十五話 ワイバーンくんは喋る事が出来るようです・・・
俺達は朝食を終えた後、外にて待機していた。そして数時間が経ち、アライの予想通りに、ワイバーンの集団が、この村に向かっていた。
そのワイバーンの特徴は、よく元いた世界でも聞いていた通り、大きな翼を携えて、首長竜のような大きな首を持った幻想的な竜であった。
そしてワイバーンの先頭には、他のワイバーンより体格が二倍程あり、力も他のワイバーンより数倍程高いような気がした。
どうやら先頭にいるワイバーンが、この集団の指揮兼親玉と言ったところか。それに多分であるが、その先頭にいる奴は中級のワイバーンであろうか。
ならば少し村が危ないかもしれないな。
「アライ――あの先頭にいるワイバーンって中級の奴なの?」
俺は隣にいるアライに疑問になったので、質問した。
「そうだね。中級のワイバーンが出張るって相当この龍玉って大事な物なのかな?」
どうやら中級のワイバーンが、飛び出すと言うのは稀のようだ。
「基本的に中級は、龍甲山の守護を任される事が多いらしくてね。だから余計龍甲山に近づけない訳。それが飛んで向かっているというのは、余程おかしいのよ」
アライが立て続けに説明してくれた。要するに珍しい現象に遭遇したという事なのか。下級の集団だと思っていたという事は、本当に人生に一度あるかないかのレベルなのかもしれないな。
とりあえず村に結界を張る事にするか。
「合技スキル・天翔る守護結界」
俺が天に手を翳すと、村周辺に薄い膜のドーム状の壁が形成させる。そしてそれをよく見ると、星々が飛んでいるかのような絵柄があった。
「アディ――これが結界?」
「そうだね。星の守りってスキルと天の盾って英雄級スキルが主軸の合技スキルだよ」
星の守りというのは、全属性を半分以上減らすスキルだ。そして天の盾は、物理攻撃や属性攻撃を八割減らすスキルだ。それに属性攻撃の場合、その攻撃の属性が基準を下回っている場合、反射される。
ワイバーンの対処には、打ってつけのスキルだ。
「スキルって?」
アライが疑問系になりながら、俺に質問した。
「.........ん?」
「.........へ?」
「いや――だから、スキルってなんなの?」
まさかスキルという概念は、この世界にないのか。
いや確かに俺はなんで、この世界にスキルという概念があると思っていたんだ。普通に俺がスキルを平然と使えるモンだから、この世界でのルールではスキルという概念が存在しているものであると思っていた。
しかし考えてみれば、スキルなんてゲームの世界じゃあるまいし………………。
いやいやいや転生ものとか転移ものってスキルってちゃんとあるじゃん!?なんでこの世界には、スキルってないの!テンプレから完全に外れているじゃん!?
「ごめん――後で説明する」
決して説明するのが、面倒くさいとかそんな理由では断じてない。あくまで今は、ワイバーンの集団に警戒しないといけないからであるからだ。
ワイバーンの集団を叩き潰せば、大人しく帰宅してくれる事だろう。
「アライはここにいてくれ。飛行」
アライはムスッとした顔をしていたが、なんとか納得したようだ。どうやら自分も行きたかったのかな。
まぁ〜今回は仕方ない事だ。ワイバーンの力が未知数な以上、対処出来る範囲の人間が俺だけだからね。
そして俺は空を飛び、ワイバーンの高度まで上昇する。それにしても空を飛ぶ感覚って気持ちいいな。主に風が心地よい。しかし改めて思ったのが、空を飛ぶといういかにも難しそうな事を平然と、まるで体に事前に染み付いているというこの現象はなんなんだろうか。
スキルを使う時、以下にも最初から分かっていたかのような動きが出来る。無理矢理体が動かしている訳でもなく、動かされている訳でも無く、ただただこういう動きだと、直感的に動けている。
今回の飛行のスキルも俺はなんも難しくなく、こう動けば飛べるんだと直感的に理解できる。顔が上に向きながら、体を垂直に保つというのが理解出来ていた。
なかなかスキルという概念について興味深い内容であり、調査したい所だが、後できちんと把握することにしよう。
そして俺はワイバーンの高度まで上昇して、ワイバーンの集団に向き合う。
そして中級の先頭ワイバーンがそれに気がついた瞬間、ブレスが放たれる。そのブレスは口の中で凝縮され、一気にビームのように放たれる。
いやいや人を見た瞬間、ブレス吐くとか酷いな……。本当に。余程人間様がお嫌いと見た。
「あらゆる世界への障壁」
俺は念には念を押して、神級スキルを発動した。これは簡単に言うと、全属性全カットのスキルである。要するに属性攻撃を完全無効化にするキチガイなスキルだ。ただデメリットとして普通の無属性物理攻撃を1.2倍のダメージになってしまう欠点は存在してる。
しかしそれでも属性攻撃を無効化出来るというのは大きなメリットだから俺はよく使っている。しかし消費MPも馬鹿にはならない。
ストックが三本消失した。後十二本分はまだある。HPの方はまだ十四本は残っている。しかしそれが全部無くなった瞬間、俺は死んでしまうだろう。
なるべく節約しなければいけない。
そしてブレスが俺に直撃した。そしてそのブレスは直撃した瞬間、爆発して獄炎を周りに地面に撒き散らす。
森が燃えるかと思ったが、燃える前にどうにか燃え尽きた。
そしてワイバーンは俺が死んだと思い、村へと飛行を続けようと前に進む。
しかし獄炎が晴れると、俺の姿を再度確認する。ありえないような驚愕した顔をしながら、ワイバーンはまたブレスを放つ。今度は、子分の下級ワイバーンのブレスもセットで放たれる。
氷や水、雷、風といったあらゆる属性のブレスが俺に直撃する。
どうやら火の属性を完全に消したからだと思ったらしい。余程ワイバーンは知能が高いのだろう。
さすが竜種と言った所なのだろうと俺は再認識する。
しかし俺は無傷だった。あらゆる属性攻撃は、俺には無意味だよ。本当に。
「お主――何者だ……」
何処からか声が聞こえてきた。いやいやいや流石に竜種といえど喋る訳が……。
俺はそう思い、周辺をキョロキョロと見渡す。
「だから――お主は何者ぞ!」
うん。先頭のワイバーンくんが普通に口を開けて喋っておりました。
それもだいぶ偉そうに話していた。竜種といえど、あんまり偉そうにしないでもらえますかね。うざいので。
確かに生態ピラミッド的には、頂点に位置しそうな実力はあるとは思うけどさ。だからって強さに胡座かいてたら痛い眼見ますよ!本当に。
「話す事が出来るなら、なんで対話をしようとしなかった……」
言葉が分かるほど知能があるのに、俺を見た瞬間、問答無用でブレス吐くとか頭おかしいと思うんですけど!
対話してからでも充分遅くない筈なのに。
「人間の言葉なぞ、信用に値しないからだ……」
どうやらやはり、人間と何か過去にありそれでここまで疑心暗鬼であり、人間を軽視しているのだろう。
確かに何かあるかは気になるが、今はそんな事を考えている暇などない。
「俺に攻撃したってことは、死んでも文句無いよな? お前ら――それに攻撃した後に話すだけの余裕があるとは、舐めてるな」
俺の考えではあるが、俺に実害があるという事は、この分覚悟を持って俺に実害を与えているというのが俺の論理だ。
つまりワイバーン達が、攻撃したという事は、攻撃されても覚悟があるから文句無いよなという事だ。
しかし俺が腹を立てているのは、別であり攻撃したのに普通に話している点である。謝りもせず、平然と話を始めやがった。それが俺がムカついているところだった。
「どうやら――余程、死にたいらしい」
その俺の言動に、勘に触ったのか中級ワイバーンは俺にまた向かってきた。
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