その2
仕方がないことだ。理闘はぎりぎりと歯噛みしながら、自己暗示をかけるように何度も何度も言い聞かせた。仕方がない仕方がない。いやでも――やっぱり諦められない!
数百回の自問自答を繰り返し、理闘はヒステリックな悲鳴をあげた。
財布がない!
どこかに落としたのかもしれない。
一年間の学費は入学試験の合否が決まった翌日に一括で振り込んだと聞かされているし、学園指定の制服もなく、通学は割引の定期券を使っているし、多少のデジタルマネーは携帯端末に備えてあるし、今すぐ大金が必要なわけではないが、これまで生活を切り詰めて節約に節約を重ねてきた功績が消えたという衝撃に打ちのめされた。
明峰学園は幼稚舎から大学院までエスカレータ式になっており、他にも、国家試験に必要とされる特殊な専門学校なども包括したマンモス校で、生徒の意見を尊重する自由な校風で知られており、外資アミューズメント会社にも劣らぬ遊戯施設を校内に保有しているほど敷地が広大で、全国から生徒を受け入れるために用意した豪奢な寮も完備されている。規格外の条件が揃っているせいか生徒数が多く、中でも、寄付金を惜しまない富裕層の令息たちが学園の半数を占めていた。
幼稚舎から通う者が多数派だからか、高等部に入学した初日は、クラスで形ばかりの挨拶をして終わった。高等部から入学した理闘には顔見知りすらいないので金を借りることもできない。
入学初日だから軽く校内を散策しようと不似合いなことを思いついた自分が呪わしい。財布を探して彷徨っていると、生徒用玄関で見知らぬ男に呼び止められた。
「待て」
がっちりした肩幅、不自然に盛り上がる胸筋、半袖から伸びる腕の力瘤がぴくぴくと脈動している。その上腕に巻きつくビニール製の赤い腕章がやけに目立っていた。
理闘は足を止めて男を見上げた。百五十センチの自分と比較して察するに、男は百八十五センチを超えているだろう。声が低くて濁っている。日本の武道は挨拶や礼儀に厳しいのでそれが原因で声が枯れたのだろうか。耳が潰れていないので柔道家や柔術家ではなさそうだ。直立した足幅の広さと重心の取り方から空手経験者でもない。合気道にしては全身が緊張しすぎている。ラグビーやアメフトのような重量級のスポーツ経験者だろうか。
男は機械的な動きで足を肩幅以上に広げ、両手を背の後ろで組む。
「君は新入生か。見覚えがない。名前とクラス、出席番号を名乗れ」
「はあ。どうしてよ?」
「明峰学園の生徒であると証明せよ。我が学園は生徒の感性と自主性を養うために、私服での登校を推奨している。であるからして、面白半分で覗きに来る他校の生徒や生徒を付け狙う危険人物が紛れ込んでも判別できん。貴様は、貴様が学外からの中途生であることを証明しなければならない。これは規則である」
「……断るわ」
「何」
「どうして無償で個人情報の提供を求めるわけ? あなたこそ何者? あなたが不審者じゃない証拠を見せられる? それとも、これナンパ? 玄関でナンパしてるの? というかあんたは誰よ。ほらほらクラスと出席番号を名乗りなさい」
「生意気な女め」
男が太い眉をぎゅっと寄せて口唇を引き結んだ。ここまで体格差のある女相手に威嚇してくるなんて、もともとは根性なしか、性根がよほど腐っているに違いない。
玄関には十五クラス分の靴箱が等間隔でずらりと並んでいる。談笑しながら上履きを取り換える生徒たちの甲高い笑声と上機嫌な相槌が無秩序な雑音を生み出す。生徒に紛れて逃げてしまえば賢いかもしれない。男は外聞なく追いかけてくるだろうか。怒鳴りながら殴りかかってくるだろうか。少し挑発して試してみようか。
その時、背後でパンパンと手を打つ破裂音が響いた。
「はい待った。女の子をいじめるのはなし。男として見過ごせねーな」
「最低だぞぅ」
オレンジ色の髪をつんつんに盛り上げてボリュームを作り、目にかかるまで前髪を柳のように垂らしている。涼しげな目元と薄い口唇でにんまりと微笑んだオレンジ頭はラガーマンの肩を手の甲でトントンと叩いた。
「やめとけ。相手は女の子だぜ。しかもまだこんなに小さい……うっわ、小っさ。身長何センチ?」
「あっは、何センチぃ?」
背中の半分を覆う黒いロングヘアに、右側の側頭でちょこんと一部の髪を結ぶ女の子が、オレンジ頭の隣で言葉を復唱する。顔は無防備に笑っているものの、大切な宝物を横取りされまいとする必死さでオレンジ頭の腕にしがみついていた。
オレンジ頭がラガーマンを押しのけると、不躾な視線で理闘を品定めを始める。
「小っさいな。妖精みてぇ」
「妖精って手のひらサイズでしょお?」
「んーん。あれね、俺思うんだけど、妖精って身体を大きくしたり小さくしたり自在に変化できるんじゃねーかな。ティンカーベルは手のひらサイズなのにピーターパンのこと大好きじゃん。普通あそこまで体格差があったら惚れないぜ? サイズが違うといろいろ苦労するだろ。食べる量も風呂の水の量も違うから絶対に苦労する。うん」
「そっかあ」
あははと呑気に笑い合う。ふたりは恋人同士だろうか。
オレンジ頭の手刀が理闘の頭上を行ったり来たり、水平に泳ぐ。
「百二十センチくらい?」
「だったりして」
女が脈絡なく笑った。何がおかしいのかわからない。水を差された形になったラガーマンがふるふると身体を震わせ、ぶんと腕を振り上げた。大袈裟に空気を切り裂く風圧――素人丸出しの大振りが来るはずだ。
理闘はふっと身を屈めて、腹に反撃を打ち込もうと狙いを定めた。オレンジ頭がスライドするような控えめな足さばきで理闘の前に立ち塞がり、左腕を盾にしてラガーマンの拳を防ぐ。脇腹ががら空きだ。理闘が爪先でそこを蹴り上げようと軸足を踏んだ瞬間、オレンジ頭が右手に握ったスタンガンをラガーマンの太腿に押し付けた。ラガーマンが、あががと言葉にならない呻きをあげてがくりと膝を折る。オレンジ頭が更に肩口にスタンガンを押し付けた。今度は二秒じっくりと。
オレンジ頭がとんとその肩口を押すと、ラガーマンは近くの靴箱にずるずると背を滑らせて昏倒した。目の焦点が合っていない。完全に意識が飛んでいる。
「やべ。電圧調節してねー。まあいいか」
「気にすることないよぉ。身体大きいし」
「だよなあ」
カップルがけたけたと笑い合う。騒ぎに気付いた生徒たちが少しずつ周囲に集まり始め、今がチャンスとばかりに、理闘は足音を忍ばせて群衆に紛れようと謀った。すると、オレンジ頭に腕を掴まれる。
「ちょい待ち。外部入学生だよね? 今年度から?」
「どうして?」
オレンジ頭が軽薄なウインクを飛ばしてくる。
「俺、学園内の女の子ほぼ把握してンの。初めて見た顔だから高等部から入った新人さんなのかなって」
「だとしたら?」
「誤解しないでほしいけど、謝礼を要求してるわけじゃないからね。出会いそのものが運命ってやつさ。これからよろしくって挨拶がしたくて」
オレンジ頭は心底から照れたように頬を赤らめて、恥ずかしさを隠すように顔を手で覆った。理闘は訝しげにオレンジ頭を見つめた。
巨体だけが取り柄の、相手が小柄な女というだけで勝った気でいた、こちらの力量も見抜けない木偶など理闘なら瞬殺で沈められた。オレンジ頭に礼を述べるつもりはない。
オレンジ頭にしがみつく恋人らしき女の子が理闘を上目使いで窺ってくる。彼氏に接近して欲しくない。彼氏に興味を持ってほしくない。喋ってほしくない。黒目の大きいリスみたいな瞳を潤ませながら、仄かな独占欲を滲ませている。
「手、離して」
理闘が小さく促すと、オレンジ頭が白旗をあげるように両手を挙げた。
助かったとは思わない。助けられた、とも。
日本屈指のマンモス校なのでクラスが重ならない限りは縁もないだろう。じゃあねと声をかけてカップルの脇を抜けようとした瞬間、さらりと腰元を撫でる感触があった。
心地よい絹が頬を撫でるように、自然に、不自然な摩擦なく。
反射的にオレンジ頭を振り返ると、薄い口唇が「またね」と動いた。彼女の腰に手を回して、まるで二人三脚競争をするようにべったりと密着しながら去ってゆく。
初日から面倒に遭ってしまった。
遺失物の届け出がないか職員玄関の近くに設置された事務局を訪ねたものの、当然、財布は届いてなかった。リノリウムの廊下を歩き、渡り廊下に設置された校内案内図の前で足をとめる。地下鉄の改札近くに掲示されている周辺地図によく似ていた。一階を目指してのんびり階段を下りると、背後から不恰好な奇声が追いかけてきた。
「きええええええええええ」
興奮のあまり声が割れている。咄嗟に身体を転じて階上に目をくれると、頭皮すれすれまで髪を刈ったひょろガリの男子生徒が上段の構えで細い棒を振り上げていた。武道の心得などない、ただ勢いに任せてぶつかってくる物体に近かった。
「天誅じゃあああ!」
理闘がひょいと首を下げて打撃を避ける。だが彼が狙っているのは理闘ではなく、階下の踊り場にいる人間らしかった。
こちらに背中を向けた長身痩躯のシルエットを持つ男子生徒の、さらりと長い黒髪が揺れる。ひょろガリの声に気付いているのかいないのか、踊り場の壁に埋め込まれた大きな姿見の前で撮影モデルのようなポージングをしていた。
体重を乗せた人間からの一撃を脳天に受ければただでは済まない。理闘は考えるより早く、ハードル走の要領で頭上を越えてゆくひょろガリの足首を平手で払った。僅かに軌道がずれる。理闘は強く床を蹴って、横壁まで飛び、足がついたと同時に壁を三角蹴りして相手より早く踊り場まで移動して身構える。強い眼光で階上を見据える。ひょろがりの目が血走っていた。標的しか見えていないらしかった。
「どきなさい!」
理闘が長髪男子を右手でどんと突き飛ばすと、よろめいたあと壁に衝突して尻もちをついた。恐らく大きな怪我はない。
ひょろガリの落下地点で迎える理闘は、照準を合わせ、彼の顎下を掌底を突きあげた。「がゃふ」と動物めいた声が漏れる。アッパーカットを受けたボクサーのように小さな放物線を描いて、ひょろガリが階段の傾斜に背中を打ちつける。がくがくと頭を揺らしたあと動かなくなった。舌を噛んだかもしれない。
ひょろガリのしなびた大根に似た腕に括られた赤い腕章には見覚えがある。先ほどのラガーマンと同じものだ。
「またこれ?」
襲撃の真意がわからない。せめて手掛かりを見つけようと、ひょろガリの上着を探って所持品を物色しかけたと同時に、
「天誅だ!」
天誅天誅と連呼しながら武器を構えて迫ってくる男たちが押し寄せる。素手の者もいた。相手は六人。それぞれの位置と距離を一瞬で判断したあと、一人目の腕を引っ張って、半身を回転させながらその腕を脇に挟んで関節技を決める。悲鳴があがる。空いた左手で背中を強く弾き飛ばして壁に押し潰す。撃沈ひとつ。
二人目の胸郭に右肘を捩じ込む。相手が身体をくの字に折った瞬間に相手の背後に回り込んでから背中を強く押すと踊り場の床に潰れた。撃沈ふたつ。
三人目の鳩尾に固い正拳突きを入れる。撃沈みっつ。
体勢を崩す三人目の両肩に手をつき、跳び箱の要領で上段を目指す。額でクロスさせた腕で四人目の攻撃を防ぎ、同時に床を蹴ってジャンプ。四人目の左腕に飛びつき、理闘は彼の首に足を絡めて、肩車に似た形で締め上げ、折れない程度に力を入れた。
四人目が投げ出した棒を空中で掴みとる。
「危ない!」
理闘は咄嗟に叫んだ。僅かな隙をついて五人目が腕に仕込んだボーガンの弓を引いている。振りかぶった棒を投げ放つと、ひゅんひゅんと回転して棒の先端が五人目の首筋にめり込み、体勢が崩れた。五人目も完了。
六人目が腕のボーガンを構えるより早く、標的の長髪男子の前まで跳躍した。同時にボーガンの矢が放たれる! 矢の先は鏃でも金属でもなく、透明な色合いなので特殊な合成繊維かもしれない。反射する光、風圧、こちらまでの距離、ボーガンの矢への対応が頭の中で錯綜する。
矢を避けるか弾くかと考えて、標的そのものの位置をずらそうと決め、長髪男子の身体を靴底で踏み押した。二十センチ動けば充分だ。
ボーガンを打つ姿勢になった六人目の左腕を肩口に引き込み、体勢を回転させながら背負い投げを決める。六人目は踊り場に積まれた仲間たちに背中を打ちつけた。念には念を入れて延髄に手刀をいれておく。六人目完了。理闘は腰に手をあててふうと息をついた。
滑稽な襲撃団はみんな赤い腕章をつけている。
暴れたら少し気分が晴れた。しかしそこでふと我に返った。勢いに押されて応戦したものの、標的は理闘ではないのだからこれは無用の戦いだ。理闘に敵意を向けていたわけじゃないので過剰防衛すら成立せず、罪を問われる可能性だってある。
「よし。逃げよう」
身元が割れる証拠を落としていないか、床上を舐めるように見遣る。壁に靴跡は残っていない。手摺にも触れていない。彼らから奪った武器を袖口で素早く拭き取った。
「ボリシェヴィキ」
外国語が聞こえてきてハッと顔をあげる。さっき突き飛ばした長髪男子が起き上がり、無表情のまま、まっすぐ理闘を見据えていた。
それは――そう、他に例えようもなく、美少年と言うべき整った面貌がそこにある。
眉も瞳も鼻梁も口許も頬も耳も肌も髪も睫毛ですら、肩も腕も胴も腰も足も、すべてが最適な箇所に配置された輪郭。造形美。天才が魂をこめた彫像よりは生々しく、だけど肉体という熱量を感じさせない、どこか異世界めいた空気を纏っていた。
美少年がボーガンから放たれた化学繊維を指でつまみあげ、窓に透かしてまじまじと観察している。つい好奇心が湧いた。
「それ、その針は何なの?」
「ジェイかと」
「は?」
この美少年は日本人ではないのかもしれない。
「やだ。私、英語は苦手なのよね。えっと、あいむのーいんぐりっs。じゃぱにーずらんげーじぷりいず? やーねいむ、ジェイ加藤? ヘイ。でぃsいず理闘」
「僕は日本人です」
「えっ、あ、そうなの」
「お久しぶりです」
「え? 私たち会ったことがある?」
ここまで個性の強い人間を忘れるはずがない。例え、よちよち歩きの幼少であっても。
「お腹が空きました」
「えっ、何? どういうこと?」
「僕は日本人です。僕の名前は鈴木明美です」
「ちょ、女の子なの? 嘘でしょ?」
「僕は十三歳です。これは机です。林檎は美味しい。今何時ですか。図書室に行きます。あなたはどの国から来ましたか? 私には兄がいます。八月は夏です」
美少年が機械めいた抑揚のない口調で、まるで英会話の初心者向け教材を読み上げるように捲し立てる。日本語がうまいのか下手なのか判然としない。
「僕は日本人です」
「わかったわよ!」
「幼稚舎で習う教科書の一ページ目です。僕は日本人です。外国人にはまず国籍を伝えることが大事ですか? 簡単に本名を名乗りますか? 個人情報は死にますか?」
「アジア人はどれも同じに見えるらしいから国を名乗ることは大事かもしれないわね。本人の自由だとは思うけど……というか……」
理闘は訝しげに目を細めた。外見は儚げな美少年のくせに喋ると途轍もなく胡散臭い。
混ぜるな危険。扱いの難しい化学薬剤ならば、使用方法を読まずに深入りすると致命傷を負いかねない。予定通り、無難な学園生活を送るために早く立ち去ろう。
「お腹が空きました」
「なら早く帰ったら? というか私、帰るわね」
腕章の男たちのひとりが、ううと呻き声をあげた。まずい。覚醒するかもしれない。理闘はくるりと背を翻して階段を駆け下りた。なぜか美少年もぴったりとついてくる。
「お腹が空きました」
「だから早く帰りなさいよ!」
「お腹が空きました」
「だから何! 言っとくけど、ねだってもぐずっても奢らないわよ! 私には無駄にするお金は一円だってないんだから!」
「いいえ違います。僕がご馳走します」
「は!」
「助けていただいたのに、このまま帰すのは美しくありません」
理闘は足をとめて美少年の顔を見上げた。見れば見るほど端正な面立ちをしている。毛穴ひとつわからない肌のきめ細かさだった。
「わかった。わかったわ。でもお礼がしたいならお金にして。はい、お金ちょうだい」
「幾らですか」
まさか金額を聞き返されるとは思わず、逆に硬直してしまった。美少年の視線はまっすぐ揺らぐことがない。動揺を隠すようにこほんと咳払いする。
「あー、じゃあ、六人を相手にしたから、そうね、ろ、六万円かしら~?」
「わかりました」
美少年が財布から抜き出した日本銀行券を六枚きっちりと数えてから手渡してくる。僅かな躊躇もなかった。六万円なのに!
すんなり懐に収めるのも浅ましいが、美少年の気が変わって、やっぱり返金しろと迫られるのも困る。理闘は軽く手を挙げて、じゃあと挨拶を残して彼に背を向けた。
なのに、なぜか美少年がついてくる。
「お腹が空きました」
「だーかーら、奢らないって言ってるでしょ! しつこいのよ! 言っとくけど、このお金は私のだから! 貰ったものは貰ったもの! 貰ったお金は私のお金だわ! あんた、お金持ってるんでしょ? 自分で買いなさいよ!」
「お金がありません」
所持金きっちり六万円だったらしい。
仕方がないので近くの売店でチョコレートを買い与えると、美少年が瞳をきらきらと輝かせながらぺろりと平らげた。
「ビーさん」
「Bさん? どういう意味?」
理闘の名前を知らないから仮名にしたのか、何故Aではないのか、それとも大衆モブの十人並みだと揶揄しているのか。まさか蜂の意ではないだろう。
「後日改めてお礼に窺います。この御恩は必ずお返しします」
「はいはい期待してるわよ? 一生覚えておくからね?」
このマンモス校でクラスが違えば再び顔を合わせる機会はなかなか訪れないだろう。
不当な金額を請求した悪質なカツアゲだと警察に訴えられると面倒なので当面の間は避けることにした。この特徴ある容姿から察するに、美少年の素性を調べるのは容易い。顔を合わせなければいい。
だが――翌朝、理闘のクラスに美少年がやってきた。