表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
八千職をマスターした凡人が異世界で生活しなくてはいけなくなりました・・・  作者: 秋紅
第五章 風紀委員会の仕事は、思った以上に大変でした・・・
105/366

百四話 子供達の怨念の行き着く先に・・・

俺は足に気と魔力を瞬時に込める。これが淡色に輝かしく光り始める。魔力の奔流が、脚から全身に広がりまるで星のような煌めきを連想させる。








「龍紋・第二段階・黒竜」







 両手に着けている手袋を脱ぎ、ズボンのポケットにそれをしまう。そして白竜の紋章とは別の、黒い紋章が左手にはあった。それはまるで渦巻くような紋章であり、永遠を司っている竜そのものの概念のような感じであった。






 そして白い剣とは別の、黒い剣が左手に形成されていく。何処か禍々しいような雰囲気を感じてしまう。しかし今はそんな事はどうでもよかった。







 俺は極限状態の中、ただアデマ先輩を助けようとしていた。他の存在の動きが遅くなるような感覚になる。しかしそんな事はなく、俺の視界がこの極限状態の中、認識出来ているだけだった。






 そして脚を踏み締め、地面から離す。その瞬間、光の速度で加速する。側から見れば、光が通り過ぎたような当たり前の感覚になっている事だろう。







 その光が向かう先は、アデマ先輩であった。今まさに子供の怨念の凶刃がアデマ先輩に振り下ろされようとしていた。俺は白い剣を強く握り、その少女に一太刀浴びせた。







 何の反応もなく、少女は抵抗する間もなく、真っ二つに縦に切り裂かれた。






 俺は後ろを振り返り、恐怖のあまり後方に尻餅をついてしまったアデマ先輩を見る。







「アデマ先輩!? ルルさん!? すぐさま外に!? 上で待機していてください!?」







 俺は声を振り絞り、アデマ先輩に大きな声でそう言った。それを聞いたルルさんは、アデマ先輩の元にすぐさま近づいて抱えて、雷を身に纏いながら階段を駆け上がっていった。







 少女は真っ二つに裂かれたにも知らずに、その場で呆然としていた。その少女の断面もおかしく、顔のようなものや、手や脚、内臓のようなものが、ただ少女という形を保つ為に詰め込んだような断面をしていた。








 そして断面が、手や脚や内臓ようなものを黒い液体の紐のように結ばれて再生する。悍ましい光景が、俺の目の前に広がっていた。







 この現象を見て、この敵対存在は普通のアンデットの領域を超えた何かなのだと理解する。理解したからなんだという話であるが………………







 そもそも倒せない存在に、どう対処しろと。恐らく封印には時間も掛かるし、こんな強大な存在を封印の魔術一つで納められるか、今の魔法や魔術知識では難しい気がする。







 そうなるとただ一つ。強引であるし、脳筋のような思考であるが仕方ない。こいつを滅する手段を、戦いながら模索するしかない。







 少女の再生が終わると、さっきのようなあどけない純粋な笑みがそこにはあった。真っ白い筈なのに、真っ黒いという反比例するような少女の異常な雰囲気がそこにはある。







「酷いね………………お兄さん………………」






 そうボソッと口を溢すように俺に言った。黒い短剣をクルクルと空中に投げては、掴んで遊ぶような動作をしていた。短剣がまるで、おもちゃなのであろうか。






()はただ、喋らないお兄さんにお仕置きをしようとしていただけなのに………………邪魔するなんて…………」







 何処か悲しいような、憤慨しているような、そんな顔をしていた。お仕置きが出来なかった事に対して、残念そうにしていた。







 いやいやいや、お仕置きって完全に殺す勢いだったじゃん。お仕置きじゃなくて、殺害しかけていたんだが。まぁ〜アンデットに言っても無駄だろうけど。







「お仕置きって何をされるんだ?」






 恐らく人としての常識という名のフィルターが、少女にはないだろう。そうするととりあえず会話をして、時間稼ぎしている中で対策を考えるか。







「うん〜とね!? 手とか脚とかの指をね、切り落とすんだよ。そこでね、ごめんなさいとか、死にたくないとか、弱音を吐いたらね。弱い子って事で、首を落とされるんだ!」







 そう嬉々とした、無邪気な笑顔でエグい言葉を言っていた。るんるんと鼻歌を歌いながら、話をして楽しくなっているのだろう。







 そのような所業は、過去にこの子供達がされた事なのだろう。居た堪れないし、むしろこうなってしまうのも無理はない。何ならもう少し、凶悪になっていてもおかしくない筈だ。







 そうならないのは、まだ純粋だった子供だからだ。子供の小さな怨念の集積体だけで、何しろここまで強大になっているのがその所業の残酷さを窺えてしまう。







「――――――だからね。お兄さんはね。お仕置きの邪魔をした、悪い子だから、首を切り落とすね」







 そう鼻歌混じりに、少女は黒い煙に変わり、瞬時に俺の背後を取る。そう認識した時には、既に短剣が俺の首元まで迫っていた。








「龍天百花術・龍鱗」







 首元の一点に気と魔力を集中させる。それが強固な龍の鱗のようになり、少女の短剣を防ぐ。








 しかしもう一つの短剣が、今度が俺の顔を狙うように向かっていた。







 俺は何とか首を逸らして躱して右脚に力を込める。






「龍天百花術・龍爪脚・絶氣裂爪」






 淡色の魔力が龍の脚のようなものを形成して、爪の先端には凝縮した気が集中していた。そして俺は右脚で蹴り、少女の脇腹を捉える。






 一瞬にして少女は吹き飛び、地下室の壁に激突する。やはりこの地下室は壊さないんじゃなくて、壊せなかったのか。普通ならあの勢いで、壁が吹き飛ぶか頑丈に出来てるにしてもひび割れを起こしていた筈だ。しかし少女が壁に激突しても、壁は無傷だった。







 少女の上半身が粉微塵になっており、見るだけで痛々しい感じがした。しかしその粉微塵になっている、ダメージになった箇所に黒い煙が集中して再生する。







 まさに完全な不滅の存在がそこにはいた。少女は再生が終わると、地下室の床に降りてなんて事なかったように、ピョンピョンと飛ぶ。






「お兄さん、大人しく()達のお仕置きを受けてよ」






 少女は頬を膨らませて、駄々を捏ねる子供のようだった。行動とか言動とかを抜きにすると、単純な子供なんだよな。しかしアンデットだから、言葉でどうにかなるとは思えないが。







 ていうか嫌だね。誰が好き好んで首を捧げるかつう話だよ。






 少女は黒い煙のような状態にならずに、子供特有の軽快な速度で俺に接近してきた。子供のような速度を優に越しており、一般人なら何が起こったが分からずに首を切り落とされているだろう。







 首を切り落とすことを一旦やめたのか、諦めたのか分からないが、短剣が俺の振り下ろされる。胴体を狙ってきており、俺は膝蹴りで何とか短剣の軌道を逸らして、左手にある黒い剣を少女に向かって振るう。







 軌道を逸らした勢いで飛んで、俺の黒い剣を蹴りで弾き飛ばす。そのままもう一つの短剣で俺の顔面に向かって下から振るわれる。






 俺はそれを間一髪の所で、首を捻り躱した。何つう攻撃だよ。子供の霊が行っていい技とかじゃねぇよ。







 少女はそのままムーンサルトのように飛び跳ねて、距離を取る。そして今度は、俺の側面に向かって迂回する様に瞬時に接近する。




「龍天百花剣・白激斬」







 白い剣が、白銀の輝きを纏わせる。それを俺は少女に向かい、横に薙ぎ払う。白い巨大な斬撃が、少女を襲う。しかし少女は黒い煙を展開して消え去る。と思っていたが単純に俺の斬撃を躱して見失ったと見せかけて、死角から急接近した。







 それに気づいた時には遅く、何とか反応して右腕で短剣を向かい打つ。






 簡単に俺の右腕が切断され、地下室の床に落ちて血が濁流のように流れていく。俺は右腕だった所を押さえて、苦痛の顔を浮かべる。






「チッ――――――やられたか」






 単純な戦闘経験だと、少女の方が遥かに上か。さてとどうしたらいいかな。

百四話、最後まで読んでくれてありがとうございます



少しでも面白いと感じたら、いいねやブックマーク登録お願いします。また次の話もよければよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ