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八千職をマスターした凡人が異世界で生活しなくてはいけなくなりました・・・  作者: 秋紅
第一章 異世界で生きなきゃいけなくなりました・・・
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十七話 リーダーワイバーン君をなんとか説得しました・・・

そして俺は、リーダーワイバーンの近くまで降りて、目覚めるまで地面に座っていた。







 数分後、ワイバーンは眼を覚ました。意外と大人しく座っていた。







 俺の予想では、目覚めた瞬間、また襲われるんじゃないかと考えていたが、杞憂だったようだ。






 そしてそのワイバーンは俺に話しかけてきた。






「早く、敗北者の首を切れ!」






 だから何処のジャポンの武士ですか。残念ながら、俺には武士の心得もなければ、命を奪う事なんてしないよ。






「なんでそんな、死にたいの? お前?」





 一回敗北したからってそんなに死なせろ死なせろはおかしい気がする。






「我ら竜種が、下等な人間に負けたのは我が万死に値する存在だからだ」





少し理解に苦しむような発言だった。要するに、竜種は生物上位者なのに、自分が人間如きに負けたのは、死ぬほど未熟だからだという事だろうか。なんか面倒臭い性格してるなという風に思ったが、こんな性格で、責任感が強いからこそ、リーダーワイバーンに抜擢されたのだろうか。






「我らの悲願が、果たされないなら死んだ方がマシだ!!」






 また我らの悲願とか言っているよ。そんなに叶えたい願いか、目的があるのだろう。





「どうせ、龍玉だろ?」






 俺は呆れたように言った。それを言った瞬間、ワイバーンの口が開いたまま動かなくなった。酷く動揺しているようだ。






「なっなっなぜそれを!?」





 そのテンパリ様は俺の推測は当たりだったようだ。結局、彼らは龍玉を回収しに来たのだろう。






「大丈夫だ。それがお前らを殺さない理由だ」






「どういう事だ?」






 そもそもワイバーンやドラゴンは、気高い種族であるとされているらしい。つまり余程の事がなければ、そもそも無闇に人の命や命そのものを奪ったりしないという事らしい。






 つまり彼らにとって、その龍玉とは自らの命より気高さより大事な代物という訳だ。






「あんたらは、多分大昔、人に騙されて龍玉を取られたんだろ?」






 だからこそあんなにも人を信用していない事にも説明がつく。





 俺の話もいくら言っても、耳を傾けないのはそういう事なのだろう。






 それを聞いたワイバーンはもっと驚愕した表情を見せた。






「それだったら、俺が代わりに回収してやるよ。だから今は、撤退してくれ」






「信用など、できるか!? お前らはいつもいつもそうやって、生物を騙す悪種だ。信用なぞするか」





 ワイバーンは自らの翼をバタバタを大きく羽ばたせながら、怒りを露わにした。






「これは俺の推測だけど、お前らの竜種の王のなれ果てが、龍玉だろ?」





 それは完全に俺の憶測でしかなかった。ただ村レベルの巨大な大きさの、それでいてかけらだけでも、数百年は魔物から守っていたという事は、つまりそれほど巨大で濃密なエネルギー体なのだろう。






 そして俺は村長に、かけらを見せてもらったがそれは純然的な生命エネルギー、つまりHP(ヒットポイント)だった。

今は残り少ないが、つまりあれは龍のなれの果てが玉になった、もしくは玉を形成したと言った感じだ。







 それにそんな大きさという事は、よほど強力な龍だという事の証明でもあった。つまり考えられるのが、龍や竜の親玉や王様みたいな存在が、あの龍玉なのだろうと俺は推測した。







「そうだ。我らの王は…………。人の友になり、我らもその友のことは慕ってた。しかしある時、友は豹変して、我らを襲い、それでいて王を殺して龍玉を取り出されたのだ。我等にとって、龍玉とは命そのもの。龍種が生命活動を停止しても、龍玉がある存在なら、肉体を再形成する事が可能なのだ。だからあの優しき、我等龍の王を蘇らす為にも、回収せねばならん。それが出来ずというなら、死んでも構わない」






 ワイバーンは一滴、涙を垂らしてしまった、気高きワイバーンが、他者に涙を見せたのはどういう意図があったのだろうか、俺には分からなかった。






 ただそれほど友に裏切られたというのは、ショックだったのだろうとは分かる。






「俺を信用してくれなくても構わない。ただ待ってて欲しい。待っててくれたら、俺はその龍玉を全部回収してやる。そもそも人に裏切られたというなら、それは今の人が精算しなきゃいけない問題だ。だからこそ今は、少し待っててくれ。期限が過ぎたら、俺はなんもせずに国が滅びる事を受け入れる」






 俺は熱心に、そのワイバーンにお願いした。そもそもワイバーン達を殺さなかったのは、そもそも彼ら竜種が、侵攻した理由が、人間の悪意によるものだったからだ。






 なら俺はそこまで非常にも、傲慢な人間にもなれなかった。






 だってそれでワイバーンを殺してしまったら、俺はもう二度と彼らに顔を向ける事など俺には出来ないと思う。







「だから待っててくれ。お願いします」






 俺は地面に、地に頭を擦り付けながら土下座した。この世界に、土下座という文化があるか定かではないが、なんなとくでも誠意は伝わる事を祈る。






 そして地に頭を擦り付けた事で、髪に土がこびりつく。そして服も土だからになるが、今はそんな事を気にしている暇なんてない。






 だって俺は、もう二度と、あんな悲しいのを見たくなんてないから。





 「それはなんだ?」






 ワイバーンはただただあり得ないという風に驚いていた。





「お前は、我等より数十倍は強いんだろ? なのに、なんで頭を下げている?」





 ワイバーンや竜種そのものの常識に、この行動は当てはまらなかったのだろう。






 あんなにも強い存在が、頭を下げている理由など見当たらなかった。






「これは我々、人種が負うべき責だ。だからこそもう一度、お願いする。待っていてくれ」






 ワイバーンはただただ俺を凝視しながら考えていた。

「そこまでするなら、少しだけ待っててやる。五年だ。五年を過ぎた時、お主らの国は滅びるとしれ」






 願いを受け入れてくれた事に俺は安堵した。普通なら、無視しても仕方ないなと思っていたところだった。






「名を聞いてもいいか?」






 そのリーダーのワイバーンは俺に興味が出てきたのだろう。






「アディ・ブレードだ。あんたは?」





「アディか。我の名は、誇り高き竜種の血族であるニールだ」





 それは少しでも、まだ歩み寄りたいと言ったワイバーンが起こした奇跡とも言うべき会話だった。






 人によって同胞を失い、それでいて優しく、慕われていた王の成れの果てを何も知らずに利用されているなんて事になったら俺だったら耐えれないだろう。許せなくなるだろう。






 しかしワイバーンは、まだ微かでも信じたい、まだあの優しき存在だと、生物だと信じたいからこそワイバーンは名を聞いてきた。





「アディか。お主の名は、一生忘れないと誓おう。強者でありながら、それにあやかる事もなく、生きている其方のことを、魂そのもので、刻み込み忘却せずにいておこう」






「俺も、あんたの名前は一生、生きるうちは覚えておくよ。心優しきワイバーンのリーダーさんよ」






 そしてリーダーのワイバーンは、羽を大きく広げて飛びたつ。






 その時、風圧で木々が、思いっきり揺れる。そして結構なスピードを出しながら、他の部下のワイバーンと共に飛び去っていった。






 それにしても龍玉を、全部回収する事など出来るのだろうかと少し不安になってしまった、






 話を聞く限り、今のこの国では村の殆どは龍玉による魔物避けの恩恵を受けているらしい。






 つまりそれに変わる魔物避けを、考えないといけないと言う事でもいるし、タイムリミットはあと五年という事もあり、どうすればいいかなと苦悩してしまう自分がいた。





 本当に………………なんで………………あんな提案したんだろうね。自分。






 勢い任せに言ったのは間違いだったな。仕方ないと諦める事にしよう。うん。





 俺はそう冷や汗を掻きながら、村に戻るのであった。

十七話を最後まで読んでくれてありがとうございます



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