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08:卒業パーティーに断罪されるなんて

「生徒会のメンバーでありながら貴族にあるまじき行為だよ。よって、公爵令嬢セルロッティ・タレンティド。キミとの婚約を――」


 その瞬間、アタクシは目の前が真っ暗になるのを感じましたわ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ああ、卒業パーティーに断罪されるなんて、思ってもみませんでしたわ。


 アタクシはただエムリオに愛してほしかった。

 ただの嫉妬心だったのでしょう。エムリオに近づく害虫である裸女が嫌で嫌で、あんなはしたない行為ばかりをしてしまった。


 そのツケが来ただけですわ。


 アタクシはどうしたら良かったのでしょう?

 エムリオに素直に「浮気しないで、アタクシを見て」と言えば良かったのか。

 聖女にお願いすれば良かったのか。


 しかしそれをアタクシのプライドは許さず、結局いじめという最悪の方向へ向いてしまい、そして今、アタクシは断罪されているのですわ。




 聖女の脅迫があり、そして翌日。

 アタクシたちは皆卒業することになりましたわ。転入生だった裸女ももちろん一緒に。


 卒業パーティーの前に開かれた余興である魔法大会の後、しばらくはパーティーを皆さん楽しんでおられました。

 しかし、アタクシは内心穏やかではありませんでしたの。だってこのままではどうしようもありませんでしょう?


 早く聖女の恥を暴露し、この場の全員に彼女の悪評を広めなければ。

 惜しくも魔法大会では決勝戦で負けてしまいましたけれど、そんなくらいのことで引き下がるアタクシではありませんもの。

 そう思い、アタクシが何か行動を起こそうとしたその時、『明日をお楽しみに』と、裸女の嘲笑が脳裏に蘇りました。


 思い出しただけで寒気がしましたわ。

 この後、裸女はきっと何かを仕組んでいる。その前にアタクシが彼女とエムリオの浮気を――。


 しかしエムリオの言葉で、アタクシのその考えは容易く崩れましたの。


「ロッティ。キミに話がある」


 本来であれば生徒会長としての言葉を紡ぐはずの場でエムリオが「私事だが」と言って話し出し、アタクシに視線が向けられた時、最高に嫌な予感がしましたわ。

 そしてその予感は何も外れていませんでしたの。


 アタクシが聖女に行っていたことの証拠が、エムリオの口から次々と語られだしました。

 噴水に落としたこと、教科書を破ったことなど……。

 皆の視線がアタクシに突き刺さります。それはまるでこちらを嘲笑しているようでしたわ。


 取り巻き令嬢たちも、この時ばかりは助けてくれることはなく。

 アタクシは独り、どうしようもできませんでしたわ。


「やめて……! やめてくださいませ! そんな、そんなことアタクシは……!」


 きっと、裸女はアタクシを断罪するこの時のために、アタクシのいじめにも余裕の笑みで耐えて来たのでしょう。

 アタクシは彼女に手を出した時点で負けていたのですわ。裸女がこんなに利口で、そしてアタクシを恨んでいたとは考えもしなかった。


 こちら側が裸女を断罪しようだなんてできっこなかったというのに、アタクシは躍起になってそれを続けて。

 ……馬鹿みたいですわ。


 アタクシ、何が間違っていたのかしら。

 誰もが憧れる美貌、才覚、権威……。全てを持っていたというのに嫉妬心によって何もかもを失うのですわ。


 大体裏は読めていますわ。

 この舞台は、裸女とアルデートが仕組んだに違いありません。

 アルデートはずっと、聖女の味方でしたもの。彼の力を借りれば、裸女は容易くアタクシを陥れることができたでしょうね。


 そして告げられる、婚約破棄。

 もう何もかもが終わりですわ。アタクシの人生に希望を与えてくださった方を、アタクシは自らの過ちで失うのです。


 聖女さえ現れなければ、こんなことには。

 世界に危機が訪れるだなんていう過去の予言がなければ。


 いいえ、それは全部責任逃れでしかありませんわね。

 本当は――本当は、聖女と仲良くなれば良かっただけのことなのですもの。


 さあ、もうどうにでもなさい。

 アタクシは終わった。終わってしまった。エムリオのない人生だなんて歩む意味すらない。

 なんならこの場で命を絶っても――。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「その婚約破棄、待ったをかけます!」


 パーティー会場に響いたのは、黒髪の少女の声。

 もちろんその主である少女の名前はサオトメ・ヒジリ。アタクシを嵌めたはずの他ならぬ聖女が、声を上げたのでした。



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