十九話 悲しき芽を摘み取るようです・・・
「何を言っているんですか!? 意味が分かりませんよ!?」
悪役組織の男は、動揺を隠しきれないようだった。実際俺も何を言っていたのかさっぱりだが、まぁ〜なんでもいいだろう。事実を言っただけだし。
「あんたに教えるわけないだろ。とりあえず今は、あんたを潰す事が先決だ」
俺は神級スキル陽炎の宴を使った。家周辺は獄炎に包まれた。それに男は身を焼かれる事はなかった。どうやら火炎耐性は身につけているようだ。
「やっぱりこんな教典を使うより、自らの体を、自らのスキルを使った方が早いな!?」
そう言いながら、男は本を投げて空間に入れた。いいな。あんなスキルなかったぞ。
「驚天動地・霹天謳歌」
男の体は、雷と炎に身を焼かれる。しかし男の体は平然としていた。むしろより身体能力が倍化しているような気がした。
「それって唯一級スキルか。あんた、本当に何者だ?」
そのスキルは、全能力完全倍化という能力。韋駄天の理は、速さの限界突破だが、そのスキルの場合は、限界向上というもの。つまり全ステータスの限界値999を超えて2000にまで到達するというもの。ただデメリットとしては、時間経過で向上するというものと、それ以外のスキルは使用不可になるというもの。ただそれとしても、大きなアドバンテージとなり得るスキル。
そして男は、瞬時に俺に近づいた。俺はそれに反応は出来ず、男に殴られる結果だけになった。それに無数に。完璧にミンチになる勢いだが、HPストックが、十本失っただけのようだ。まだ残り、約二百本は残っている。
「お前、本当に人間か?」
男は冷や汗を掻いていたようだ。確かに死ぬ程痛いけど。痛いだけだしな。ただ十本失われるのは、俺も男に相応の対応をしなきゃいけないな。
「唯一級スキル・藍填愛舞・奏魔」
俺の右手が蒼く染まり始める。それと同時に水のようなものが周りを漂い始めていた。それは魚のような形で、まるで踊っているかのような感じだった。
そして俺は手を男の方に掲げた。その時、魚が巨大化してそれはまるで、大きな波のようになり男に襲う。男はスキルによる身体能力で、上空へと避ける。そして俺に向かって、拳を振るう。
しかし俺はそのまま右手をその拳に向かって掲げたままだった。その拳が俺には当たらなかった。だって代わりに、男の方が吹き飛んでしまった。
「なっ!? どういう事ですか!?」
男はそう言いながら、結界の壁に激突した。
これはよく防御系スキルの中で、一番と名高いスキルだ。
効果は、威力の4〜5倍の威力で反射して、それと属性や魔法を吸収して右手に集束して、その威力の数倍で放つ事が可能。要するにチートスキルである。しかしその代わり、これにもデメリットがあり力のパラメーターが半減するというもの。ただそれに関しては、そこまでデメリットにならないだろう。あとは一週間ほど使えなくなるってだけか。
「合技スキル・海王の波翔」
先程より大きな津波が男を襲った。男に直撃するが、傷一つつかなかった。防御力が群を抜いているのだろう。そして俺が指を鳴らすと、さっきの波から三叉槍が複数形成され、男に向かう。しかし男の素早さが、限界を超えており俺に瞬時に近づく。
やっぱりこの世界で、スキルの扱いの練度が桁違いだな。戦闘でも俺の方が一歩遅れているような気がするな。
「雷霆拳・獄雷」
男は拳を引き、正拳突きの要領で、放たれる。その拳には、雷を纏っており俺に拳が向かった。直撃する事はなく、また男は吹き飛ばされた。
「成程。空間全体にかかっているバリアか。すごく好きになれそうです」
そして俺の後方に、いつの間にかいた。俺が後ろを振り向こうとしたが、遅くて雷の拳が直撃した。やはりこのスキルは後方には、効果がないようだ。
しかしこれは予想通りであり、HPのストックが削られたが俺の右手が、雷を纏って龍のような形が巻き付いている。
これで雷の属性が付与されて、雷系のスキルが数倍強化される。
「超級スキル・雷電八卦」
俺の右手を地面に添えると、魔法陣のようなものが形成される。それは電気を帯びており、触れるだけで危ないのは分かった。しかし男は、躊躇なく空中を蹴り、俺に近づいた。地面に触れないなら関係ないだろとでも考えたのだろうが、それは間違いだよ。
電気で形成された棘が、男を貫いた。しかし男は、それをものともせずに普通に距離を取った。やはりその防御力を突破するダメージを与えないといけないようだ。
男の体はよりバチバチと電気が迸る。どうやらここからが本番のようだ。
雷が鳴った。そう俺は思おうとしただけだった。その瞬間、俺の体は吹き飛ばされた。
流石にこれ以上、HPのストックを削るのは、不味いな。早くそろそろ決着をつけないとな。どうするべきか悩む。手段はない訳ではないが、使いたくないな。
「まだ君は、死なないのかね。本当にうざいったら。ないですね。好きじゃないですね」
男は続け様に、俺に連打するが、それと立て続けに男にダメージが反射していく。しかし持ち前のHPと防御力でなんとかダメージをカットしているんだろうか。
そして男が、流石に痺れを切らしたのか拳に力を溜めていた。どうやらこれで決める気のようだ。雷がものすごく拳に集中していく。それは最早、拳が雷雲のようになっている。それに炎が渦を巻くように、拳に纏わせる。
「灼天・万雷焔龍神」
それの拳は放たれた。雷が、焔が、龍と共に俺に向かう。それは俺の体格より数百倍も大きかった。これは流石の俺もやばいな。死にそうな気がするが、ギリギリはストックは持つだろう。
俺はその龍が直撃した。痛いってレベルじゃないけど、死ななきゃ安い。それに意外と、ストックが百は残った。
そして男が、倒れてしまった。ダメージを受けすぎてというわけではなかった。
「破滅の妄執の反撃」
それがそう呟くと、男が血を吹き出して倒れてしまった。これは簡単に言うと、自身が受けたダメージを蓄積させて相手に返すというスキルだ。
それに関しては、防御力などは関係ない。あくまでダメージを返すというものだからだ。
男は地面に倒れて起き上がらないようだった。とりあえず、より強力な拘束系スキルを使わないといけないな。
「神秘級スキル・精魔の輝石」
男の両手を分厚い綺麗な宝石のようなものが生成されて拘束する。両足も同様になる。これは拘束する相手のスキル、パラメーターを極限まで減少させて完璧に拘束させるもの。
流石にこれで逃げられないだろう。むしろこれで逃げられたら、最早打つ手はないから。本当に辞めてください。
さてと考察しよう。こいつがスキルを扱えるという事は、PCの可能性が高い。実際この世界の人達は、スキルなんて概念そのものがないようだ。つまり使わない、もしくは知らないというのが妥当だろう。そしたらこいつは、これと俺と同じ境遇だろう。転移者として。しかし問題が、いつ転移したという事だ。スキルの熟練度を見る限り、長年使っているという事だ。そうすると何年、何十年前かという年単位だと思われる。
しかしこいつは何かしらの目的があったようだ。俺を殺す事は、目的の一つで、スキルを奪取するのが本来の目的か。しかしそれにしたところで、殺してまでスキルを得る目的は。なかなか難しいな。組織とやらも、この男の目的と一緒だろう。
とりあえずさっきと同じで、この男に問いたださなきゃいけない。面倒臭いけど。
しかし村の人達を操ったのは、万死に値するからな。多分、記憶を変換したからあ〜なったのというのが適切だろう。つまり村長も俺と会う前から、スキルを行使されて記憶を変えられたというわけかな。
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