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03:聖女の悪い噂を広めてやりましょう

 エムリオにアタクシが恋していることは間違いありませんわ。

 アタクシは公爵家に生まれ、正直不遇な生活を送っておりましたの。


 だってアタクシは政略の駒。

 娘として父母に愛されたことなど一度もありませんでしたわ。ただ淑女たれと言われ続け、そのマナーを叩き込まれ続けた日々。


 そんなアタクシに光をくださったのはエムリオなんですの。


 出会った瞬間、彼はアタクシを見て「大丈夫かい?」と声をかけてくださいましたのよ。

 アタクシはドキリとし、「何ですの?」と問いかけましたの。すると彼はそっと手を出して、


「悩みがあるなら、ボクが聞くよ」


 とても可愛らしい笑顔で、そうおっしゃったのです。


 当時十歳だったアタクシは、それはもう本当に嬉しくて。

 アタクシを人間扱いしてくださる方がいる。それだけでアタクシは生きる理由を初めて見つけましたの。


 この方をお支えする。それがアタクシの使命なのだと、そう思いましたわ。


 だからアタクシはエムリオのことを愛する。

 例えどんなことがあっても、浮気をされたとしても、エムリオのことだけは手放さない。


 アタクシは必ず、エムリオの花嫁になって見せるのですわ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「……というわけで、彼女、エムリオに媚を売っているはしたない女ですのよ」


 アタクシはこの学園でトップの成績を誇る。それに従い、いわゆる取り巻き令嬢たちが常に周りにおりますの。

 まず彼女らに聖女――ヒジリの噂を流すことにいたしました。


 もちろん、アタクシが言っていることは事実でしてよ?

 彼女はきっと元の世界では淫売婦だったに違いありません。とても悍ましいことですわ。


 大体からしてあんな女が聖女召喚されること自体がおかしくってよ、と何度目になるかわからない愚痴を心の中で呟くアタクシ。

 ともかく、悪い噂をたくさん広めまくりましょう。


「彼女、エムリオのことを婚約者でもないのに『様』付けで呼ぶのですわよ」

「あの方――サオトメ嬢がエムリオの腕にしがみついているのを見ましたの!」

「皆さん、お聞きになって。聖女様ってばアタクシのことを『セルロッティさん』だなんておっしゃいますの」

「サオトメ嬢、あの丸裸が聖女の制服なんですのね。お可哀想に。国から冷遇されていらっしゃるんじゃなくって?」


 アタクシたちには到底理解できないマナー破りを繰り返す裸女の欠点を見つけるのは、とても容易いことでしたわ。

 これには他のご令嬢たちにも「まあ、なんてひどい」と頷くしかないでしょう?


 貴族社会を熟知するアタクシに、平民風情が勝てるなんて思い上がるからこうなるのですわ! ほほほほほ。


 彼女が、『世界を救う聖女様』の評判が徐々に揺らぎ出し、お友達だった下級令嬢からも孤立していく様子をアタクシは眺めておりました。

 ああ。なんて気持ちいいのかしら。


 けれど……誤算が一つありましたわ。

 エムリオが聖女を心配し、ますますベタベタするようになりましたの。


 それこそ、まるで婚約者同士みたいに。

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