十二話 朝起きたら相棒と一緒のベッドにいました・・・
チュンチュンという鳥の囀る音が聞こえてくる。俺はそれを目覚ましに起きてしまう。
普通に掛け布団を退けて、起きあがろうとする。しかし何故か起き上がれない。何か異物のようなもののせいで起きあげれなかった。
その異物はなんだろうと見ると、そこにはアライがいた。
うん? なんで?
俺はそんな疑問を持ちながら寝る前の記憶を、呼び覚まそうと努力する。
確かあれは…………。
普通に夕食を食べ終わった後、普通にベッドに行き、俺はまだ風呂に入っていなかったので、風呂に入りその後、アライが寝ている事を確認した後、自分のベッドで寝たはずだ。
うん!記憶違いがなければその通りなのだ。アライが普通に寝息立ててたし、絶対熟睡していたのだ。
つまりその後、俺が寝ている間にアライが俺のベッドでつい寝てしまったという事になる。それしか考えられないしね。
ていうかなんで俺のベッドで寝ているんだよ!?本当に!?いや嫌な訳ではないけど、それにしてもこちとら一応体は子供だぞ!?
どうして俺のベッドで熟睡しているんですかね……。本当に……。
そんな事を俺が考えていると、アライが眼を覚ます。ベッドから起き上がり、眼を擦る。
「おはよう――アディ」
「おはよう――アライ」
普通におはようの挨拶を二人で交わして、何事もアライはなかったかのように、ベッドから立ち上がる。
うん?俺がおかしいのかな?この世界では、同じベッドで寝る事に、なんの躊躇いもないのかな?いやいやいやどんな貞操観念欠如の異世界だよ!
問題行為だよ!?そしたら!?
流石に俺は気になり、アライに質問した。
「ちょっとアライ……。質問があるんだけど」
俺の言葉を聞いて、アライは振り向く。
「なんかした?」
「いやいやいやなんかしたじゃなくてね。なんで同じベッドで寝ているんですかね……」
そうなのだ。本当に俺は気になって、気になりすぎて仕方ないのだ。どういう出来事で、アライは俺のベッドに移ったのか。
「あ〜そゆことね。あれよ。少し寒かったから、寝ぼけながら一回起きてしまってさ。それでアディこ体温で温めて貰おうかなと思って、同じベッドに移っただけ」
うん……。『だけ』ではないね……。寒かったからって俺を、湯たんぽとか抱き枕代わりにしないで貰えませんかね……。いや別に悪いとは思っていないが、一応俺の精神は、高校生なのでね。少し自重してほしいんだが。
しかし何故かアライが少し、ほんの一瞬、眼を逸らしたように見えた。
別に寒かったからと言ったのは本当の事なのだろうが……。しかし俺はなんでかは知らないが、少し疑問に思ってしまった。
「それ以外の理由はないの?」
俺は一応アライに対して、再度問いかけた。
なんか喉に引っかかったような違和感が俺にはあったのだ。
「いや……ないっちゃ……ない訳ではないけど……」
その反応は確実に何かあるからこそ言った言葉だったようだ。
しかしどういう訳か言うのを、渋っているようだ。別に傷を抉るほど俺も、鬼ではないから無理に言う必要はないが。
「別に無理に言う事ないよ。ただ気になっただけだしね」
俺は別にこれ以上問いかけないようにした。彼女が、何か言いたくないなら無理に言う必要はない。彼女が言う事で、苦しいなら俺はそれを尊重する。
「いや別に無理はしてないけどさ……たださ……」
「ただ……?」
「ただ私が言う事で、アディが心配してしまうからさ……」
あ〜成程。その類で、言葉を渋っていたようだ。実際俺も、なんだかんだ言って心配するところは、とことん心配してしまう立ではあるしな。
そこら辺を、アライは余計気にしてしまっていたようだ。
「何に対してか分からんけどさ――心配してしまう事は心配してしまうに決まっているさ。なんて言ったってね」
これ以上の言葉は、察してくれ。察してくれないと、俺の恥ずかしさが限界値突破してしまうから。
俺がそう顔を赤らめていて、恥ずかしくなっていると、アライは察したのかクスクスと笑う。
「アディって本当に――不器用よね」
「うっさい! ほっとけ……」
そう俺は、アライから眼を背けるようにそっぽを向いてしまう。
「少しさ……。暗いのが怖くてね。なかなか寝つけなくてさ。でも寝ようとしたら、私死ぬんじゃないかって怖く……怖くて……だからアディが寝た後を見計らって、一緒に寝たんだ。だって死んでた時も真っ暗で、何もなくて、私が何者なのかも分からなくなって……」
そうアライが話す度に、顔が歪み、恐怖に震えているような気がした。
彼女は一回死んでしまっているのだ。だからこそより暗い場所というのが、より恐怖に感じているんだろう。
「別にいいよ。俺と寝る事で、寝れるなら別に一緒に寝てもいいさ」
そりゃそうだろう。恐怖で寝れない人間が、俺と一緒に寝る事で眠れるならいい事だろう。
ただ恥ずかしさが、めちゃくちゃあるが……。
「ありがとう――アディ」
朗らかな笑顔を、俺に向けてきた。いや本当に、可愛いな!? おい!?
「それにしても、今日は何するの?」
本当に俺は何をしようか……。色々調べたい事が山積みではあるが、う〜む……。
ひとつアライについて気になる事があったから質問してみるか。
「アライってそういえば、騎士か兵士でしょ?」
実際この世界に転移してから、緑野郎共を干物にした時、鎧にフラム隊所属と彫られていた。
「そうだけど、なんで知っているの?」
「鎧からだよ」
「あ〜成程ね。それで……それがどうしたの?」
「いやさ。アライがいた国に行きたくてさ」
確かにアライの国がどんななのか興味があるが、本命はその国での情報収集にあった。
どれくらいの規模かはまだ分からないが、アライがいた国に行く事で何かしらの情報は掴めるだろうと俺は思っている。
「別に構わないよ。むしろ戻りたいと思っているしね」
そういう事なら、今日やる事は決まった。
アライがいた国がどれくらいの距離かは、不明だが多分、今日中には着かない事は確かだ。うん……。本当に……。
俺はそう思いながら、少し白い眼をしてしまった。
「それならアライがいた国まで行こうか」
「それで国名ってなんなの?」
俺が一番気になっていたのは、国の名前である。何故かというと、これがもしゲームの世界と同じ国名なら共通点があるという事になるからだ。その情報は、とても重要な事だった。
「トーラス国って国名だよ」
トーラス……トーラスねぇ〜。アースガルドでは、記憶にない国名だな。
やはり共通点は皆無か。やはり完全に別の異世界のようだな。
「それで今日中に着く?」
一応聞いておこう。望みが薄いが、ワンチャンに賭けるぞ!俺は!
「着かないよ。絶対」
ですよね〜……。知っていた……。まぁ〜た〜歩き歩き大会かよ。もう勘弁してくれよ……。マジで。
「そうか。分かったよ……」
少し俺は、落ち込みながら答えた。
そんな事を考えながら、話しているとふと俺のお腹が鳴ってしまう。
お腹が空いたという合図だった。それを自覚すると、妙に空腹感が出てきてしまった。
それを聞いたアライは、少し笑いながら――
「そろそろ朝食を、食べに行きますかね」
うん! それには賛成だ! ホライさんが作った昨日の夕飯は、本当に美味しかったからな! 楽しみだよ。
「そうだな。腹も空いてきたし、そろそろ行こうか」
朝は日が出てからなら、いつでも来ていいよという風に事前に言われていた。これは寝てる人を、あまり起こさないようにする配慮なのだろう。
そこら辺もきちんとしているのは、素直に凄いと思ってしまった。
そして俺達は、食堂へと向かうのであった。




