十四話 何やらワイバーンの対処を考えないといけなくなりました・・・
さて俺達は、食堂で何やら考えていた。その『何やら』というのは、ワイバーンの対処法である。
そもそも何故ワイバーンの集団が、こちらに飛んでくるのか俺は、疑問だった。
ワイバーンが、頻繁にこちらに飛ぶのは想像したくないが、ホライさんが対処に悩んでいるという事は稀な現象なのだろう。じゃないと、対処法のマニュアルなり行動なりが、よりしっかりしていなきゃおかしいからだ。
つまりこのワイバーン達の行動は、何かしらの原因があってかというのが憶測でしかないがあるのかもしれない。
「なんでワイバーン達は、こちらに飛んで行くんだ?というより、そもそもワイバーン達の生息域ってどんな所なの?」
俺はアライにそう質問した。この世界に詳しく、身近な存在と言えばアライしかいないからだ。
それにテーブルの前にいるしね。ホライさんが朝食を作って持ってくるまで暇だからね。
「ワイバーン達の生息域ってここより南東の高い山にいるんだよ。そこは龍甲山って言って、ワイバーンやドラゴンの住処なんだけど、ワイバーンなら中級までの強さなら、なんとか人でも太刀打ち出来るけど、ドラゴンってなると話は別で、太刀打ちする事すら烏滸がましいほど強いんだ。だから基本的に、人は絶対立ち入る事はしないようになっている」
成程、そんなに上位のワイバーンやドラゴンは強敵なのか。強敵なら、むしろ相手したくないな。面倒くさいし。
「それでそのワイバーン達が移動してるというのは、私にもよくわからないな。ごめん」
「アライが謝る事ないよ。俺が聞いただけだしね!」
しかしそしたら何が理由で、ワイバーン達は一直線でこちらに向かっているのだろうか。
一直線というからには、何やら目的があり向かっているように思える。意味も無く、飛び回るほどワイバーンの知能が低いとは思えない。
「この国に、龍と関係のある物とか何かある?」
俺はアライに問いかけた。
「う〜ん……何もないよ……」
無いなら最早行き詰まってしまった。原因は後で考えるとして、対処法である。
「下級のワイバーンってどれくらい強いの?」
俺はそもそもこの世界のワイバーンの強さがどれくらいか分からない。
アースガルドだと、弱い奴だと三〇レベル位で、強い奴、ネームドなんかは五十〜七十でピンキリだったが……。
「中級騎士が、十人くらいでやっと一匹倒せるレベルだよ」
「その中級騎士の強さは?」
そうそもそもその中級騎士ですら、どのくらいの強さか俺には分からなかった。
「う〜と……そうだね……。あのゴブリン洞窟を、一人で制圧出来るくらいかな……?」
何故疑問系だったのか分からないが、要するにゴブリン洞窟、十個分位の強さというわけか。うん、強いね……。
それが集団で来てるというのは、絶望的な状況なのだろう。
まぁ〜ただ対処出来ないレベルの話ではないな。対処出来る範囲内だ。
「成程……」
俺がそう考えていると、ホライさんがおぼんで朝食を持ってきた。
「遅くなってごめんな。はい。トーラスバスの焼き魚定食」
ご飯に味噌汁に、焼き魚、うん……。日本人独特の定食だね……。日本じゃないけど……。
どゆこと?ご飯という文化がある?味噌もあるし、どゆこと?
つまりこの国だけなのかもしれないが、食文化は日本に寄っているのかもしれないな。
このご飯の艶に、匂い、味噌汁の大豆の香り、本当にいいな。
「トーラスバスって何?」
「あ〜あれだよ。トーラス国特有の、魚の種類でな。川魚なんだが、とても身がしっかりしてて美味しいぞ」
「ほ〜」
俺はそうトーラスバスについて興味が湧いた。
「いただきます!」
俺は手を合わせて、こう言った。
「それで、本題なんですけど、ホライさん。とりあえずワイバーン達は、私達の方で対処します。それで気になる事がありまして、この村に龍と関係のある物とか何かありますか?」
俺は、アライにした質問と同じ質問をホライさんに投げかけた。
ホライさんは悩みながら、答えた。
「そういう物は特にないですね……。ただ龍玉のかけらという代物がありますが……」
いやそれだよ。龍って名前に付いているじゃないか。なんで心当たりないみたいな風に言ってるんだよ……。
「いや、それだよ……。思いっきし……」
ついホライさんにツッコんでしまった。俺はとりあえず「ごほん」と咳き込みながら、話を戻した。
「その龍玉というのは?」
「龍玉というのは、その昔勇者が、邪龍を討伐した際、出てきた玉だね。その力は凄まじくて、一国を一気に消滅させるくらいの魔力を秘めていました。直径は大体この宿屋より五倍くらいは、あったというらしいよ」
アライが代わりに説明してくれた。
「そんな代物がなんでこの村にあるんですか?」
そんな危険な代物のかけらがなんでそもそも村にあるんだよ。おかしいだろ。
「いやあって当たり前の代物だよ。勇者は、その玉があると、魔物が寄り付かなくなる性質があったらしくてね。その龍玉の一部を、村に配ったらしい。村に悪しき魔物が寄り付かないようにと。今は、代々トーラス王が、龍玉を管理してて新しい村が出来る際だったりした時は龍玉のかけらを渡す決まりになってるらしい」
成程。あって当たり前の代物であるが故に、ワイバーンと関係のある代物だと気づかなかったようだ。それにそのかけらがあるが故に、魔物は村に近づかなくて安全といった所なのだろう。
しかし、そしたらおかしい問題に直面する。
「なんでゴブリンに、娘さんは攫われたんですか?」
酷な事を、ホライさんに聞いてしまうが今は情報が何よりも大切である。
「ここ最近、色んな村で立て続けに魔物に襲われているらして、どうやら龍玉の効果が弱まってしまっているという噂もありました。その結果です」
つまり龍玉が弱まっているという事と、ワイバーンがそれを求めて進行を始めたのは、同時期という事は要するにワイバーン達も、その龍玉によって近づけなかったという事なのだろう。
しかしそこで疑問に思うのが、龍玉というドラゴンに関係する代物なのに、何故ワイバーン達は近づけなかったのだろうか。
つまり龍玉には、そんな魔物から守るという効果ではなく、人為的に付与された効果により発動しているということが可能性がある。
なんかこの国の闇深さを感じてしまったが、そこら辺は後で調査しよう。本当に。
今はワイバーン達だな。
「とりあえずワイバーン達が侵攻してくる時間を、前もって見積もっておこうか」
「下級のワイバーンは、スタミナが乏しくて、飛行速度はそれなりにあるから。龍甲山から飛んで三日経っているという事は、それなりに羽やすめをして、多分後数時間もしないうちに侵攻してくると思うよ」
うん……。アライがそんな事を口走った。
「まじで?」
俺は一応再確認の意味も込めて、アライに言った。
「まじだよ」
今日とかまだ心の準備すらままならないんだが。嘘だろ。何考えているんだよ……。
それなのに、あの村人共は呑気に口論していたというのかよ。アホらしい。
それならとりあえず、その村の防壁を作らないといけないな。
ワイバーンのブレスの流れ弾が、村に直撃した瞬間、火の海だしね。
それにしてもこのトーラスバスというのが、おいしすぎる。どうやら白身魚のようだ。歯応えがあって、塩を振っただけでここまで美味しくなるのかよ。
それに味噌汁はきちんと味噌汁してるし、ご飯も本当に美味しい。日本を思い出させる味で、満足だよ。
「ご馳走様でした」
俺とアライは、朝食をきちんと完食させて、部屋に戻る事にした
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