく分からん組織との対決と、濃い生活なのは理解できた。諸々の問題が終わったら、また戻ってきてもいいかもしれないな。いつになるか分からないが。


 




 俺は体を起こして、隣にいるアライの体を揺すって起こそうとする。





 

「アライ、朝だよ!」


 




 俺は大きな声を出した。アライは「う〜」と唸りながら寝返りをする。いや、起きて欲しいんですが。





 

「起きてよ!?起きなきゃ、先に行ってしまうよ」


 




 それを聞いたアライは飛び起きる。どうやら置いていかれるのは、嫌なようだ。アライは眼を擦りながら、俺の顔を見た。


 




「おはよう。アディ」





 

 頬を赤くしているアライがそこにはいた。なんでかは俺には分からないが。






 ――――――――――――――――――――――







 食堂に行くと、ホライさんとメリさんがいた。そしてテーブルには朝食が準備されていた。どうやら事前にアライさんが、今日で村を出て行くと言っていたようだ。





 

「アディ君達、今日で旅立っちゃうのね」





 メリさんが寂しい表情で、俺たちを見た。まぁ〜娘さんを救ったりとかしたもんな。村の為にも、色々としたもんな。


 




 

「本当に、少し寂しくなるな」






 

 ホライさんは少し涙目になりながらそんな事を言った。相変わらず感情的な所は変わらんな。ナイフで俺の事を刺そうとしたのは、記憶に残ってなくてよかったと俺は安堵したが。


 




 そして朝食のメニューはパンに、豚の焼肉、キャベツの千切り、コンソメスープか。意外とこの世界のメニューって元いた世界とそんなに変わらないなと思う。何か理由でもあるのだろうか。





 

 そして二人は厨房に戻って行き、俺達はテーブルに座る。


 




「そういえば、その目的の村って名前とかあるの?」


 





 俺たちがいる今の村の名前は、ホライさんから聞いたが、エーアスト村というらしい。





 

「レストス村。由来は、遺跡があるかららしい。勇者発祥の地とも言われているよ」





 

 成る程ね。遺跡というのは凄く興味が出てくる。それに勇者という存在も気にはなる。勇者という存在が、どのような人だったのか、異世界人という可能性があるかもしれないから。






「勇者って言い伝えとかあるの?」







 勇者と言われているからには、何かしらの伝説とかあるだろう。

 アライは「う〜ん」と悩みながら、







「勇む者は、突如現れた。その者は、特異な力を持ち、魔物の王や邪龍を討伐しました。世界の危機が終わると同時に、その者は消えていなくなりました。ただ我々はこれからも語り継ごう。勇むものの伝説を。そんな感じ。なんか私が記憶に残っているのは、そんな一説くらい。なんか二十一節位あるらしいけど、私がよく聞いていたのは、それくらい」






 突如現れたという部分と特異な力という部分から考察出来るのが、やはり勇者=転移者という事だろう。魔物の王はよく分からんが、邪龍とは可能性があるのは、龍達と確執になった事件だろう。






「成程ね。勇者ねぇ〜。遺跡の方はなんか観光地とかになっているの?」







「遺跡の方は、よく冒険者達が入っているよ。というのも結構深いダンジョンらしくてA級の冒険者ですら深層まで行くと死ぬって言われている感じ」







 やはり異世界と言った感じか。冒険者という職業が蔓延っているのか。それに遺跡と書いて、ダンジョンか。それも興味深くある。う〜冒険心が凄く唆られるな。男の子なら誰にでもあるような冒険心が、蘇ってくるよ。






 うん、とりあえず思考を戻そう。冒険者という事は、階級制度があるという事は上位者ほどそれなりの冒険や遺跡を探索しておりこの世界についてもよく知っていると言った可能性が高い。伝手が出来るなら出来れば得たいと思う。






 それにその村のダンジョンは、勇者と関係があるという事は、転移者という情報が眠っているかもしれない。情報収集には、うってつけな村という訳か。






「深層というからには、地下に行く感じなの?」






 古びた塔とかそんな感じではない感じなのかな。






「う〜ん、厳密には違う感じかな」






 ん? 地下にも、上空にも行かないという事か。どういう事だ。







「その村のダンジョンは特殊で、異空間にダンジョンが勝手に形成されている感じかな。私は入った事がないから分からないけど、日に日にダンジョンの構造が変化しているらしいよ。だから地図も意味を無さないらしくて、だからそのダンジョンはだいぶ危険性が高くて、B級冒険者しか基本的に立ち入りを認めないとされているよ」







 構造が変化するって不思議のダンジョン形式かよ。いやそんな事より思ったのか、構造が変化し続けるという事と異空間に形成されているという点だ。大昔の人たちがどれ程の技術を保有していたという事が分かるな。それに転移についてもそれに関連した形で出てくるだろうか。







「ふ〜ん。それで、その村のダンジョンの発掘品とかはなんかあるの?」







「その村のダンジョンに関しては、全ての出土品は機密事項らしいくね。私もよく分からないのよ」







 出土品が秘密事項ね。なんか胡散臭くなってきたな。国ぐるみか、その冒険者の組織ぐるみか、よく知らないがなんかありそうだな。





 そんな会話をしながら、いつの間にか朝食を食べ終わった。うん、相変わらずマジでうまいな。ホライさんの料理は。気づいたら無くなっていたよ。







 そして俺達は村の入り口の前にいた。そこには大勢の村人達がいた。というのも、男のスキルにより悪意が増幅されていただけらしい。本来の村の人達がだいぶ優しかった。それはなりよりも俺が嬉しかった。本来ならもう少し村でゆっくりとして村人達全員と話したかったが、そういう訳にも行かなくなったからな。しょうがない。

 とりあえず、言うべきことは言おうか。







「それじゃ、村の皆さん、ありがとうございました」







 俺はそう深くお辞儀をした。実際、本当に色々とお世話になった気がする。特に、ホライさんご家族にはだが。








「いえいえ、こちらこそ村の危機を幾度も救ってくれてありがとうございます」






 俺の前にいたのが、この村の村長であり、宿屋の店主であるホライさんだった。ホライさんが何やら、手を差し出してきた。この世界でも握手という文化があるんだな。






 俺はその手を握り、握手した。その手は何故かとても優しく感じた。







「それじゃアディさんとアライさん、いやこの村の英雄の新しい旅路に祝福よ!?」








 村の全員が、大きな声で俺達を祝ってくれた。ていうかなんか聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ。英雄? 俺が? いやいやいや、確かに村の危機を二度救ったけど、あれは流れに身を任せただけだし、俺たちに害が及んでしまうからなだけで。否定したい。凄く否定したい。でも、否定なんて出来る空気じゃねぇしな。諦めよう。






 そう思いながら、俺は村の外へと一歩踏み出す。この先の異世界では何が待ち受けているか、その時の俺は知らないだろう。ただ現状、その時の俺でも結果論だが、分かる事があった。それはとてもシンプルで、とてつもなく簡単な答えだった。





俺はこの異世界で生きなきゃいけなくなったようだ・・・

二十四話最後まで読んでくれてありがとうございます



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