02:目的のためなら手段を選びませんわ
ではでは今から裸女との接触を図るべく、彼女のいる下級令嬢グループへ突撃ですわ。
お庭に屯している下級令嬢たちは、言っては悪いですけれどもなんとも卑猥なお喋りをなさっていらっしゃいましたわ。
平民で流行っている茶菓子の話や、下級令嬢の間で人気のご令息の話。そしてその片隅で愛想笑いを浮かべているのは、例の裸女ですわね。
ビキニだけのその姿はなんとみっともないのでしょう。思わず目を覆いたくなってしまいますわ。
淑女の自覚があるならば、できるだけ体は包み隠すもの。アタクシのような高級なドレスがなくとも、男爵令嬢だって弁えていることですわ。
なのに彼女ったら太ももも丸出しですわよ。ああ恥ずかしい。
アタクシは満面の嘲笑を浮かべ、彼女らに近寄って行きましたの。
「あらあら、皆様ご機嫌よう」
「……。あ、こ、こんにちは」
最初にアタクシに返事を返したのは裸女でしたわ。
いつ見ても破廉恥な格好をしていますわね、本当に。
他の令嬢は驚いてしまって声も出ないご様子。アタクシは構わず、裸女に切り掛かっていくことにいたしました。
「こんにちはではなくご機嫌ようでしてよ。そんな挨拶のルールもご存知ないのかしら?」
「あっ。す、すいません!」
「すいません? すみませんの聞き間違いでしょうか。アタクシ、最近耳が悪くて」
こうしていちいち揚げ足を取って行きますの。
ほら、うまく怯ませることができたようですわ。慄いているのが丸わかりですわよ?
アタクシのエムリオをたぶらかした恨みはそう浅くはありませんわ。覚悟なさい。
「あなた、相変わらず裸を晒していらっしゃるのね。恥というものはございませんの?」
「えっと……。はい、すみません。私も恥ずかしいとは思ってるんですけど」
「ならば公の場である学園はその格好で出歩かないことですわ。本当に見るのも嫌。そういう男を甘い蜜で誘惑するような女が、アタクシ一番苦手ですのよね」
反吐が出ますわ、という風に鼻を鳴らして見せます。
今の攻撃はこれくらいでよろしいかしら。あまり過度にやりすぎると問題になるでしょうし。
「アタクシとしたことが、少し言い過ぎましたわ。失礼いたしました」
アタクシは微笑みを残し、そっとその場を立ち去りましたの。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……ここだけの話ですけれど。
アタクシは正直、あの女が恐ろしいんですのよ。
いつかアタクシのエムリオを本当に奪っていくのではないか。
そう思うと気が気じゃありませんわ。
アタクシ、エムリオのことをお慕いいたしております。
ですからあのようなどこの馬の骨とも知れぬ女にやるわけにはいかないんですの。
アタクシが気をつけなければならないこと、それは婚約破棄ですわ。
過去には幾度かこのスピダパム王国でも騒動が起き、大変な事件になっていますの。
その女性たちは皆あらぬ疑いをかけられ、最悪の場合処刑されているのですわ。
だからアタクシは、決してその方々の二の舞を踊ってはいけない。
なんとしてもエムリオの浮気をやめさせ、裸女を排除しなければならないんですのよ。
そのためならアタクシ、手段を選びませんわ。
ともかくあの女を退学処分か何かに追い込む必要がありますわね。
さあてどうしましょうかしら。裸女にぐぅの音も言わせぬような計画を練らなくては。
……全てはエムリオの愛のために。
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