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八千職をマスターした凡人が異世界で生活しなくてはいけなくなりました・・・  作者: 秋紅
第六章 闘技大会の選手になってしまいました・・・
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二百ノ三十六話 神対無限・・・

「自らの運命すら、容易に変えれるのか。興味深いな」






 魔戦神の嬉々としている声が響き渡る。戦闘経験そのものが異次元であり、ムディナの経験では到底勝てるような算段が思いつかない。無限の力だって、容易に最適解を示して扱える程に器用に出来ていない。






 運命転換だって、何とか出来たに過ぎない。インフィニの無限の力の操作のアシストがあって、初めて成し得ているくらいだ。同じような状況下になったとしても、同様に回避する事が厳しいだろう。





 ムディナは冷や汗を浮かべながら、思案する。そんな中、インフィニは何か無限の本質を見抜いているのだろうか。鳴き声を上げて、ムディナに感覚を共有する。






「成る程、神を滅ぼすという考えそのものが間違っていたのか」






 ムディナは何処か納得するようにする。ムディナは何処かしら、魔戦神を滅ぼすという意識ばかりに眼が入っていた。しかしインフィニはそれとは明らかに違う提案を示していた。






 それを行う為には、インフィニが少しばかりアシストが出来なくなるらしい。俺は冷や汗を浮かべて、何とかインフィニがした感覚を思い浮かべながら、無限の力を行使することにした。





「我を滅ぼすのではないのか? 戦いとは、そのようなものであろうに。ヌシらはよく分からんな。しかしその闘志は消えていないから、未だ楽しめるな!?」





 ムディナは微かに無限の眼にて、魔戦神の未来の姿を予知する。それに沿うように魔戦神が動き、両手に剣を抱えて振るう。今度は同じくらいの剣のサイズであり、双剣のような形になる。






 一振りの神剣に、無限剣がぶつかるとそのまま神剣を上に上げる。神剣は魔戦神の手を離れて、空中に行く。それを気にせずに、もう片方の神剣がそのままムディナに襲い掛かる。






「神剣・アマデウス・レクリエイト」






 その剣は暴食神・アマデウスの力を形にした神剣であり、あらゆる力を食すという権能が付与されていた。その権能を限界突破させて、無限の力を吸収しようとしていた。






 それをムディナは未来予知にて分かっており、無限の力を変換させる。陽神龍の力を発揮する。それは害ある力と判断したものを焼き尽くす陽の力である。






「燃え上がれ!? 激陽よ!?」





 激しく無限の剣は燃え上がる。しかし不思議と熱くは感じなかった。聖なる焔は、温かみすら覚えるという話をムディナは陽神龍から聞いていたが、本当だったようである。それを懐かしく思いながら、暴食の権能を剣もろとも焼き尽くそうとする。






 剣は聖なる炎に、炭へと変質させられて燃え尽きていく。どうやら何とか防戦一方であるが、何とかなっていた。インフィニのアシスト無くとも、それくらいなら何とかなるようであった。





「まだ足掻くか。我が存在を確立してから、一番楽しい戦いだな!? ガハハハハハハハハ!?」





 魔戦神は高らかに笑い出す。あまりにも戦いが面白おかしいのだろう。無気力な戦い、定められている戦の神としての戦い、それが魔戦神ディアトロスとしての戦いだった。






 しかし今はそんな定めを打ち砕くようにして、目の前に同等以上に面白い戦人が存在している。それが楽しくならない方がおかしいのだろうとすら、考えていた。






「さぁ!? さぁ!! 今度は、どんなものを魅せてくれるんだ!!!」





 槍を手に持ち、突撃する。神速の突きによる攻撃は、未来予知をする余裕すらを打ち砕いた。ノーモーションによる一撃など、どんな戦闘経験を積めば、出来るのか意味が分からなかった。






 しかし何とか運命転換を行い、致命傷を避けるようにする。その神速の槍は、脇腹を掠めていく。その傷口から、だんだんと滝のように血が流れ出てくる。






 回復しようとするが、その傷が癒えることはなかった。どうやら何かしらの概念が、その神槍には籠められているのだろうという予測が浮かび上がる。





「それは無駄だ。その槍は、滅神蛇龍の牙にとって創り出された代物よ。神を容易に滅ぼす毒が仕込まれている」






 それは神話にしか登場しない筈の、蛇龍という特殊な世界に害する龍の話だった。その牙で創り出された槍は、滅びるまで消えぬ神話的概念猛毒が仕込まれているという話だ。






 そんな神槍に俺は脇腹を掠めたのか。傷を付けられただけでもやばいのに、俺の危機感も鈍ったものだなとムディナは自笑してしまう。槍の危険性を予感も出来ない自分は、まだまだだなと笑ってしまっていた。






「あはは、やっぱり自分はまだまだだな」






 おかし過ぎて涙が溢れ出てくる。痛みによるものではなく、じわじわと体を蝕んでいく感覚、そんなものは関係なかった。ただ自分はまだまだの凡人なんだなという話が、笑ってしまっていた。





 恐らく龍神達はそのような危機感にも、対応する事が出来るだろう。目指した先に対しての、戦闘経験値の段違いが俺の負傷を生んでいると思うと、それはそれで清々しい思いになっている。






「何を笑っている。そのままでは即座に滅んでしまうぞ」






 魔戦神はそんな風に、名残惜しさに言った。ここまで高揚感を覚えた相手は、ムディナが初めてだからだ。だからこそこんなに良い戦いが、もう少しで終わる事を危惧していた。






 ムディナはそんな事を気にせずに、無限剣を強く握り締める。そして息を強く吸い込む。明らかに雰囲気が変わったムディナがそこにいて、魔戦神は警戒を強めた。






 逆境になる程に、ムディナは段々と燃え上がる。意識が、集中力が格段に上がり続けていく。それは死ぬを諦めたからに他ならない。滅びる事を受け入れるのを辞めたからに他ならない。





 そしてムディナ自身がまだまだだと自覚したからだ。だからこそムディナの意識は、彼方にまで及んでいく。集中力というものが、完全に極限集中領域、それすなわちゾーンへと変わっていく。






 そこに最早言葉も、意識も、時間も、空間も、関係がなかった。ムディナの無限剣は、魔戦神にいつの間にか届いていた。魔戦神すら何が起こったか理解する事が出来ずに、ただ貫かれた自身の存在の源を見る。





 そこにあるのは、神核と呼ばれる神が神たらしめる存在そのものの概念が集約されていた。しかしそれを無限剣で貫かれる事などなかった。ただそこにあるという事象があるだけで、それを貫けられる事は今のムディナには出来なかった。





 インフィニが何かを準備し終わったようであり、鳴き声となる合図を放った。それにムディナは好奇を見たのか、無限の力を発動する。







「解析完了………………術式構築成功………………術式名神核吸収・発動開始」






 無限の力と可能性により、術式が構築された。インフィニがその膨大過ぎる術式と無限の力をアシストする事でこの術式は発動出来た。それは神核吸収。単純にして明確に強すぎるその術式をインフィニと共に編み出した。





 神核を滅ぼせる事が出来ないと判断したインフィニとムディナは吸収する事を今度は考えた。概念的な強大な存在である魔戦神は、戦という概念の集合体である。だからこそ簡単にそれは打ち消す事が出来ずに、そんな力をムディナは今は有してはいなかった。






 だからこそ概念的な神核を力として定義して、吸収する事をインフィニは本能的に考察した。魔戦神の神核を事細かに解析する事で、吸収する事が可能になった。






 それを理解しているのだろうか。魔戦神ディアトロスは、自らが滅びるのだと理解する。







「あぁ…………やっと我は『神』としての終える事が出来るのか。そうだな………………今度は自由の聞く空飛べる鳥になりたいかな。我は」






 そんな和かな清々しい笑顔を浮かべて、魔戦神はエネルギーとして無限剣に取り込まれていった。

二百ノ三十六話、最後まで読んでくれてありがとうございます



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