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05:エムリオの心を惹きつけるのですわ

 アタクシは王妃教育に忙しく、エムリオは何かと多忙。

 近頃まともに会って話す機会もなかったので、アタクシはエムリオとの接触をどのタイミングで行うかを考えておりましたの。


 しかしちょうどその時、彼が現れたのですわ。


「ロッティ」


「――!」


 赤髪に緑瞳、そして背の高い少年。

 他ならぬエムリオ・スピダパムがアタクシを見下ろしていたので、アタクシは本当に驚きましたわ。

 けれどもアタクシは礼儀正しく挨拶いたしました。


「エムリオ、ご機嫌よう。お久しぶりですわね」


「確かにそうだね。ボク、なんだか忙しくって。ロッティも大変そうだよね」


「いえ、アタクシは雑務と王妃教育と勉学だけですので」


 ロッティと呼ばれたことがアタクシはとても嬉しく、頬を赤く染めました。

 愛称で呼んでくださるのはエムリオだけなのですわ。


「充分多いよ。無理すると体に悪いんじゃない?」


「体は強い方なので大丈夫ですわ」


 エムリオは本当に優しい。

 アタクシ、彼の声を聞くだけで夢心地になれるんですの。彼といるだけでどんなに辛いことがあっても平気で笑っていられる。

 ……でも優しいエムリオだからこそ、あんな裸女に心奪われてしまうのでしょう。そう思うと怒りが湧いてきましたわ。


「そうですわ、聞きたいことがありましたの」


「……?」


「最近転校していらっしゃった聖女様ですけれども、彼の方、どうも悪い噂が多いらしくて」


 アタクシはエムリオの心を自分に引き戻すべく、裸女の品位を下げるような発言をすることにいたしましたわ。

 これできっとエムリオも目が覚めてくださるはず。


「礼儀のマナーはなっていませんし、成績も最悪。聖女の力も本当は偽造なのではないかと噂が立っておりますの。それから彼女、複数人の男性と交際しているかも知れないとの情報もありますわ。これは不確かではありますけれども。生徒会では退学処分にすべきじゃないかという意見も一部ありますのよ。アタクシは、せっかくですから退学などしていただきたくはないのですが、やむを得ない時は仕方ありませんでしょう? 王国の騎士のお墨付きをもらっているとかおっしゃっていましたが、それも怪しいですわ。色々と調べなければならない事例がたくさんありまして……」


 捲し立てるアタクシに、エムリオは目を丸くしましたわ。

 ……けれど。


「あまりヒジリを悪く言わないでくれるかな?」


「エムリオ?」


「いくらボクの婚約者とはいえ、聖女の悪評を流すのは許さない。噂を立てているのはキミだよね?」


 その言葉にアタクシは唖然といたしましたわ。

 エムリオは今、アタクシを、疑って。

 アタクシよりあの裸女を優先した? 庇った?

 ――どうして?


「あの、裸女……!」


 口の中だけで憎悪たっぷりに呟くと、アタクシは淑女の微笑みを湛え、「噂を流しているのはアタクシではありませんわ。アタクシはサオトメ嬢を心配しているだけでしてよ」と言いました。


 でも内心は妬みの炎で燃え上がっていたのですけれどもね。

 許さない。アタクシはあの、裸女を許さない。


 必ずこの学園から追放してやりますわ。

 後はどこへでも行きなさい。もう二度とこの場所にはやって来られないよう、死ぬほど痛い思いをさせてあげますわよ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 エムリオの心を、アタクシに惹きつけなければなりませんわ。

 あんな裸女に、アタクシの座を取られてたまるか。


 アタクシはその日から頻繁にエムリオに会うようにし、婚約者として彼に付き添うようになりましたわ。

 もちろんアタクシったら暇じゃありませんから、できる限りですけれど――裸女は決して近付けさせませんわよ。


 きっとこうしていればエムリオもアタクシの方がいいと思ってくださるはず。

 そのはずですわ。これで全てがうまくいくに違いありませんもの。


 だって、アタクシがエムリオをこんなにも愛しているんですから。



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