10:裸の聖女と仲良くなりましたわ
『裸の聖女』本編(https://ncode.syosetu.com/n5006ht/)の展開の変更により、内容を大幅修正しています。
「――というわけで、この間はどうもです」
「ふん。あの時は少しだけ……そう、少しだけ助かったわ! でも感謝はしてやりませんわよ」
学園を卒業した後のこと。
アタクシはお詫びとして聖女を公爵邸へ招いていましたの。
卒業後も聖女は相変わらずのビキニ姿ですわ。
この格好、なんとかならないかしら。見ているこちらまで羞恥心を抱いてしまいますわよ。
「私も正直この服装だけはアレなんですけどね……。でもアルデートさんもエムリオ様――エムリオ殿下も可愛いと言ってくれますし」
「いいですわよ、もう。様付けでも何でも勝手になさい」
「じゃあ呼び捨てでいいですか?」
「それはアタクシの特権ですわよ!」
ったく。
本当に調子のいい聖女ですこと。まるで貴婦人のルールがわかっていませんわね。
……それも仕方ないことですわね。
彼女だって来たくてここへ来たのではないのですから。
聞いたところによると、彼女は『ニホン』とやらから、突然召喚魔法によってこの世界に呼び出されたらしいのです。
幼い頃からマナーを叩き込まれたアタクシたちとはまるで違うのですから、そこを責めても仕方がありませんわ。
ジュラー侯爵家に養女として入ったおかげかマナーは幾ばくかマシになったようですし、許してやるといたしましょう。
聖女は聖女なりに努力しているのだと知って、アタクシは少し彼女を見直しました。
話していると、意外に楽しいですわね。
この女、悪くないかも知れませんわ。
そんなことを思っていると突然、彼女がこんなことを言い出したんですの。
「あの……タレンティド公爵令嬢。私たち、もう敵対する必要はなくなりましたよね。せっかくならあなたとも仲良くなりたいです。友達になってくれませんか?」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
彼女は彼女で、何かと不便していたようですわ。
アタクシの嫉妬のおかげで学園で友達はできず、悪い噂が流れるばかり。
たった一人でこの世界にやって来て不安で、そんな中でアルデートと出会ったらしいのですが、やはり異性からですし、他の連中とも知り合い程度で、本当の友達と呼べる相手はいなかったようです。
これもアタクシの責任。
元々エムリオに近づいた先方が悪いとはいえ、少し哀れに思いましたの。
……実はアタクシも友人など一人としておりませんでしたわ。
取り巻き令嬢はたくさんいましたけれど、あれはあくまでも僕。真の友人とはとてもとても言えませんでしたわ。
ですから――ほんの少し嬉しかったのも本音ですの。
「わ、わかりましたわ。なら、アタクシがその……友人になってやってもよろしくてよ?」
「本当ですか!? じゃあセルって呼ばせてください!」
「セル?」
「そうです。セルロッティって名前が長くて呼びづらいので。それになんか可愛いじゃないですか。じゃあセルは私のこと、ヒジリって呼んでくれて大丈夫です」
アタクシは、聖女――ヒジリの圧に押し負けて、結局『セル』と呼ばれることになりましたの。なんたる不敬罪なのかしら。
はぁ……厄介な奴を選んでしまいましたわね。
こうしてアタクシとヒジリは、『アクヤクレイジョウ騒動』を水に流し、友人になりましたの。
当然ながら、アタクシはちっとも喜んでいませんでしたけれども!
エムリオも取り戻すことができましたし、終わり良ければ全て良しですわね。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
この後、アタクシとヒジリ、そして愛しのエムリオは、世界の危機に立ち向かうことになりますの。
でもそんなこと、この時のアタクシはまだ考えもしないことでした。
〜完〜
ご読了ありがとうございました。
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