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八千職をマスターした凡人が異世界で生活しなくてはいけなくなりました・・・  作者: 秋紅
第六章 闘技大会の選手になってしまいました・・・
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二百ノ二話 悪魔神・・・

グレイは力尽きたかのように椅子に座りながら、虚な眼をしていた。余程体力を消耗したのだろうと闇神龍様は、即座に察する事が出来る。






 グレイの体力がある程度回復するまで、この研究室の一室で待機しているといった事である。その間に闇神龍様は出来るだけ、この一室で得られるような情報を探索していた。





 本棚には悪魔に関する伝承や記述されている内容ばっかりであった。そしてその中には悪魔教本と呼ばれるもののあった。これは悪魔信教が我々からすると邪典であるが、彼らからすると聖典のようなものである。






 そこには悪魔界と呼ばれるこことは違う悪魔が棲まう世界についての記述がされている。悪魔界という悪しか存在しない暗黒の空間で、日々悪魔達は戦いあったりなどしているらしい。想像し難いような世界の情景を、この悪魔教本は記されているのだ。悪魔に魅入られながら、悪魔に取り憑かれる依代のような役目も、この悪魔教本は成しているのだ。






 普通の人間が脚を踏み入れれば、一度は発狂し、二度目は思考を放棄して、三度目は自我を絶ち、四度目は悪魔に魅入られていく。そのような文章が悪魔教本の冒頭に記されていた。それが四度の悪として定義されている。






 それはつまり悪魔界に行くと、必ずといっていい程に悪魔に魅入られていくといった話である。闇神龍様からすると、馬鹿馬鹿しいにも程があるといった事であった。





 そして闇神龍様が次に調べたのは、悪魔達が収容されている牢屋である。ずっと気になっていた事であるが、悪魔達が異様に元気がないのだ。普通なら何も関係無しに、人を食い散らかそうと襲いかかってくるものものなのだが、悪魔達はグレイや闇神龍達を凝視するだけで、立ち上がったり、襲い掛かろうと牢屋の鉄格子に手を掛けたりしない。






 それが闇神龍様にとっては不思議でならなかった。もしかすると悪魔の抑制を行なっているのだろうかと考えて、牢屋を観察してみる。そうすると牢屋から、魔素が吸い出されているのが分かる。この牢屋は一種の魔素吸収装置であり、ある程度の魔素を吸収して、中にいる生物を弱らせる性質があるようだった。





 だからこそ悪魔達は元気が無く、立つ力も存在していない訳であった。ただこちらを美味しそうに凝視しておきながら、立つ力がそこに無いというのはそれはそれで悲観的になってしまう。






 しかしその悪魔達を今解き放ったりなどすると、グレイに危険が及んでしまう可能性がある為に、闇神龍様は手を付けない事にした。






 一番の気になる問題点である床全体にある紫色の魔法陣である。これは何かを示しているようであるが、闇神龍様ですら分からない代物だった。魔法式や魔法陣の形状、その他諸々見た事すらないようなものであった。恐らくオリジナルの魔術陣であるだろうという推測がある。





 しかしそれが何の魔術陣であるのか、大魔術の可能性だってここに存在する。そしてそれは下手に手を出せなかった。下手に手を出して、もし誤って作動させてしまう可能性も大いにある為に手を出さない選択肢を取ったのだった。





 机があり、どうやら研究日誌のようなものがあった。そこには悪魔化した子供達のそれぞれの経過観察のような内容がそこにあった。それにはそれぞれ名前で区別されており、順番通りに並んでいた。





 闇神龍様はその日誌の一つを手に取り、読み始める。






『十月四日、ついにリードを悪魔化させる事にした。無垢なる魂が、純粋な悪に染まる姿を眺められるのはいいものだ。泣き叫ぶ姿なんか、なんて愛おしいだろうか』






 そんな気持ち悪いような吐き気を催す邪悪な経過観察日誌だった。それから暫くは同様の内容が続くが、最後だけ違っていた。





『十二月十五日、リードが力尽きるように消え去った。どうやら悪魔化に変質した魂が、耐えきれなかったようだ。だから最後には何の言葉も発さずに魔素へと変わり、霧散していく。恐らく悪魔神様の身元へと向かわれた事だろう。私を褒め称えてください。悪魔神様、貴方の眷属は着々と頑張っておりますので』






 どうやら何もかも無条件に悪魔化出来る訳ではないようだ。魂の変質に耐えれるような資質を持つものだけが、悪魔化出来るらしい。ただこの牢屋にいる悪魔達を見る限り、それなりに成功率が高いような気がする。






 恐らくであるが、余程のことで無い限りは成功すると見ていいだろうか。それにしてもその最後のページには涙の跡のようなものがあり、どうやら消えた事で涙が出たのだろう。あの男の狂気的な愛という現象には、やはり理解すらできなかった。






 そしてある程度調べ物が終わり、グレイが背伸びしながら立ち上がる。グレイの体力は全開まで回復しており、またそれなりに戦闘が出来るような体勢が整っていた。






「待たせてしまいすみません」





 グレイが、闇神龍様に頭を下げる。待たせたと言っても、数分くらいのほんの短い時間でしか休んでいないのだ。やはりグレイの治癒力は、異次元であり、常軌を逸しているようなものであった。






「昔から回復は速い方なのか?」






 闇神龍様は、何かを探りたいのかグレイに質問した。確かに先祖返りであり、叛逆の力を行使出来るような、そんな逸材のグレイであるが、狼人族も、その先祖である幻狼族も、確かに治癒力が高い種族であるのは闇神龍様も知っている事柄であるが、数分程度で体力が全開するようなそんな異次元じみた回復力はしていなかった。






「そうですね…………確かに集落に居た時に狩りで、両手足完全に複雑骨折してしまいましてね。それが三日で治った時は同じ集落の人達から、驚かれましたね」





 普通なら治りようの無いそうな大怪我である。狼人族とはいえ、怪我にも限度がある。治癒力には限度がある。普通の狼人族ならそのような怪我をした場合、治る見込みは薄いだろう。しかしそれを三日で完全回復したグレイの治癒力は、おかしいとしか言いようがなかった。






「それよりここを脱出しましょうか。キミが悪くて、あまり居たくないんですよね」





 確かにここの雰囲気は、異質過ぎてグレイの機敏な感覚には堪えるものがあろうか。そう思いながら、二人はこの研究室を後にしようとした。






 しかし二人に突如悪寒が、脚から脳に電流のように迸る、それはどんよりとした暗闇の異質さと言えるだろうか。この研究室の一室がまるで心臓のように一定のリズムで振動する。それはこの一室がまるで生物であるかのような錯覚を覚え始める。





 そして床に記されていた魔術陣が黒く変色して、黒い輝きを帯び始める。そして牢屋にいた悪魔達は、それに呼応するように霧散し、魔術陣が収縮するように一箇所に集中した。そこは手術台のような場所であり、そして魔術陣は姿を消した。





 二人はそれを眼にしてしまう。それは生物のようでありながら、悪魔のような異質さがある。そんな奇妙でありながら、一番特出するべき事が、未成熟のような赤ちゃんのようなものが浮いていた。眼が飛び出るかのようにギョロリとしており、それがより異質さを際立たせている。





 肌の方は灰色のような肌であり、額には角のようなものが生えている。グレイの感覚が、その存在に対して警鐘を鳴らしている。これは確実にやばい何かであるのが、直感的に理解出来てしまう。





 そして闇神龍様はというと、その存在に対して、冷や汗を浮かべてしまう。それはこの世界に存在していけない存在が一柱であり、この世が終わりを告げるだろう存在であった。






「あれは………………悪魔神(デーモン・ゴッズ)





 それは悪魔界を創り出した三柱が一柱である悪魔神が、この世界に現界したという事実だった。

二百ノニ話、最後まで読んでくれてありがとうございます



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